利息をもらって住宅ローンを借りる?サラリーマンの節税対策 【2016年 第3回】

【2016年 第3回 利息をもらって住宅ローンを借りる?サラリーマンの節税対策】がんばる転勤族の妻たちが「お金」をもっと好きになるお話

松原 季恵(マツバラ キエ)

 

マイナス金利の影響により、住宅ローン金利が下がっています。
住宅ローンと言えば、サラリーマンにできる節税対策の一つとして「住宅ローン控除」がありますね。
実は住宅ローンの低金利が進むと、支払う利息より還付される税金が増えることがあります。
この「住宅ローン控除」はどのような仕組みなのでしょうか。

 

 

住宅ローンを組むと税金が返ってくる

一定の要件を満たす住宅の新築や購入などで10年以上のローンを組んだ場合に、その住宅に住み始めた年から10年間、毎年の所得税から税金の還付を受けることができます。これを「住宅ローン控除」と言います。

 

一定の要件の住宅とは、
①住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上が居住用であること
②中古住宅は、耐震基準などの要件を満たすこと
③工事費用の場合100万円超の増改築費であること、
などを差します。

 

ただし、「住宅ローン控除」を受けたい年分の合計所得金額が3,000万円を超えた場合は、その年の控除は受けられなくなるので注意です。
また、控除を受けるにはサラリーマンであっても初年度は確定申告が必要で、翌年から年末調整で手続きがきるようになります。
申告は確定申告の時期に限らず5年間遡ってできるので申告時期を過ぎても焦ることはありませんが、申告をしない限り年末調整では処理ができません。

 

還付される税金額の計算は簡単で、「年末の住宅ローン残高×1%」で求められます(H26年4月~H31年6月に入居した場合。以下同様)。
控除期間は10年間で、各年の還付税額には上限があり、一般住宅の場合は40万円、一定の認定がされた住宅の場合50万円まで還付を受けられます。

 

例えば、年末に住宅ローン残高が3,000万円だった場合は、その1%の30万円が税金から還付される計算になります。
もし年末残高が5,000万円であっても、一般住宅の場合上限により還付額は40万円になります。
また、所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税から控除できますが、それでも控除額が余ってしまったら、それ以上繰り越すことができない点は注意です。

 

利息をもらってローンを借りる?逆転現象の理由

「住宅ローン控除」は住宅ローンの年末残高の1%を税金で還付してもらえる仕組みなので、その金額は大きく、10年間で最大400万~500万円の節税になります。

その為、低金利が進み支払う利息が少なくなるほど、還付される税金が利息を上回るようになります。

 

具体的に住信SBIネット銀行の住宅ローンでシミュレーションしてみましょう。

「ネット専用住宅ローン(当初引き下げプラン)」を使って3,000万円を35年、10年固定金利で返済する場合を考えます。
3月1日現在、金利は年0.59%、仮に2016年4月1日に借入し、毎月27日返済で試算すると、還付が受けられる期間に支払う利息は約151万円と算出されます。

 

一方、この条件下で住宅ローン控除を受けた場合に、1年目の年末残高は29,484,519円ですので、控除できる金額はその1%(100円未満切捨て)で294,800円です。同様に10年間の控除額を合計すると、総額約259万円の税金が戻ってくる計算になります。

 

条件にもよりますが、低金利が進むとこのように住宅ローン控除を適用できる10年間に支払った利息(約151万円)より、控除できる税金(約259万円)が大きくなり、当初10年間はまるで利息をもらいながらローンを借りているような状態が起こり得ます。

 

10年経過後に一括返済ができれば、結果的に利息と税金の差額(約100万円)をもらって10年間のローンを組んだことになりますね(※)
ただ、この差額100万円は控除された税金分のお金が入る給与口座等、多くは生活口座に残ることになり、うっかり余裕資金として使ってしまいがちです。
それでは低金利のメリットを無駄にしてしまうので、控除された税金分の金額を生活口座と別口座に移すなど工夫をしましょう。
例えば10年間は繰上げ返済を利用せずに残高をキープし、控除期間が過ぎたらその別口座に貯まったお金で返済する等が効果的です。
※住宅ローンには利息以外に事務手数料や印紙代、登記費用など諸費用の支出があります。今回の計算はこれら手数料を考慮に入れていません。

 

住宅購入に忘れてはいけないこと

住宅をまだ購入していない人にとっては、現在の低金利は大変魅力的でしょう。
とは言え、制度や金利を目当てに住宅の購入をするのは危険もあります。

 

例えば「住宅ローン控除」は居住が条件となっています。
もし転勤で家族全員が自宅に住めなくなった場合、その間その家族は住宅ローン控除を受けられません。
このように「住宅ローン控除」は様々な条件が設けられているので、控除を受けられない場合まで制度を把握して住宅ローンの契約をしましょう。

 

また、金利が低いうちにと焦って家族の十分な話し合いがされないまま住宅を購入すると、家族が増えて手狭になった、子どもの望む学校から遠かった、両親の介護が発生して不便になった等、ある程度予測できたはずの問題も起きてしまうかもしれません。

 

住宅購入には大きなお金が動きます。
その為、制度や金利で大きなメリットを受けられることがありますが、見直しは簡単にできません。
まずは将来家族でどのように「住宅」と付き合っていきたいかを話し合い、その上で制度や金利のメリットを利用するようにしましょう。

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