介護とお金 【2011年 第12回 】

【2011年 第12回】 介護とお金 ~実録介護保険~

浅川 陽子(アサカワ ヨウコ)⇒ プロフィール

介護とお金――「人手」で支えるか、「お金」で支えるか、介護費用の軽減制度も活用しよう――

 

 

 

 

少子高齢化が進展する中、高齢者の介護は家族だけでは担いきれないことから、高齢者の介護を社会全体で支えていこうという趣旨で、2000年に「介護保険制度」が導入されました。現在、要介護4の両親をかかえている私自身、「介護保険制度」がなかったらどんなに大変だったことだろうとありがたみを実感しています。

<介護保険自己負担金の軽減制度>

介護保険の自己負担は1割ですが、この自己負担金を軽減してもらえる制度があります。

・高額介護サービス費
1ヶ月あたりの自己負担金が上限額を超えた場合、超えた分について、申請により、市区町村から償還される制度です。自己負担額の上限額は、一般の人は37,200円(同一世帯に複数の要介護者等がいる場合は、世帯合計で37,200円)、世帯全員が住民税非課税の人は世帯で24,600円、生活保護受給者等や老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税の人は個人で15,000円となっています。

・高額介護合算療養費
同一世帯の医療保険被保険者に、医療にかかった費用(自己負担分)と介護にかかった費用(自己負担分)の両方が発生している場合、毎年8月から翌年7月までの、合算した額が以下の自己負担限度額(年額)を超えている場合、超えている分が「高額介護合算療養費」として、申請により支給されます。

      高額医療・高額介護合算制度の「自己負担限度額(年額)」

 

 

 


注:低所得者Ⅱとは、住民税非課税世帯の人
低所得者Ⅰとは、住民税非課税で各世帯員の所得が一定基準以下の世帯の人

・医療費控除
介護保険の自己負担金のうち、特定サービスや、「寝たきり状態」の方が使用する紙おむつ費用について医療費控除の対象になる場合があります。

いろいろな軽減措置のうち、私の実家では、現在、両親の入居した老人ホームにおける介護保険の自己負担金が2人分で4万円を超えるため、「高額介護サービス費」の対象に該当し、毎月償還を受けています。「高額介護サービス費」については市の方から、請求の申請をするように通知書が来て申請しました。1度申請しておけば、毎月償還を受けることができます。

一方、「高額介護合算療養費」は、特に通知が来るわけではないので、該当しそうな場合は、自分で介護保険と医療保険に申請をする必要があります。また、医療費控除を受けるには確定申告をする必要があります。

<ライフプランにおける介護にかかる費用は?>

ライフプラン、特にリタイアメントプランを考えるにあたって、これからは、介護をぬきにして考えることはできないといえるでしょう。介護保険制度で1割の自己負担で介護サービスは受けられるものの、施設で生活する場合や、自宅でも介護サービスの上限を超えてサービスを受ける必要があれば、介護にかかる費用はかなりかかることになります。

ライフプランで介護費用を見積もる場合、どれぐらいの金額を見積もればよいでしょうか?年金として、1人につき月20万円程度受給できるのであれば、有料老人ホームに入居することになった場合でも、あと1,000万円の蓄えがあれば入居できるホームはなんとか探せるかもしれません。年金額が少ないのであれば蓄えはもっと必要になるでしょう。

<親の介護の前に、親の資産状況を把握しておこう>

介護を語る時に、よく言われるのが「人手」があるのか、「お金」があるのかです。つまり、介護を担える家族の「人手」が十分にあれば介護にさほどお金がかかるということはありませんが、家族の「人手」が十分でなければ「お金」で介護を支えるということです。

一番問題なのは、「人手」も「お金」もないというケースでしょう。最近は、独身の子が同居の親を介護するケースがふえているようです。介護保険サービスを受けながらも、働きながら親の介護をするのはかなりの負担です。正社員として働けなくなるケースも少なくないようで、そうなればさらに経済的に厳しくなります。

私の場合、両親を有料老人ホームに入居させるにあたり、なにぶん2人分の費用がかかるわけですから、まず、親の金融資産状況を把握することが不可欠でした。実家のお金の管理をしていたのは母でしたが、その母もここ2年ぐらいは物忘れも多くなり、実家の家計、貯蓄状況等を娘である私が把握する必要を感じていましたので、ある程度の情報は把握できていました。そのおかげで、ホームの選択にあたり、入居金や毎月の経費等の支払いが可能かどうかの判断が比較的早くできたといえます。逆にいえば、把握できていなければ、お金が心配で、ホーム入居も踏み切れなかったといえるでしょう。

<エンディングノートの活用>

最近は、自分の死後または認知症になった場合などに、家族に必要な情報や希望・意思を伝達する「エンディングノート」についての関心も高まってきました。実は、親の介護が必要になった時もこの「エンディングノート」は家族にとって大きな助けになるといえます。

最近は、市販のものもありますが、特に市販のものを使わなくても、以下のような情報等をノートに記載しただけでも十分です。子どもと親が一緒になって「エンディングノート」を作成し、親に関する情報や希望、意思などを確認しておくことは今後ますます必要になってくることと思われます。

 

<介護の今後>

高齢化が進み、介護保険のサービス利用者の数も、当初の予想を超えたスピードで増加しているといいます。来年度からは介護保険料も大幅に引き上げられる予定です。介護ニーズが高まる中、充実した介護を行うためには、介護従事者の収入水準を上げ、介護従事者を増やすことも課題ともいわれます。充実した介護を推進するために、介護保険料がある程度引き上げられるのもしかたのないことでしょう。

一方で、地域社会全体で介護をバックアップしていこうという動きもあります。ボランティアのマンパワーが介護の一部を支えられるようなシステムが進めば、介護の方向性も変わって行くかもしれません。

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