次なる「海賊」【2015年 第6回】

【2015年 第6回 次なる「海賊」】
「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話

三次 理加 ⇒プロフィール

 

 

石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説「海賊とよばれた男」百田尚樹/著(講談社)の時代、世界のエネルギー源は石炭から石油へ大きくシフトしていきました。では、次世代のエネルギー源は、果たして何になるのでしょうか?

 

1)石炭の時代

「海賊とよばれた男」が舞台となっている時代に、世界のエネルギー源は石炭から石油へ大きくシフトしていきました。

石油も石炭も、古の昔よりその存在は確認されています。たとえば我が国最古の記録としては、日本書紀に、天智7(西暦668)年7月、越の国(新潟)から天智天皇へ「燃える水と燃える石」が献上された旨記載があります。おそらく「燃える水」は石油、「燃える石」は石炭と推測されます。ちなみに、天智天皇は、中大兄皇子として有名です。

 

「石炭の時代」は、18世紀の中頃にイギリスより始まった産業革命から始まりました。1709年、ダービーは、従来使用されていた木炭の代わりに、石炭燃料にした製鉄法を開発。その子ダービー二世は、1735年、石炭から不純物を取り除いたコークスを燃料とするコークス製鉄法を発明します。

ちなみに、「ダービー」といえば、イギリスの有名な競馬レースを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。同レースを創設したのは、このダービー父子の子孫です。

その後、ジェームズ・ワットによる蒸気機関の完成(発明は1705年 ニューコメンによる)は、フルトンの蒸気船(1807年)、スティーブンスンの蒸気機関車(1814年)の発明につながり、石炭による動力革命を引き起こします。

こうして第2次世界大戦開戦前には、石炭は世界エネルギーの8割(注1)を占めるまでになります。

注1)数値は、一般財団法人石炭エネルギーセンター 「石炭について学ぶ」サイトより

2)石油の世紀

近代石油産業は、1859年、米国ペンシルバニア州タイタスビルにおいて、セネカ・オイル社の現場監督エドウィン・ドレークが日量35バレルの石油を産出したのが始まりです。

1866年には、カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーがガソリン・エンジンを発明。これは、動力源を石炭から石油へと転換させ、交通・運輸の革命をもたらしました。

また、1911年、イギリスの海軍大臣チャーチルが行った、海軍の燃料を石炭から石油に転換する「液体革命」は、その後、大英帝国の基礎を築くことにもなりました。

ちなみに、1914年の第1次世界大戦時、消費エネルギーの8割(注2)は石油だったそうです。その後の「石油の世紀」到来を暗示していたといえるでしょう。

注2:数値は「今後の世界的な自動車産業の発展と中東産油国の原油の重要な役割」岩間剛/著 中東協力センターニュース 2013年6月7日

3)次世代のエネルギーは?

現在、世界のエネルギー消費は図表1の通りとなっています。世界のエネルギー最終消費量は、1971年から2012年までの41年間で、なんとおよそ2倍に増加。全体の31.4%を石油、29.0%を石炭、21.3%をガスが占めています。

(図表1)

しかし、この上位3者の割合に大きな変化をもたらす事象が起きています。

「シェール革命」です。

 

シェールとは、従来の油田より深い地層のことを指します。2000年以降の原油価格上昇に加え新技術発明により、米国では、技術・コスト的に難しかったシェールガス開発が進み、天然ガス生産量が急増。これにより米国は世界最大の天然ガス生産国となりました。現在、米国は天然ガスの輸入国ですが、2020年までには純輸出国になることが予想されています。

 

また、英石油大手のBP統計(BP Statistical Review of World Energy June 2015)によれば、シェール層より採れるシェールオイルの産出により、2014年末における世界最大の原油生産国は、アメリカになったとのこと。世界一の原油消費国が世界一の産油国ともなれば、国際エネルギー情勢を巡るパワーバランスは大きく変化する可能性があります。

 

これらに伴い産業構造の変化が起きています。最も恩恵を受けるとされる石油化学業界では、エチレンの製造過程において、従来のナフサに代わり、シェールガスに含まれるエタンを使用することで大幅なコストダウンを可能としました。鉄鋼業界では、前述のコークス製鉄法に代わり、天然ガスを利用(直接還元)する動きが拡大。高炉建設の必要がない直接還元方式の製鉄プラントは、設備投資が少額で済みます。米国の発電業界では、エネルギー源を石炭から天然ガスへシフトする動きが起きています。発電における石炭と天然ガスの比率は、2035年までには逆転することが予想されています。

 

クリーンな燃料とされるため排出ガス対策として、液化天然ガス(LNG)が注目されていることも考慮すると、もしかしたら、今後のエネルギーの主役は天然ガスになっていくかもしれません。

 

ところで、本年12月1日、株式会社ユーグレナは「2018 年前半からの日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの稼働と、2020 年のバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化を目指した計画推進」を発表しました。もしかしたら、将来、ミドリムシ由来のバイオジェット燃料で飛行機が飛ぶ日が来るかもしれません。

 

次世代エネルギーは、果たして天然ガスか?それともミドリムシか。。。?次世代エネルギー源を見つける、「次なる海賊」は誰か?考えてみるものも面白いかもしれませんね。

 

このコラムは今回で最終回。6ヶ月間ご覧いただき、ありがとうございました。

  • コメント: 0

関連記事

  1. フランス人は本当に英語を話せないか?【2009年 第2回】

  2. Let’s Enjoy “旅”  『賢く楽しく“旅”しましょう。』【2011年 第5回】

  3. 金投資の基礎知識【2010年 第8回】

  4. 感想 問題1 在庫循環図の基本的な読み方【2018年 問題1】

  5. 就職活動(人気企業、業種、賃金) 自分に合った仕事を中国地方で探す【2005年 第1回】

  6. デュアル・カレンシー債【2012年 第9回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。