後見終了について【2013年 第5回】

【2013年 第5回 後見終了について】成年後見人への道

三次 理加 ⇒プロフィール

第2回で説明したように、成年後見(保佐・補助)人としての仕事は、財産管理のみならず、介護サービス計画(ケアプラン)の検討や介護契約の締結等の身上監護、家庭裁判所への定期報告と多岐にわたります。これらの仕事に対する報酬は、一体どのくらいなのでしょうか?

 

後見人等の報酬、事務費

成年後見・保佐・補助人(以下、後見人等)に支払われる報酬や後見事務費については、民法に規定されています。
   1)後見人等の報酬
      後見人の報酬については、民法第862条に「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他
      の事情によって、 被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」と
      規定されています。(保佐・補助人については、第876条の5第2項、第876条の10第1項を参照)
      後見人等が報酬を希望する場合には、家庭裁判所に「報酬付与の申立」を行う必要があります。
      申立時期に決まりはありませんが、一般的には、家庭裁判所への定期報告と併せて行われること
      が多いようです。
      後見人等の報酬の平均は、およそ月額3万円(下図参照)。被後見人に資力がない場合には、
      「報酬無し」という審判がなされることもあるようです。
 
   2)後見事務費
       後見事務費については、民法第861条第2項に「後見人が後見の事務を行うために必要な費用
       は、被後見人の財産の中から支弁する。」とされています。一般的に後見事務費として認め
       られる費用は、交通費、郵送費や書類作成のための帳簿代やコピー代、住民票や登記事項
       証明書等の各種証明書取得費用です。また、不動産の管理を業者に委託した場合の手数料
       や、弁護士・司法書士等に業務を依頼した場合に支払った報酬(後見人等自身が弁護士・
       司法書士である場合を除く)等も対象となります。
 

後見終了について

後見人等としての職務が終了するのは、どのような時でしょうか?職務終了は、大きく以下2つに分類することができます。
 
   1)絶対的終了
      「絶対的終了」とは、後見が必要なくなり、後見そのものが終了することを指します。
       以下2つの要因が考えられます。
       ①  被後見人が死亡、又は失踪宣告を受けた
       ②  被後見人が能力を回復し、後見が必要なくなった
       上記いずれも場合も、後見人は、2ヶ月以内に、管理していた財産を計算し、被後見人または
       被後見人の相続人に引き継ぐ義務が発生します。
       加えて、被後見人死亡の場合には、後見人は家庭裁判所へ被後見人の死亡報告、報酬付与の
       申立、東京法務局に終了登記の申請を行い、市町村へ死亡届を提出します。ただし、被後見人
       死亡時の葬儀や埋葬等の死後事務は、親族が執り行うべきものであり、 一般的には、後見人の
       事務ではないとされます。被後見人に身寄りがない場合には、まず、市町村に相談するように
       しましょう。 後見人等が葬儀や埋葬等を行うことも可能ではありますが、これらの事務は、
       前述した報酬の対象にはなりません。
       また、相続人が財産の受取を拒否したり、相続人がいないまたは行方不明であったりする場合
       には、相続財産管理人選任の申立を行います。
       なお、後見事務に関する記録等の書類は、後見終了時から5年間は保管しておきましょう。
   2)相対的終了
       「相対的終了」とは、後見そのものは終了していないが、 後見人交代により後見人としての
       任務が終了したことを指します。以下3つの要因が考えられます。
       ①  後見人が死亡し、又は失踪宣告を受けた
       ②  後見人が辞任し、解任され、又は欠格事由に該当した
       ③  法人成年後見人が解散した
       いずれの場合も、新たな後見人が選任されることになります。②③の場合、前後見人は、
       管理していた財産を新後見人に引き継ぐ義務が発生します。
       次回は、最終回。「尊厳ある生活のための準備」です。お楽しみに♪
       参考文献
       「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」片岡武・金井繁昌・草部康司・
        川畑晃一/著  日本加除出版
       「成年後見の実務的・理論的体系化に関する研究 平成23年度 総括研究報告書」/研究代表者
       宮内康二(東京大学 政策ビジョン研究センター特任助教)著 平成24(2012)年 5 月 31 日
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