「マンションの騒音問題」【2008年 第10回】

【2008年 第10回 「マンションの騒音問題」】マンション管理コラム

佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール

 

 

 

 

 

 

マンションの3大トラブル第二回目として今月は「騒音問題」について考えてみましょう。

まず、共同住宅という構造上の特徴として「自宅の天井は上階の床」でもあり、「自宅の壁はとなり部屋の壁」を兼ねます。
つまり上下左右にコンクリートをはさむだけで各居室(専有部分)は連続的に配置されているのです。
そのため戸建住宅とは異なりどうしても音や振動が伝わりやすく、トラブルが多発してしまうのです。

最近のマンションではコンクリートスラブ自体を厚くしたり、床構造を二重にして騒音が伝わりにくくする工夫が施されていますが、一方で既築マンションではスラブに直接フローリングやカーペットを敷く工法が多く、音漏れは避けられません。

さらに音が「うるさい」かどうかの判断は、個人の“主観”にもかかわってきます。
ささいな音でも神経質な人にとってはやかましく感じられ、逆に気にしない方は何とも思わないのです。
こうした『生活騒音』は誰もが被害者であると同時に「加害者」でもあります。

要するに集合住宅に住む以上、避けては通れない問題であり、“お互いさま”なわけです。

そこで、こうした日常生活での騒音については常識やマナーを尊重し、常日頃からの近所付き合いによって解消していくことが先決となります。

他方、深夜早朝の楽器演奏や過大なボリュームによる音楽鑑賞、また、カラオケなどによる騒音では対応方法が異なってきます。
ピアノを弾いたりハードロックを聴いたり、また演歌を歌う行為を完全に停止させる権利は誰も持ち合わせない一方で、耳ざわりや不快と感じる人の主張も無視できません。
そして、このような互いの権利の調和点を『受忍限度』といいます。受忍限度を超えていれば誰にとっても騒音と判断され、逆に同限度を超えなければ許容範囲と考えるのです。「我慢の限界点」とも言い換えられます。

ところが『受忍限度』の判断はデリケートであり、多角的な検討が求められます。
ピアノを例に挙げれば、被害者だけではなく第三者からも相当な騒音と感じられるか、演奏時間帯(深夜早朝)はどうか?演奏時間は?加害者は防音対策を講じているか?悪意をもっていないか(不法行為)・・・といった要素が関係してくるのです。
そして受忍限度を超えていると判断されると、法的にはその相手方に対して行為の停止または損害賠償責任を請求できることとなります。

最後に現実的な問題として、管理組合内で訴訟を起こすことは歓迎すべき行為とはいえず、悪い“しこり”を残す懸念もあることから使用細則によるルール化をはじめ、トラブルが起こってからの事後対策ではなく、起こさないような“予防策”に力点を置いた組合運営を心がけることが求められます。

このコラムは、熊本日日新聞(2004年2月16日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。

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