任意後見の開始 【2014年 第5回】

【2014年 第5回】  任意後見開始までの流れについて

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任意後見契約が締結後、実際に任意後見が始まるのはいつでしょう?

第2回でご説明したように任意後見は、将来、判断能力が不十分となった時に備えて契約締結するものです。
もうお分かりですね?任意後見が始まるのは「本人の判断能力が不十分となった時」です。本稿では、任意後見開始まで流れについて説明します。

1)任意後見の開始

1)任意後見の開始

冒頭で述べたように、任意後見が開始するのは、本人(=委任者)の判断能力が不十分となり、自らの財産管理等を十分に行えない状態となってからです。
任意後見を開始するための手続きの流れは、図表1の通り。

まず、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」を行います。申立てができるのは、本人(任意後見契約の本人=委任者)、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。原則として、本人以外が申立てを行う場合には、本人の同意が必要です。
そのため、本人の意思に反して任意後見監督人が選任され、任意後見契約がその効力を生ずる(つまり、任意後見人が本人に代わって職務を行う)ことはありません。

ただし、本人が同意の意思表示をすることができない状態にある時は、その同意は不要とされます。(任意後見契約に関する法律 第四条3項)

 

 

 

 

 

申立ては、本人の住所地の家庭裁判所です。申立てに必要となる費用は、申立手数料として収入印紙800円分、登記手数料として収入印紙1,400円分、連絡用の郵便切手3,200円程度です。(注1)
注1: 本人の精神の状況について鑑定をする必要がある場合には,鑑定費用が必要となることがある。申立てに必要な書類は、申立書及び付属書類等、本人の住民票及び戸籍謄本(全部事項証明書)、本人の任意後見登記事項証明書、診断書、本人の財産についての資料、任意後見契約公正証書の写し、申立人の戸籍謄本、任意後見監督人候補者がいる場合には、候補者の住民票または戸籍附票(法人の場合には、商業登記簿謄本)等です。

必要書類は、家庭裁判所により若干異なりますので、事前に申立てをする家庭裁判所に確認することをお勧めします。

次に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。任意後見監督人の審判が確定すると、任意後見受任者は「任意後見人」となり、任意後見契約に基づき職務を行うこととなります。

また、東京法務局に任意後見登記がなされます。登記完了後、任意後見人は「登記事項証明書」の交付を受けることができます。「登記事項証明書」には、本人、任意後見人の住所・氏名、代理権の範囲が記載されており、任意後見契約が登記されていることを証明するものです。

任意後見人としての職務を行う際、必要となりますので、必ず請求して交付を受け、携帯するようにしましょう。「登記事項証明書」は、窓口(東京法務局民事行政後見登録課または、法務局・地方法務局)、郵送(東京法務局民事行政部後見登録課)、オンラインにより申請できます。

2) 任意後見人の職務と義務

第3回で説明したように、任意後見人の職務は、大きくわけて2つあります。
財産管理に関する法律行為と介護サービス締結等の療養看護に関する事務や法律行為(これを「身上監護」といいます)です。加えて、上記法律行為に関する登記等の申請等、公法上の行為も含まれます。

それでは、任意後見人になると、どのような義務が課されるのでしょうか?
任意後見人には、下記3つの義務があります。

① 善良な管理者としての注意義務(=善管注意義務)

他人の財産管理等の事務を行う者に求められる重い注意義務のことで、一般的に「善管注意義務」と呼ばれます。(民法644条)自分自身の財産を管理する場合と同程度の注意をする義務よりも重い注意義務とされます。この注意義務を怠り、委託者である本人に損失や損害を与えた場合には賠償責任を負うことにもなりますので注意しましょう。

② 委任事務の状況を報告する義務

委託者である本人に事務の状況を報告する事務のことです。報告時期については、随時、定期とありますが、契約締結時に決めておくとよいでしょう。また、事務手続きにより受け取った金銭、領収書等の財物を本人へ引き渡す義務も含まれます。なお、これらの財物引き渡した際は、本人(=委任者)より引き渡した記録となる書面をもらうことを忘れないように注意しましょう。

③ 任意後見契約に関する法律第6条に基づく義務

委託者である本人の意思尊重義務と身上配慮義務を意味します。そのため、本人を取り囲む周囲の人々との連携を密に取り、本人の生活や健康状態を常に把握しておくことが大切となります。また、本人の意思に十分配慮し、常に「本人の利益のために」財産を管理する必要があります。そのためには、任意後見契約締結時に、ライフプラン等を作成するなど本人の意思を予め確認しておくことが大切となります。

 

 

上記3点以外に、任意後見監督人に対する任意後見事務の報告義務があります。報告時期については、予め任意後見契約書に記載しておきます。一般的には、3ヵ月に1回程度とすることが多いようです。

ただし、任意後見契約に関する法律(第7条2項)には、下記のように規定されています。そのため、財産の管理状況、身上監護の状況、費用の支出及び使用状況、報酬の授受等に関する書類は、きちんと整理しておき、いつ提出を求められても応じられるように準備しておくとよいでしょう。

 

 

次回は、最終回「任意後見契約の終了」です。お楽しみに♪

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