相続税の最近動向【2012年 第8回】

【2012年 第8回】相続税の最近動向     最近は相続税への関心も高まってきているようです

浅川 陽子(アサカワ ヨウコ)⇒プロフィール

数年先に「相続税の改正」が行われるといわれており、最近は相続税への関心も高まってきているようです。

 

 

 

 現在、相続税を払う必要のあるケースはどれくらいの割合になるのでしょうか?
その年に亡くなった人の数に対して、相続税の申告がされた被相続人の割合が、財務省から公表されています。
昭和58年以降、最も高かったのが、昭和62年の7.9%です。平成元年から10年までは、5.2~6.8%、平成11年以降22年までは、4.1~5.2%で推移しており、ここ数年は4%台の水準にあります。平成22年は、4.2%で前年に比べると、0.1%増加しました。前年比で、亡くなった人は4.8%増に対して、申告書が提出された被相続人の数は7.1%増になっており、相続税を払うケースが増えていることになります。

一方、相続税を納付した相続人は、平成22年では、122,705人で前年比7131人増、6.2%増になっており、相続税を払う必要のある相続人の数も増えていることになります。

<1件当たりの課税価格は下がっている>

相続税の申告がされた被相続人の数は全国的に増えているものの、相続税を課す対象の資産額である課税価格は、被相続人1人当たりで見ると、平成22年では前年比でほとんどの地域で下がっていることがわかります。

 

 

 

 

 

 

 

相続税の課税価格で、割合の最も高いのが土地です。平成22年でも全体の52.9%を占めていて、次に高いのが現預金等で25.5%、株式等の有価証券13.3%となっています。一方、全体の課税価格が前年比3.47%増に対して、土地の課税価格は0.66%増にとどまっています。
相続税で土地の評価額は路線価を使いますが、相続税の路線価は平成21年と比べ、全国で見ても8%のマイナス、特に東京圏でのマイナスが大きく、このような路線価の下落が土地の課税価格に影響を与えているといえそうです。

 

 

 

 

 

 

 

<相続税の基礎控除の水準>

路線価は2年連続で下落していますが、ここ数年の不動産価格の下げにもかかわらず、相続税の非課税枠である基礎控除の金額が、不動産価格の高かったころと同じ水準ではおかしいという議論もあり、相続税の基礎控除が、平成27年に、現在の6割の水準(3000万円+600万円×法定相続人の数)に下げられるといわれています。現在の基礎控除は、平成6年度改正によるものですから、20年間以上も据え置かれたことになります。

ちなみに、昭和58年の地価を100とすると、現在の地価の水準は100を切っているそうですが、一方、相続税の基礎控除の方は昭和58年で今の4割減の「2000万円+400万円×法定相続人の数」ですから、現在、相続税を本来払うべき人にとっては、過去の水準と比較しても、かなり有利になっているといえそうです。

<相続税を払う必要のある人の数は今後増える>

平成22年から、「小規模宅地等の特例」の改正により、被相続人が居住していた住宅を同居していない子が相続する場合、従来の80%評価減が適用されないことになりました。この影響で、改正前より相続税を払う必要のある相続人の数は当然増えてくると予想されます。さらに、平成27年に予定されている相続税の改正で、基礎控除が大幅に下げられるため、相続税を払う必要のあるケースは増え、現在全体の4.2%という割合から6~7%まで上昇するのではないかといわれています。

相続税対策は、相続税を減らす工夫、相続税の納付資金の確保、もめない相続のための配慮等があげられます。もともと、相続税がかかると予想される家であれば、すでに対策をとっている場合が多いのですが、今後、基礎控除の引き下げで相続税を申告納付する必要がでてくる家にとっては、相続税対策が必要になってくることになります。

また、相続税がかからないケースでも、相続人が複数の場合、今まで仲良くやっていた家族が「争族」にならないために、資産は分割しやすい状態にしておく、遺言書で被相続人の意思を伝えておく等、もめない相続のための配慮も忘れないようにしておきたいものです。

 

 

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