個人型確定拠出年金~今からでも遅くはない【2017年 第2回】

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【2017年 第2回】個人型確定拠出年金~今からでも遅くはない
後悔しない!サラリーマン家族の50代に必要なお金の話

中村 真佐子 

2017年のコラムは50代に必要なお金の話です。65歳でリタイアするなら最大15年。

この時期はその後の人生のおいて大切な時期です。2017年1月から老後資金形成の一つとして個人型確定拠出年金がスタートしました。

サラリーマンであれば、勤め先の会社ですでに企業型確定拠出年金に加入している方も多いでしょう。今回は、勤め先に企業型確定拠出年金制度のないサラリーマンに向けて、50代から始める個人型確定拠出年金の話です。

50代の税金の影響

前回のコラムでお伝えしたようにサラリーマンの場合、50代が収入のピークになります。収入がピークになるということは、納める税金もピークになるということです。日本の所得税税率は一律ではなく、収入が増えるごとに税率が上がるようになっています。50代は、老後資金を貯めるラストスパートをかけるために、税金はできるだけ安くして手取り収入を増やしたいものです。

とはいえ、子供が就職し扶養家族が減れば、扶養控除がなくなります。子育てが終わると、配偶者も働く時間を増やしたり、新たな仕事を始めたりする方もいるでしょう。配偶者控除は2018年に150万円までと拡大されますが、所得制限が新た導入されます(※)。年収によってはそもそも配偶者控除を受けられない方もいるでしょうし、配偶者控除という税金の仕組み自体も今後変わっていく可能性があります。

さらに、サラリーマンの経費にあたる給与所得控除も2017年分より年収1,000万円以上は220万円が上限となり頭打ちになります。サラリーマンの場合、税率をかける元となる課税所得は、年末調整で確定します。課税所得は、年収から給与所得控除と所得控除を差し引いたものです。所得控除は、14種類あります。例えば、大学生の子供が就職して扶養家族から外れると63万円の扶養控除がなくなり、その分課税所得が増え、税金も増えることになるのです。このように50代は、家族環境の変化があり、税金の影響を大きく受けるのです。そこで、減ってく所得控除を少しでも増やし税金を減らす方法として確定拠出年金(iDeCo)の活用を見ていきましょう。
(※)夫の給与収入金額1,120万円で控除額が減っていき、1,220万円で消失。

個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用して税金を減らす

2017年1月から個人型確定拠出年金(以下iDeCo)は、これまで認められていなかった専業主婦や確定給付年金制度等のある企業の社員、公務員も加入できるようになりました。

iDeCoは、老後資金を税金の優遇を受けながら自ら準備できる国の制度です。確定拠出年金法という法律に基づいた制度で、税金の優遇が大きなメリットとなっています。

税金優遇は、大きく3つで積立時、運用時、受取時にそれぞれ受けられます。この中で、サラリーマンの50代は所得がピークですので、積立時における税金優遇が大きなメリットといえます。なぜならiDeCoでの積立金額は、全額所得控除となるからです。例えば1万円を毎月積み立てるとすると、年間12万円積み立てることになります。年間積み立てた12万円が所得控除として収入からさし引かれます。おおよその所得控除が増えることによるによる税金減額は年収別に以下の通りです(*)。
*住民税においても税金は減額されます。ただし、住民税は所得が多くなるほど税率が上がる所得税とは異なり税率は一律です。

 

 

 

年収が高くなるほど税率が高いので、減る税金金額が多いことがわかります。前述したように、年収がピークで、家族の状況や所得控除が減ったり、年収によっては給与所得控除が頭打ちになったりする50代にとってこの税金優遇は、メリットが大きいといえます。

積立期間が短いのはデメリット?

50歳を過ぎてから、iDeCoを始めても積立期間は10年以下となり、サラリーマンの場合は、自営業者と比べても積立できる金額が少ないため、運用益が非課税という運用時の税金優遇のメリットを含めてもiDeCoだけでは老後資金を安心するほど貯めることはできません。

毎月の掛金額の設定と掛金の限度額は以下の通りです。

 

 

 

さらに、積立金を60歳で受け取るには、10年以上の積立期間が必要です。50歳以降で加入し、積立期間10年以下の方の受け取れる年齢は以下の通りとなります。

 

 

 

 

積み立てる期間は60歳までと決まっていますので、加入時の年齢によっては積立期間が数年となります。また、60歳以降に受け取る方は、その間運用のみ行うことになります。例えば、55歳に加入をして63歳で受け取る場合は、3年間積み立てはできす、運用のみの期間となります。この点は、注意点として認識しておきましょう。

 

 

また、「60歳まで解約できない」という家族のイベントがたくさん控えている若い人にとってのデメリットも、積立期間も短い50代にとってはデメリットとは言えません。また、資産全体からみてiDeCoで投資できる金額の割合が少ない場合は、iDeCoでの運用も守りに入らなくてもよく、運用成績によっては運用益に対する税金のメリットも享受できる可能性があります。

 

 

50代では、受取が目前で積立期間が短く、本来の目的である老後資金の形成には程遠く、iDeCoを始めるメリットとしては、増え続ける税金の優遇のみです。老後資金形成は、「NISA」などのほかの税金優遇のある方法もあわせて活用し、iDeCoを複数ある積み立て手段の一つとしてとらえればよいのではないでしょうか。

このように、50代だからといってiDeCoの加入をあきらめる必要はありません。税金の優遇を受ける機会を失うことのないようにしたいもの。iDeCoは制度が複雑で個人で判断することが多いので、FPなどの専門家と相談しながら、より良い選択をしていくことをお勧めします。

次回はiDeCoの加入の仕方を具体的に見ていきます。

 

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