岡本英夫のFPウオッチャーだより 第2回 私の「FP概論」 【2022年5月】

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第2回目です。

岡本英夫プロフィール

私の「FP概論」

金融専門出版社である㈱近代セールス社が社内に近代FP協会を設置したのは1986年1月のこと。

3月に出版書籍「ファイナンシャルプランナー~個人総合金融サービスへの道」(大和証券経済研究所編著)を刊行、10月には「第1回 米国FP事情視察団」(JTB主催、同行講師・川村雄介氏)を派遣、12月に九段会館で視察報告セミナーを開催した。
翌87年からセミナーに参加した金融機関からの要請もあって、金融機関行職員向けのFP研修がスタートした。

研修会で冒頭の「FP概論」を担当したのが筆者で、80年代後半から90年代は、雑誌の編集と金融機関研修に注力した。

金融機関の行職員に向けた「FP概論」

金融機関でのFP研修では、次のような図を描いてFPについて説明した。

「図を見ればわかるようにFPはお客さまと専門家の中間に位置しています。お客さまは自分自身の生活にかかわる問題については専門家に相談すれば解決できるはずです。ところが専門家は高度な知識を持つと同時に、相談料もかかり数も少なく、その所在さえ素人にはわかりづらいものです。また、どうしても今解決しなければならないわけでもないので、お客さまは問題を先送りしがちです」

「このお客さまと専門家の間に立つのがFPです。みなさんは、金融機関で常にお客さまと接しています。そのお客さまに対し生活者の視点で「歩み寄り」、専門用語など使わずに問題点を聞き出すか、気づかせて、必要な「情報」を収集します。そして、お客さまの問題点を整理し、自らできる問題は自ら対処しますが、専門家でなければ解決することのできない問題は、お客さまの了承を得て専門家につなぎます。そして、その回答をもとにお客さまにわかる言葉で説明、提案を行います。FPの定義に「必要に応じて弁護士、会計士等専門家の協力を得ながら…」とあるのは、そういうことです」

「FPは、お客さまと専門家の“みぞを埋める”役割を担っています。したがって、お客さまに歩み寄るための生活知識、お客さまの信頼を得るための話法、そして専門家と会話でき回答を引き出すための専門分野の知識(高度な知識である必要はない。そのため図ではセミプロと表現している)が要求されます。逆に、専門家がFPを目指す場合は、お客さまの生活がわかる知識、最低限の金融知識が必要になります」

「専門家というと、難しく考えがちですが、みなさんの取引先の中に税理士さんも建築士さんもいると思います。彼らもお客さまを求めていますから、多くの取引先を持つ金融機関の行職員と仲良くしたいはずです。そういった専門家に声をかけてみるのも一方法で、相談すれば対応してくれることも少なくありません。自分自身で専門家とのネットワークを築くことも可能なのです」

バックオフィス機能の構築をアドバイス

近代セールス社・近代FP協会がFP養成の対象としたのは、金融機関の行職員 わけても渉外係、セールス担当者だった。
実際にお客さまと接し、テリトリーを持つセールス担当者へのFP教育の成果は目を見張るものがあった。

この方法で1990年代を通じて銀行、信用金庫、生命保険・損害保険会社、都道府県信連・共済連、旧郵政省貯金局・簡易保険局などからFP養成研修を受託した。

また、金融機関からの要請に応えてFP案件へのバックオフィス機能の構築アドバイス、担当者の紹介も行った。研修会の最後には、ロールプレイング方式の修了試験も行い。前マイアドバイザー顧問の故田中英之氏に修了式で講演いただいたこともあった。

2000年前後に多くの金融機関が日本FP協会のAFP、CFP®資格取得を目指すようになったために、近代セールス社も日本FP協会の認定教育機関となり、近代FP協会はFA編集部に統合され、今日に至っている。

なお、筆者は1年前までNPO法人がんと暮らしを考える会の理事を務めていたが(現在は相談役兼相談員)、相談員研修では、FPの役割を上図の「お客さま」を「がん患者とその家族」に置き換えて説明していた。

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