金投資の基礎知識【2010年 第8回】

【2010年 第8回】金投資の基礎知識 金投資

三次 理加 ⇒プロフィール

前回は、商品先物取引の特徴について、簡単に紹介しました。
今回は、金先物取引の取引概要を説明しましょう。

 

○国内の金先物市場

2010年7月現在、国内には3つの金先物取引が上場されています。東京工業品取引所に2つ、中部大阪商品取引所に1つです。ただし、中部大阪商品取引所は、2011年1月までに貴金属市場の取引を全て休止する予定となっています。そのため今回は、東京工業品取引所に上場されている金標準取引(以下、東京金)と金先物ミニ取引(以下、金ミニ)の2商品を中心に説明します。

ひとくちに金先物取引といっても、商品により概要が異なります。(図表1)以下、説明していきましょう。

 

 

 

 

○値段の表示単位

ニュースや新聞で報道される株価は、NTTドコモは140,000円、ソニーは2,555円というように、1株あたりの値段表示となっています。一方、商品先物の場合には、商品により数量の単位が異なります。たとえば、金はグラム、ガソリンはキロリットルと数えます。新聞などで報道される金の価格は、1グラムあたりの価格が表示されます。この価格を表示する単位のことを「呼値(よびね)」といいます。

また、株の場合、たとえばNTTドコモは1株あたり100円刻みで価格が変動します。一方、東京ガスは1株あたり1円刻みで価格が変動します。つまり、銘柄により値動きの単位が異なります。商品先物取引の場合も同様です。たとえば、東京金と金ミニはともに1円刻み、ガソリンは10円刻みで価格が変動します。この値動きの刻みを「呼値の単位」といいます。

○取引単位

商品先物取引では、売買単位を枚(まい)と数えます。株の場合、売買単位は○株と数え、1株あたりの価格が表示されます。一方、商品の場合、売買単位は○枚と数えますが、表示単位は枚ではなく、前述したように呼値あたりの価格が表示されます。ちなみに、東京金の1枚は1㎏(1,000g)、金ミニの1枚は100gです。

○値動きと損益

株の場合、総取引金額の計算方法は「1株あたりの値段×最低売買単位×セット数」です。たとえば、売買単位が100株のソニーを1株あたり2,550円で200株買う場合、総取引金額は2,550円×100株×2=51万円。

商品先物取引の場合も同様です。表示されている値段(呼値あたりの値段)に1枚あたりの数量と枚数を掛ければ、総取引金額が計算できます。

 

 

たとえば、東京金をグラムあたり3,500円で1枚買う時の総取引金額は、3,500円×1,000グラム×1枚=350万円となります。

商品先物取引では、この1枚あたりの数量(東京金の場合、1,000グラム)を「倍率」といいます。この倍率と呼値の単位(値段の刻み)を覚えておくと、簡単に損益を計算することができます。東京金の場合、呼値の単位が1円で倍率が1,000倍。1円×1,000倍=1,000円。つまり、価格が±1円動くと1,000円の損益が発生することになります。
同様に、呼値の単位が1円で倍率が100倍の金ミニは、1円×100倍=100円。つまり、価格が±1円動くと100円の損益が発生することになります。

○証拠金

前回説明したように、商品先物取引は「総取引金額の3~10%程度の『証拠金』で取引ができる」という特徴があります。取引開始時に必要となるのが「取引本証拠金」。短く「本証(ほんしょう)」ともいいます。本証は、売買注文を出す前までに取引会社に預けなければならない証拠金です。2010年7月現在、本証の目安は金先物が135,000円/枚、金ミニが18,000円/枚です。

なお、本証の金額は、取引所が定めた金額(=取引本証拠金基準額)を下回らない範囲で、取引会社が自由に決めていいことになっています。そのため、会社によって金額が異なることがあります。

○限月(げんげつ)

前回説明したように、商品先物取引には、原則、決済期限があります。この決済期限のことを「納会日(のうかいび)※」といいます。原則として、この納会日が属する月のことを「限月(げんげつ)」と呼びます。限月は、原則、6本設定されています。限月は、偶数月で形成されているものもあれば、奇数月、連続月となっているものもあります。東京金、金ミニは、いずれも偶数月で設定されています。
2010年7月現在、存在している限月は、2010年8月限、2010年10月限、2010年12月限、2011年2月限、2011年4月限、2011年6月限です。(図表2)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、商品の価格はこの限月ごとに決めらます。つまり、限月の数だけ価格が存在することになります。たとえば東京金の場合、6限月分の金先物価格が存在します。
※ 商品によっては、「取引最終日」という。

○現受けの有無

前回説明したように、商品先物取引は、将来の期限が到来した時に、現物と総代金を受け渡しすることにより取引を終了させることもできる取引です。しかし、受渡決済ができない商品もあります。
東京金は、現物の受け渡しによる決済が可能となっています。一方、金ミニは、現物の受け渡しによる決済はできません。全て差金決済することになります。

以上、簡単に金先物取引の概要を説明しました。商品先物取引や証拠金取引が初めての方には、証拠金が2万円弱と少額で、総取引金額も35万円程度の金ミニがお勧めです。

次回は、金先物取引の活用方法を紹介しましょう。

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