ユーロ財政危機の原因は?【2011年 第11回】

【2011年 第11回】 ユーロ財政危機の原因は? ~資産運用に必要な今どきの経済知識~

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

市場が失敗を犯すのと同様に、政府も失敗を犯します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーロ圏の財政危機

ユーロ圏の財政危機、特にギリシャへの支援策をめぐり世界が揺れています。ギリシャ支援については比較的財政が健全な北部諸国を中心に国民の反対論が根強いようです。スロバキアでは一旦議会で否決後、野党との調整を重ね再可決をしました。ユーロ圏の大国ドイツでは多数で一応は可決されましたが、支援枠組みの変更には議会の議決が必要な旨、憲法裁判所の判断がなされ、今後の危機の広がり方いかんでは予断が許せません。

グラフは2011年のユーロ圏(エストニアを除く)一人当たり国内総生産の見込みです。ルクセンブルクが飛びぬけて高いです。ちなみにルクセンブルクは世界一です。

ギリシャは下位の方にありますが、それより低いのがスロバキア。スロバキア国民にとっては“なぜ我々より豊かなギリシャを支援しなければならないのか?”という疑問も尤もな感じもします。しかも危機が自然災害などの外的要因であれば、ユーロ圏での助け合いという事で納得するであろうが、今回はギリシャ政府の放漫財政と粉飾財政。これで国民を納得させるのは容易なことではありません。

少なくとも、当のギリシャ政府がかなりドラスティックな財政改革に踏み出さない限り、他のユーロ圏諸国の支援は困難となり。支援の枠組みは崩れ去ることになる恐れもあると思います。球が投げられた後はギリシャがそれをどのように受け止めるのか、非常に厳しい決断が迫られます。

今回の危機の原因は?

今回の危機の原因はリーマン・ショックの後遺症。確かにポルトガル・イタリア・アイルランド・スペインはそう言えるでしょうが、ギリシャはちょっと違うようにも思えます。

そしてユーロの問題。金融政策はECBとしてユーロ圏一体ですが、財政政策は各国政府に委ねられている、この不均衡の問題があるとも言われています。そのためにも財政の一体化が必要、との議論もあります。しかし財政の一体化とは国家の統合を意味します、すなわち“ユーロ連邦”の創設を意味します。これは平時であっても相当困難な仕事です。ましてや今の様な財政不均衡がある状態では無理でしょう。

問題の根本には財政のモラルハザードがあるようにも思えます。ギリシャの状況は2大政党のそれぞれの支持者の要求にこたえるために財政の大盤振る舞いを重ねた結果とも言われています。

歪みを発生させる恐れがあるBIS規制

BIS規制では、自国への債権はリスクウェイトをゼロとすることが認められています。そうすると銀行はBIS規制に対応するためにも必要以上に国債に投資することになり、国債の評価額は必要以上に高くなり(利回りは低下)、金融市場に歪みを発生させる恐れがあります。しかし国債と言えども過去のアルゼンチン、そして今のギリシャのように必ずしも安全とは言えません。歪みが耐え切れなくなったときに、一気にリスクが表面化します。

そしてリスクが表面化した場合、相手は政府です。銀行であれば政府による資本増強という選択肢もありますが、最後の出し手と言われる政府がそのようなことになれば、その国だけでは対応できません。

 財政規律を守るためには、国債と言えども財政状況に応じてリスクアセットに組み込む必要もあるのではないでしょうか。このように財政を市場の評価にさらすことにより、無軌道な財政拡大に対する一定程度のブレーキとなるのではないでしょうか。

市場が失敗を犯すのと同様に、政府も、たとえそれが民主的手続きによって成立した政府であっても、失敗を犯します。

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