日本文化の伝道師 台湾・香港【2009年 第 5 回】

【 2009年 第 5 回 】日本文化の伝道師 台湾・香港 もう一つの日中関係 黒潮枢軸

大山 宜男(オオヤマ ノブオ)

『台湾と香港が日本の現代文化・社会風俗が中国各地に波及するハブ(経由地)となっている』と2009年7月30日付の日経新聞囲み記事『転機の中国 広がる日本文化』は伝えています。先月号の最後で次は「オフショア的日中関係」と「オンショア的日中関係」に入って行くと予告しましたが、これを先延ばしして第5回はこの新聞記事をもう少し掘り下げることで黒潮枢軸という私たちのテーマに迫りたいと思います。

記事を引用します。

『台湾(約2300万人)、香港(約700万人)の人口を合わせても中国の2%強に過ぎないが、文化面で大きな影響力を持つ。

博報堂が毎年、アジアを中心に世界14都市で実施している消費調査によると、日本の製品を「かっこいい、センスがいい」と答えたのは台北、香港で70%を超えたのに対し、北京、上海は30%台に留まった。』 

アジア生活者意識調査

さっそく博報堂のホームページを参照してみたが日経新聞が記載している最新データは未掲載のようでした。そのかわりほぼ同じ調査の2000年版をみつけました。任意でデータをピックアップしたのが下表です。これを日経記事風に書きなおすと「かっこいい、センスがいい」と答えたのは台湾で69%、香港で87%と高い評価なのに対し、上海は55%に留まった。」となります。大雑把に言って香港や台湾での評価が21世紀を通じて従来同様の高い評価を維持しているのに対し、上海ではむしろ50%台から30%台へと評価が落ちたことになります。

アジア生活者意識調査(2000年)
アジアの12大都市で約1万人を調査

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新聞記事を続けます。

『日本というと「食」「ファッション」を連想するとした割合も、台湾・香港が60~80%になったのに対し、北京、上海は20~30%だった。台北、香港の日本に対する関心の高さが目立つが、北京、上海に日本文化が浸透していないわけではない。
音楽界では日本の流行曲が台湾・香港で中国語になり、中国に渡ってヒットする。日本の曲と知らずに口ずさんでいる中国人も多い。博報堂研究開発局の原田曜平研究員は「中国では20代以下のインターネット世代を中心に台湾・香港の影響を受ける傾向がさらに強まっている」と指摘する。』

台湾と香港、北京や上海では日本の認識に差がある

日経新聞によれば、更に次のことが分かります。

台湾と香港では日本製品を「カッコいい」「センスいい」と評価している度合より高い度合で日本といえば食を連想するとこたえています。また「カッコいい」「センスいい」と評価している度合と同じくらいの度合で日本といえば「ファッション」も連想しています。それに引き替え、北京や上海では食やファッションは日本製品より低い度合でしか連想されていません。

1978年の改革開放宣言、1992年鄧小平の南巡講話以来の「自由化」に過ぎない中国とそれ以外の東アジアは近代の歴史が違うので仕方がない面もありますが、では中国本土の中での日本の認識はどうでしょうか?同じ博報堂の調査を下に示します。

(2003年)

 

少し、古いですが、2003年と言えばすでに十分「自由化」している時期でこの表でも水色で示した沿海部=黒潮地域の人たちが内陸部の人たちの約2倍の度合で日本へ行ってみたいと考えていることがわかります。

 

私が第1回から第4回、そして今回主張していることは一貫しています。
日本列島~琉球~台湾~香港と繋がる黒潮の流れとその上の空間を意識しなければならないということです。
ここには衣(ファッション)食(海の幸を使った料理)住(高温多湿に対応した住居)の共通性とそれに根ざした連帯が見られます。
日本列島~琉球~台湾~香港という4つの地域のなかで台湾と香港は中国語を母国語とする地域であり、黒潮文化圏と中国文化圏という二つの集合論の輪が交差している地域と言えます。だから日経新聞が指摘するように台湾と香港が「ハブ」(経由地)となって日本文化を中国の人々に紹介していると言えるのです。

国際関係論という学問では、食文化をはじめとした幅広い相互理解が地域の安定と繁栄に貢献すると示唆しています。

いくらアメリカが大好きな人でも日本が引越しすることは出来ません。日米と日中のバランスがとれた日本の安定のために台湾~香港へと続く黒潮枢軸を大事に発展させることが大切だと思います。

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