米国不動産ローン:米国住宅ローンの審査基準【2010年 第 8 回】

【 2010年 第 8 回】米国不動産ローン:米国住宅ローンの審査基準 ~ アメリカ事情

 竹内 守(タケウチ マモル)

皆様の記憶に新しいサブプライム問題から、リーマンショックが起こったのが2008年の秋でした。それからおよそ2年が経とうとしていますが、米国住宅ローン審査基準の変貌振りには、日々現場で接している我々にとっても驚かされるものです。一言で言えば、数年前までが異常で、現在、正常且つやや厳格な審査になっていると言えると思います。当時と、現在を対比させながら、また、日米での比較もふまえ、米国の不動産ローンの審査基準についてご案内したいと思います。

 

米国の不動産ローンの審査基準

まずは、日本との大きな違いは年齢制限がないということが挙げられると思います。もちろん、未成年者がいくら十分な収入があるからといって一人でローンを取ることは出来ません。ここで言う、年齢制限というのは、例えば70歳、80歳になっても収入さえあれば一般的な30年固定型のローンが組めるということです。

日本では、恐らく申請時60-65歳までで、最終返済時の年齢が80歳までなどの制限があるかと思います。また、これはアメリカだけではなく、世界的に共通していると思いますが、人種・性別・宗教・婚姻の有無・国籍による審査差別は一切ありません。日本は単一民族ですので、このような開示自体は必要ないことでしょう。

ローンの承認を得るためには基本的に、以下の3要素が基準となります。

   ① クレジットスコア:個人信用情報機関/信用調査会社

   ② 返済負担率:年収(税込み)に対する年間返済額の割合

   ③ 融資比率:住宅価格に対する融資額の割合

① クレジットスコア

このシステム自体は、米国だけの基準かもしれません。現在の負債残高、支払い額、過去の返済の履歴などを、独自のシステムで点数化したもので、一般的に300~850で表されています。その点数が高いほど貸し出しに際してのリスクが、低いということになります。同時に、クレジットカードが何枚あって、それぞれの限度額に対して残高がいくらあるか、自動車ローンの返済額、過去に支払い遅れがあるか否か、自己破産の記録等が、詳細なレポートとして表示されます。740以上あれば最優良の借り手とみなされ、現在では最低620以上なければローンを組むことが出来ません。

以前は、このスコアが500点以下でも組めるローンのプログラムがありました。それが、サブプライムローンだったわけですが、500点以下のスコアというのは、自己破産をしていたり、90日以上の延滞が複数あったり、車・家を差し押さえられた経歴があった場合などです。サブプライム問題は、このような貸し倒れが起こるのが当然のような借り手が多かった理由で、日本でもいわゆるブラックリストに載せられるような借り手です。

② 返済負担率

日本の住宅ローンにおいて、返済負担率を各銀行で25%~40%と決めているのと同様に、米国の住宅ローンでもこの率は設定されています。現在は、クレジットカード、車のローン等の返済額を含め、一般的に45%~50%までが融資可能とされています。サブプライム全盛時には、この率が最高65%までになっていました。

③ 融資比率

現在は、物件価格に対して100%融資のローンがなくなりました。最高で融資比率の95%まではありますが、クレジットスコアが最低740以上、返済負担率が41%以下に収まることが絶対条件となります。地域によっては、95%までのローンの承認が出ないところがありますので、80%までの融資枠が一般的となります。但し、政府系機関が提供している退役軍人向けのローンプログラムでは、96.5%~100%のローンも現存しており、実際の申請・融資件数も増えております。

審査基準の大きな要素はこの3つとなり、日本でのローンプロセスとでは、あまり大差はないのではないでしょうか。基本的に、この3つの要素である銀行基準に満たないと融資の承認は、得ることが出来ません。
サブプライムやリーマンショックの影響により、銀行のローン承認基準も上がり、今後の不動産市場の低迷も暫く続くことでしょうが、アメリカ政府に早い解決法を見つけてほしいものです。

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