住宅ローンの借り換え、いまが最後のチャンスかも?【2014年 第1回】

2014年 第1回 住宅ローンの借り換え、いまが最後のチャンスかも?- 最新ニュース解説。FPとして言わせていただくと…

菱田 雅生(ヒシダ マサオ)⇒プロフィール

アベノミクスや日本銀行の異次元的金融緩和策によって日本経済は回復に向けて動き出したように見えます。日経平均株価も約1年で2倍近くに上昇し、消費者物価指数も前年同月比で1%を超える上昇を記録するまでに至りました。しかし、株価や物価が上がり始めても、長期金利が上がる気配は全く感じられません。これは日銀の政策が功を奏しているからでしょうが、景気拡大が鮮明になってくれば多少なりとも上昇していくはずです。だとすると、住宅ローンの金利水準も、低いのは「いまだけ」かもしれません。

 

 

 

 

筆者は、株価が「高いから売りましょう」とか「安いから買いましょう」などと、投資のタイミングをすすめることはまずありません。

いまの株価が本当に高いのか安いのかは、将来になってみないとわからないからです。同様に、住宅ローンについても、「低金利のいまがチャンス」とか、「金利が上がりそうなのでいまのうちに」などと、金利変動のタイミングを捉えようとするアドバイスはほとんどしません。これも将来になってみないとわからないからです。

しかし、最近のマーケットの状況は、教科書的な動きから逸脱した状態にあると言っても過言ではないと思います。ここ1年程度の期間に、株価は2倍近くに上昇し(日経平均株価は約8,000円から約16,000円へ)、為替も3~4割の円安の水準になり(1ドル80円程度から104円、1ユーロ100円程度から142円へ)、物価も上昇に転じています(消費者物価指数は昨年6月から前年同月比プラスに)。にもかかわらず、長期金利は多少の上下はありましたが、0.7%程度の水準で1年前とほぼ同じ水準にとどまっているのです。

もちろん、マーケットが常に教科書どおりの動きをしているのかというと、実際には教科書とは異なる動きをしていることも多いので、現在の動きが異常なわけではないという意見もあるかと思います。正常か異常かの判断自体も、将来になってみないと正確にはわからないものなので当然です。その点を考慮したとしても、長期金利だけ上がっていかない現状は、少しおかしな状態だと言えます。

この原因を作っているのは、もちろん日本銀行です。昨年4月から実施されている、いわゆる異次元的金融緩和策によって、長期国債やETF、J‐REITなどを大量に買って、市場に資金をジャブジャブ流しています。金融機関にとっての極端な「金あまり状態」を作り、金利が上がらないようにしているのです。そして、これまで以上に日銀が本腰を入れているからこそ、金利が上がっていかない状態が続いているともいえます。

過去の水準を見てみると、直近で日経平均株価が16,000円前後で推移していたのは2006年、2007年ごろですが、その当時の長期金利の水準は1.5~2.0%程度でした。フラット35の適用金利も最低金利が2%台後半という水準です。やはり、現在の長期金利0.7%前後、フラット35の最低金利1.8%程度というのは、低位にとどまっている状態だと言っていいでしょう。

では、いつ金利は上がるのでしょうか。もちろん、誰にも正確な予測は不可能でしょう。

しかし、日銀が設定したインフレターゲットである年2%の物価上昇を達成するとき、もしくは、達成が確実視されるようになったときに、金融政策の方針転換が行われる可能性が高いと思われます。それがいつになるのかはわかりませんが、年1%を超える物価上昇が記録される状態になってきていることからすると、それほど遠い将来の話ではないような気がします。4月からの消費税アップなど、景気拡大にブレーキがかかる可能性のあるイベントも待ち構えていますが、大きな波乱なく株価が順調に上がるような動きになっていったとすると、金融政策も変わっていく可能性が高まるでしょう。

このように考えてみると、本腰を入れている日銀のおかげで低い水準にとどまっている住宅ローン金利を利用しない手はないでしょう。すでに長期固定金利を利用していて、適用金利の水準も2%前後だという人は、いま借り換えてもあまりメリットは得られないかもしれませんが、2%台半ば以上の適用金利で返済中の人や、変動金利や短期固定のタイプで返済していて将来の金利上昇が怖いと感じている人は、なるべく早めに借り換えを検討すべきではないでしょうか。

何度も書きますが、本当にいまが有利なのかどうかは将来になってみないとわかりません。

わかりませんが、日本経済が今後も回復していき、2020年の東京オリンピックに向けて力強く成長していくのであれば、長期固定で2%を切るローン金利というのは、二度と見ることのできない低金利の水準だったと言われている可能性も十分に考えられると思います。いまだからこそ、安全な返済計画に変えていくための見直しを検討しましょう。

 

 

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