保険を考える前に知っておきたい教育費【2012年 第1回】

【2012年 第1回】 保険を考える前に知っておきたい教育費
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門

平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール

 

生命保険の相談をしていて、最近、ネット専業の生命保険(以下、ネット生保)について質問を受けることが多くなりました。確かに、ネット生保の安さをイメージさせる広告はすっかりお馴染みになりましたね。

 

 

 

 

安い保険を選ぶ前に考えたいこと

本当にネット生保が安いのかどうかはさておき、こうした広告について少し残念に思うことがあります。それは、どうしても保険料の安さに注目が集まり、必要な保障内容を考えることの重要性があまり語られないことです。

そもそも生命保険は、保険料の安さが一番大切な要素ではありません。ここでは死亡保障の保険について考えてみますが、必要な保障内容は、家族構成・現在の収入・貯蓄額・生活状況などによってひとり一人全く異なります。一方、生命保険も保障内容に様々な違いがあります。例えば、保障の期間の違い・保障の金額の違いや、保障の金額が一定のタイプのほか、年月の経過により徐々に減っていくタイプもあります。

つまり、保険料の安い保険に加入したとしても、その保険の保障内容があなたにとって必要な保障内容と合っていなければ、不足していたり過剰だったり、あまり意味がなかったりということになってしまいます。死亡保障の保険に加入する前に、まず考えなければいけないのは保険料ではなく、必要な保障の金額と期間なのです。

必要保障額の考え方

それでは必要な死亡保障の金額(必要保障額)はどのように考えたらよいのでしょうか。ここでは、積み上げ方式による計算方法の概要をご紹介します。

ステップ1:遺族の生活費の計算

現在の基本生活費(食費・光熱費・通信費・被服費など)をもとに、遺族が年間どのくらいの生活費を必要とするかを見積もります。末子が独立するまでの期間は現在の基本生活費の70%を目安とし、末子の独立後、配偶者が一人で生活する期間は50%を目安とします。
a.現在の年間基本生活費 × 70% × (末子の独立時年齢 - 末子の現在年齢)
b.現在の年間基本生活費 × 50% × 末子独立時の配偶者の平均余命*
c.子供の教育資金や住居費用、葬儀費用など基本生活費以外でまとまって必要な資金を別途見積もり
遺族の生活費=a(末子独立前の生活費)+ b(末子独立後の生活費)+ c(教育・住宅・葬儀費用など)

*平均余命とは、各年齢であと何年生きられるかの平均値です。平均寿命は0歳の人の平均余命を言います。

ステップ2:収入見込み

遺族年金、死亡退職金や預貯金などの収入を見積もり、合計します。
・社会保障(遺族年金など)
・企業保障(会社員の場合、死亡退職金・弔慰金など)
・自己資産(預貯金、株式・国債・投資信託などの金融商品、その他の売却可能な資産)
・その他の収入見込(配偶者の給与など)

ステップ3:必要保障額の算出

ステップ1からステップ3までの各金額から必要保障額を算出します。
必要保障額(死亡保障の必要金額)= 遺族の生活費 - 収入見込み

こうして計算することにより、現時点で必要な死亡保障の金額が明確になります。

必要な教育費の目安

子育て世代では特に、ステップ1の遺族の生活費において、教育費の比重が想像以上に大きくなるものです。また、公立・私立といった進路によって、必要な金額が大きく異なってきます。ある程度、子供の進路を想定した上で、しっかり必要な金額を把握しておきたいものですね。

そこで、文部科学省が発表している教育費に関する調査結果を下表にまとめてみました。

例えば、子供の進路が幼稚園と大学(文科系学部)で私立、他は全て公立とすると、上の表の教育費合計は子供一人あたり約1032万円となります。思ったより多いという人が多いのではないでしょうか。

ぜひ一度、これからかかる子供の教育費とご自身の必要保障額を計算し、現在加入している保険の死亡保障の金額が適切かどうかチェックされることをお勧めします。とは言うものの、ステップ2の収入見込みについて、遺族年金の金額を見積もるのは結構難しいのです。次回の記事では、遺族年金について知っておきたい知識を解説します。

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