相続・贈与のエトセトラ⑦~生命保険金は誰のもの?~【2011年 第7回】

【2011年 第7回】 相続・贈与のエトセトラ⑦ ~生命保険金は誰のもの?~

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。

■生命保険金は相続財産でしょうか?

相続財産だと思っていらっしゃる方も多いと思われますが、通常は相続財産ではありません。被相続人の方が保険契約者で保険料を支払っていた場合で、被保険者が死亡すると、保険金受取人が生命保険金を受け取りますが、この保険金は受取人の固有の財産となります。そのため、遺産分割をする必要はないのです。

一方、生命保険金は相続税の課税対象となります。生命保険金は被相続人の死亡を契機として受取人が一定の財産を取得するわけなので、相続財産の取得と同じようなものですよね。相続財産の現金は課税対象なのに、生命保険金だったら課税対象とならないというのは不公平だろうということで、相続税法上は生命保険金も相続財産とみなして相続税の課税対象とされます。

これが、生命保険金は相続財産だと思われる一番の要因になっているのでしょうね。
とはいえ、契約内容によっては、本来の相続財産になるので分割が必要になる場合もあったり、相続税の課税対象にならない場合もあったりと、実はちょっと混乱してしまうこともありますので、内容を確認しておきましょう!

■契約内容で異なる生命保険金の取り扱い

 

 

 

被保険者が死亡すると、保険契約上指定されている保険金受取人に保険金請求権が生じます。保険会社に請求して、受取人の方が生命保険金を受け取りますが、この生命保険金は、受け取った方の固有の財産です。

受取人は相続人以外ということもあるでしょうし、相続人になるはずだったけど相続放棄をしているということもあるでしょう。いずれにしても指定されている受取人に保険金請求権があり、生命保険金を受け取ることができます。

 では、保険契約上受取人に指定されているのが次のようなケースではどうでしょうか?

①受取人が被相続人の場合
遺言で受取人の指定があればその方が受取人になりますが、遺言がない場合、保険金請求権は被相続人の相続財産として相続人が相続することになります。相続人が複数いる場合は、全員で遺産分割協議をおこないます。

②受取人が「相続人」となっている場合
具体的な受取人が指定されておらず、単に「相続人」となっていたり、約款上で「指定のない場合は相続人に支払う」となっている場合があります。この場合は、相続人に保険金が支払われますが、相続財産とはならず、受取人各々の固有の財産となります。

■保険金受取人を確認しておこう

一般的には、保険契約時に保険金受取人を具体的に指定している場合が多いでしょう。気をつけたいのが、以前に契約をした保険の受取人が誰に指定されているかです。

・独身時代に契約している場合
受取人を親(父または母)に指定している場合が多いようです。その後結婚をしても、受取人を配偶者に変更する手続きをしていないと、配偶者は保険金を受け取ることができません。いったん親が受け取って、子の配偶者に渡すということもできますが、その場合は贈与税の課税対象となることに注意が必要です。

・離婚歴がある場合
婚姻期間中に保険契約をした際に受取人を配偶者と指定していて、その後離婚したような場合。受取人の変更手続きをしていないと、保険金は前配偶者に支払われますので、再婚されている場合でも、現在の配偶者は保険金を受け取れないという事態になってしまいます。離婚や再婚に伴って自動的に受取人が変更されるわけではないことに留意しておきましょう。

・受取人が、被保険者よりも先に死亡している場合
受取人が自分(被保険者)よりも先に死亡してしまった場合、新しい受取人に変更をしておく必要があります。でも、変更手続きをする前に、被保険者も死亡してしまうということもありますよね。その場合は、死亡した受取人の相続人が受取人となります。自分の相続人が受取人になるというわけではないことに注意が必要ですね。

■遺言で受取人の変更ができる?

保険法の改正で、遺言によっても受取人の変更をすることが可能になりました。

ただし、保険会社は、契約上の指定受取人から保険金の請求があれば、その受取人に保険金を支払います。支払い後に、遺言による受取人変更の申し出があったとしても、改めて保険金を払うことはありませんので、遺言による受取人変更がある場合は、速やかに保険会社に連絡をしておくことが重要です。

とはいえ、遺言による受取人の変更はトラブルのもとになりやすいものです。保険金を受け取れると思っていた方と、遺言で保険金を受け取れることになった方との間に確執が生じることもあるでしょう。
そういったトラブルを避けるためにも、受取人の変更は、遺言によるのではなく、あらかじめ保険会社で直接手続きをおこなっておくほうが望ましいといえるでしょう。

■定期的に契約内容をチェックしておこう

あなたの保険の受取人は誰になっていますか?変更する必要はないでしょうか?

保険契約は長期にわたるため、一度契約をした後は確認や見直しをしないままという方も多いと思われます。状況が変われば、保険の内容(保障内容、受取人など)も変えたほうがいいケースもあります。定期的に契約内容をチェックし、必要に応じた見直しを検討していきましょう!

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