地方税事情【2012年 第12回】

【2012年 第12回】地方税事情 地域:東京

岡本 典子 ⇒プロフィール

いよいよ師走、今年もあとわずかになりました。会社員の方は年末調整の時期です。
今回は地方税について見ていきます。

 

地方税収の内訳

総務省地方税制度では、平成24年度税収は都道府県税(15.5億円)と市町村税(19.8億円)から成り、総額で35.3兆円です。その税収内訳は、個人住民税:(33.2%)、地方法人二税:18.2%(法人住民税:7.0%、法人事業税:11.2%)、地方消費税:7.5%、固定資産税:24.0%、その他:17.1%となっています。

都道府県別地方税収額 ダントツの第一位は“東京都”

総務省による「人口一人当たり税収額の偏在度の推移」(平成22年度決算額)を見ると、税収額最大の都道府県は東京都で、最少は沖縄県です。
全国平均100に対し、1位の東京都は165.6、 2位は愛知県で115.7、3位は神奈川県で108.3。最下位は沖縄県で64.8です。東京都と沖縄県の比率は平成22年度において2.6倍です。
東京都の突出ぶりに驚きますが、私たち東京都民は、そんなに高額な税金を払っているのでしょうか?

「人口一人当たりの税収額の指数」の中身を見ると、個人住民税、地方法人二税、地方消費税、固定資産税の全てにおいて、東京都の指数は全国一位です。地方税に占める割合が一番高い個人住民税における東京都の指数は165.6。2位であるお隣神奈川県の133.8を大きく引き離していることから、東京都民は個人住民税をたくさん払っているといえます。

しかし、指数の面でずば抜けて突出しているのは何かというと、“地方法人二税:250.6”という数字です。地方税全体に占める割合は13%ではありますが、2位:大阪府123.0、3位:愛知県117.5、4位:滋賀県105.7と比較すると、驚異的な独走ぶりが輝いています。
なお、法人税は景気動向の変動などによる影響を受けやすいため、不安定要素が高い税収であることは否めません。
詳しくは、下記のグラフをご覧ください。
人口一人当たりの税収額の指数(平成22年度決算額)

東京都の歳入の約7割は地方税

では、東京都財務局による「東京都の財政」(平成23年度当初予算額を基準)から、東京都の特徴を見ていきます。東京都の平成23年度一般会計の予算規模は、6兆2,360億円。一般会計に特別会計と公営企業会計を入れると11兆7,642億円で、韓国やノルウェーの予算規模とほぼ同程度の財政レベルです。

ここでは一般会計に絞りますが、全国の予算規模においても東京都の6兆2,360億円は、2位大阪府の3兆2,417億円、3位愛知県の2兆1,075億円と比較しても、際立って規模が大きいといえます。

東京都の税収入の約7割は「東京都」

東京都の歳入は「地方財政計画」(※)と比較し、地方税(都税)が約7割を占めるのが特徴です。
「地方財政計画」と東京都の歳入を比較すると、
1. 地方税の割合が高い
2. 地方交付税が交付されていない
3. 国庫支出金の割合が低い
4. 地方債の割合が低い
ことが分かります。

 

 


出典:総務省 平成24年度地方財形計画 および 東京都 平成24年度予算案の概要より執筆者作成

 東京都は昭和29年の地方交付税制度発足以来、一度も交付を受けていない唯一の都道府県で、自前の財政運営が行われています。
(※)「地方財政計画」とは、国の予算編成に合わせて作成される、地方公共団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類をいいます。

東京都の光っている行政サービス

日本中の市町村は競って魅力ある街づくりに力を入れ、「移り住みたい住みやすい街」をめざし、子育て環境、高齢者福祉、教育、公共料金、住宅・インフラなどの分野を中心に、行政サービスに力を入れてきています。
東京の各区や市は、全国レベルでも魅力的な行政サービスがありますので、いくつかご紹介します。

◆千代田区
・誕生準備手当(妊娠20週を経過した妊婦に4.5万円)
・高校卒業まで医療費助成
・次世代育成支援(中学卒業後の4/1~18歳に達した最初の3/31までの子を持つ親に月額5千円)

◆中央区
・出産支援タクシー助成制度(3万円分)
・新生児誕生祝品(区内共通お買物券3万円分)

◆杉並区
・有料サービスに利用できる「杉並子育て応援券」
(予防接種、産後フィットネス、一時保育…2歳まで年6万円、3~5歳まで年3万円)

◆北区
・ファミリー世帯住み替え家賃助成(区内の賃貸住宅居住者がより広い賃貸住宅に転居する場合、家賃との差額を3年まで最大で月額2万円を助成)

◆練馬区
・第3子誕生祝金(20万円)

◆三鷹市
・自転車のレンタルなど

以上のように、子育て関連の助成がめだちます。
各市区町村の財政事情により、サービスの格差が顕著になってきていますので、これから東京都内への転居をお考えの方は、押えておかれるとよいでしょう。

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