【2011年 第1回】 金融商品を知る ~金融商品の仕組み~
鈴木 暁子(スズキアキコ)⇒ プロフィール
「今、何(の金融商品)が“買い”ですか」と直球すぎる質問に時々面食らうことがあります。金融商品は買えばすぐに儲かるものではありません。ましてやしくみやリスクも知らないで結果を出そうとするのはギャンブルです。
昔と違って今はさまざまなしくみを持った金融商品も多いのですが、まずはベースとなる金融商品のしくみを理解した上で投資を始めましょう。
債券のしくみ
今回は日本の債券をテーマにしていますが、「日本の国債格下げ」という、あまりにタイムリーなニュースが飛び込んできました。国債の格下げをお話する前に、まず債券のしくみをお話しましょう。
「債券」とは何でしょう?債券とは「借用書」です。ところで借用書というからには貸し手と借り手がいるはず。では貸し手と借り手とはそれぞれ誰を差すのでしょう?
貸し手は私たち投資家や、機関投資家と呼ばれる大口投資家、あるいは外国政府など。対する借り手は日本の政府や日本の企業なのです。「どうして国(企 業)のほうが資産をたくさんもっているのに私たちが貸すの?」と思いましたか?
確かに国や企業は莫大な資産を持っています。しかし国であればいろいろな政策のため、企業であれば事業拡大や設備投資のためなど、多くの資金が必要にな ることがあります。その資金集めの手段が「債券発行」。つまり資金を集め、最終的に借りた元本と利息の返済を約束した借用証書が「債券」というわけなので す。
ちなみに借り手として債券を発行する機関を「発行体」といいますが、借り手が国であれば発行する債券は「国債」、企業であれば「社債」と分類されます。 また国債は「新窓販国債」と呼ばれる2年、5年、10年の固定もの他、3年固定、5年固定、10年変動の「個人向け国債」があります。前者は5万円以上か らの購入ですが、後者は個人投資家にターゲットを絞り1万円からの購入が可能なため、購入しやすくなっています。
債券の3つの特徴
債券の大きな特徴としては次の3つがあります。
①金利が約束されている。
変動10年物の個人向け国債以外の債券は、あらかじめ○%というように金利が約束される固定金利商品で、半年ごとに利息が支払われます。
②満期まで保有していれば、原則元本保証。
満期償還日に額面どおりに償還されますので、それまで保有していれば、原則元本が戻ってきます。
③途中換金の場合は元本保証なし。
ただし満期を待たず途中で換金したい場合は、個人向け国債を除き、額面ではなく時価での売却となりますので、元本が戻るとは限らないことに注意です。これを債券の「価格変動リスク」といいます。
目安となる格付け
ところで、いくら借用書を手にしたといっても、もし貸した相手が倒産や財政破綻すれば、「借りた資金を返せない」という事態にだって当然なり得ます。こ れを債券の「信用リスク」と言いますが、貸す側にとって絶対に大丈夫とは言えないまでも、少なくとも資金を投資することに納得できる確信は欲しいもの。そ の判断の目安となるのが「格付け」です。
格付けとは、民間の格付け会社が発行体の返済能力を、財政状況、経営状態など様々な角度から総合的に判断して記号で表したもので、スタンダード&プアー ズ(S&P)社、ムーディーズ社などが有名です。
格付けは、各社によって多少表記の違いや判断基準の違いはあるものの、おおむね最高格の「AAA(トリプルA)」から「AA」、「A」…から最低の 「C(シングルC)」までに分かれており、「BBB」以上のものは投資適格、「BB」以下のものは投資不適格と定義されています。債券を購入する際にはパ ンフレットなどに格付けの記載がありますから、チェックするようにしましょう。
格付けの意味がわかったところで、「日本の国債の格下げ」の意味を考えてみましょう。今回前述のS&P社は日本の国債を「AA」から「AA-」に格下げ しました。その理由として「政府債務比率の悪化」を挙げています。
前述したように債券は借用書ですから、「政府債務比率悪化=国の借金が増える=国債発行額が増えている」ということになります。実際昨年末に発表した2011年度の国債発行計画では過去最大となる見込み。
普段の生活の中で、明日日本の財政が破たんするとは想像もしていないと思いますが、世界から見れば日本は「借金まみれのアブナイ国」なのです。
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