金投資の基礎知識【2010年 第11回】

【2010年 第11回】金投資の基礎知識 金投資

三次 理加 ⇒プロフィール

前回は、金価格の上昇・下落に翻弄されることなく利益を追求する方法のひとつとして、「当限の金を買い、同時に先限の金を売る」という取引を紹介しました。
ただし、この方法は、当限の価格が安く、先限の価格が高い「順鞘(じゅんざや)」の状態の時のみ、活用できる方法でしたね。

今回は、前回と逆、当限の価格が高く、先限の価格が安い「逆鞘(ぎゃくざや)」の状態の時に活用できる方法を紹介しましょう。

 

○「逆鞘」を利用した取引

限月の鞘が順鞘ではなく逆鞘の場合であっても、現物と先物を組み合わせた取引により確定利益を追求することが可能です。ただし、現物を持っている人のみに限定されます。

逆鞘の場合には、順鞘と手順が逆になります。まず、当限を売り、先限を買います。次に、当限が納会日となったら現物を受け渡し、先限が納会日を迎えたら現受けをします。こうすれば、もともと保有していたのと同量の現物に加え、利益が手に入ります。

金先物相場は、ここ数年、逆鞘になっていないため、白金(=プラチナ)を例にとって説明しましょう。東京金の1枚は1,000gでしたが、東京白金の1枚は500gです。

たとえば、白金の価格が図1のように、当限(=決済日が一番近い限月)である6月限の価格が高く、先限(=決済日が一番遠い限月)である4月限の価格が安い状態の時に、次のような取引を行います。当限の6月限を6,412円で1枚(=500g)売り、同時に先限の4月限を6,211円で1枚買います。この時、順鞘の時同様、売りと買いは同枚数にし、売買を仕掛けるタイミングも同時にします。

この6月限は差金決済せずに、最終期限である納会日まで保有します。納会日から来たら、手元にある白金を現渡し決済します。その後、4月限が当限となり納会日を迎えた時、現受け決済します。

こうすれば、gあたり201円の「粗利益」を得ることができます。順鞘の時同様、この201円は、買いと売りを新規に建てた取引開始時に確定しています。つまり、その後の価格変動は関係ありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

加えて、順鞘の時と異なり、逆鞘の場合、当限を現渡し決済した時点で粗利益と売却代金が手元に入ります。また、先限を現受けするまでの間、各種証拠金(第7回コラム参照)は必要となるものの、売却代金全額が必要となることはまずありません。そのため、売却代金の一部を流動性の高い金融商品で運用し、運用益を追求することも可能となります。

投資家の中には、大量の貴金属現物を保管している方もいらっしゃることでしょう。この方法を活用すれば、この期間内の保管費用は不要となります。先限を現受けし、現物が手元にくるまでは盗難の心配もありません。売買による利益だけではなく、前述のように粗利益と売却代金の運用益も期待できます。「逆鞘」時のこの取引は、貴金属現物を保有している投資家にとって、非常に有効な投資手段であるといえるでしょう。

○注意点

ただし、現物を貴金属地金で保有していた場合、この取引を行うためには地金を倉荷証券に交換する必要があります。金や白金の場合、商品取引会社にスワップ(交換)手数料を払えば地金と倉荷証券の交換ができることもありますが、手数料の額、取り扱っているか否かは会社により異なります。また、第10回コラムで説明したように、倉荷証券を保有している期間は保管料が必要となります。

さらに、先物市場における決済が完了するまでの期間は、通常の先物取引と同様、建玉(=成立した注文で未決済のもの、ポジションともいう)を保有していることになるのは、順鞘の時と同様です。第10回コラムで説明したように、追証拠金や定時増証拠金などの各種証拠金の追徴により口座内資金が不足となった場合、強制決済の対象となりますので注意が必要です。

次回は、いよいよ最終回。金投資に関する税金について説明します。

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