石油精製施設 【2016年 第3回】

【2016年 第3回 石油精製施設】「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話 PartⅡ

三次 理加(ミツギ リカ)⇒ プロフィール

 

「海賊とよばれた男」は、石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説。
皆さんは、日本に製油所が何か所あるか、ご存知ですか?

 

1)製油所施設とは?

「製油所施設」とは、どのような施設でしょうか?

製油所とは、原油を精製してガソリン・灯油等の石油製品を製造したうえで、貯蔵・出荷する施設、つまり、石油精製工場のことです。
精製する油種や目的に応じて、製油所、完全製油所、簡易製油所と呼ばれます。

 

2)開戦時の石油精製施設

第二次世界大戦の開戦時、国内にはどのくらいの製油所があったのでしょうか?

「米国戦略爆撃調査団石油報告」資料によれば、開戦の翌年1942(昭和17年)には、8社14施設に陸・海軍の3施設を加えた合計17施設があったようです(注1)。
合計精製能力は、日量11万6千バレル(注2)。ご参考までに、当時の米国の精製能力は、日量466万バレルでした(注1)。
これら石油会社には、日本石油、昭和石油、三菱石油など聞き覚えのある社名もいくつかあります。
この8社体制は、戦後も国内石油業界の基本体制となりました。

米国による日本への本土爆撃が開始された後、これら製油所は繰り返し爆撃を受けています。
1941年(昭和16)年、日本海軍が真珠湾を攻撃した際、真珠湾内東岸にあった26基の大型石油タンク(備蓄量およそ450万バレル(注1))を爆撃しなかったことと比較すると、日米の戦略に大きな違いがあることがわかりますね。

米国による日本本土への投下爆弾量のうち、1割弱が製油所をはじめとする石油関連施設に投下されたといわれます。
この爆撃は、「石油作戦」とよばれ、日本が降伏を発表した後も続き、日本の製油所の75%に損害を与えました。(注1)

注1:数値は『石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」』岩間敏/著 朝日新書 より
注2:1バレル=約159リットル

 

3)現在の石油精製施設

現在、国内にはどのくらいの製油所があるか、ご存知でしょうか?

正解は、22か所です(図表参照)。前述の開戦時と施設数自体はさほど変わらないように思えますね。
しかし、その処理能力は日量381万6,700バレルと大きく違っています。

 

実は、国内製油所は、ピーク時には37施設あり、その処理能力は日量594万バレルありました(注3)。
しかし、国内石油需要の減少などを背景に、2011年以降、製油所の原油処理停止が相次いだことにより施設数、処理能力ともに次第に減少していったのです。

ちなみに、現在の米国の製油所数は123施設。処理能力は日量1802万バレル(2015年1月1日現在)。
日本とは桁が一つ違いますね(注3)。

ところで、「ストライク報告」の通り、戦前からあった国内製油所は全てスクラップされてしまったのでしょうか?
その鍵は、「ジョンストン報告書」が握っていました。「それ、なんだっけ?」と思った方は、「海賊とよばれた男」下巻を読み返してみてくださいね。

次回は、当時と現在の石油備蓄を比較します。お楽しみに。

注3:数値は「石油便覧」JXエネルギー ホームページより

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