選べない住宅ローンの実態【2011年 第7回】

【2011年 第7回】 選べない住宅ローンの実態 ~住宅ローン~

奥田 智典(オクダ トモノリ) ⇒プロフィール

本来、住宅ローンは有利なプランを自分で選べるものなのですが、実態はそうではないようです。今回は住宅ローンに対する宅建業者、銀行の考え方も踏まえて話をしていきます。

以前もこのコラムで書きましたが、住宅ローン販売競争はますます熾烈となっています。住宅需要は回復基調にあるとはいえ、新規購入者の絶対数が減少している昨今、競争は激化。
その中で確実に住宅を販売し、利益を確保するためにも営業の効率化は欠かせません。

囲い込み戦略で効率化を狙う宅建業者と銀行

皆さんは、今、日本で利用できる住宅ローン商品がどのくらいあるかご存知ですか?今や銀行ごとに変動金利プラン、○年固定金利プラン、全期間固定金利プランがあり、○年固定金利プランの中でも2、3、5、7、10という具合に種類が分かれます。2011年4月時点で銀行の数がざっと150社ほどありますので、単純に考えても400種類以上の住宅ローン商品がある計算になります。そんな中から自分達にあった住宅ローンを選ぶなんて、至難の業ですよね。

そこに目をつけた銀行と宅建業者が考え出したのが、『業務提携』という仕組み。簡単にいうと、「○○ハウスで家を建てるお客さまは、××銀行を利用すると0.2%金利優遇します。」というものです。住宅購入者からみれば、住宅ローン選びの労力を軽減してくれて、なおかつ金利も優遇してくれると聞けば、とても魅力ある仕組みに思えますよね。

実際、ほんの3年前には住宅ローンに占める3年固定金利プランの割合が実に60%を超えておりました。ここ2年は住宅金融支援機構『フラット35S』の金利優遇策によりその割合は下がりましたが、それでも未だ50%近くが3年固定金利、あるいは変動金利プランです。これはとりもなおさず提携プランが浸透した裏返しと言えます。

ただ、問題はそのプランが、本当にその方の返済能力に見合っているかどうか。本来3年固定金利や変動金利プランとは、仮に途中で金利が上がり、返済額が上がっても十分耐えられる方が選ぶプランであり、住宅ローン利用者の50%が使用できるプランとは到底思えません。ライフプランを見据え、そのうえで選んだ人はごくわずか。大多数の人は、そのプランしかない、お勧めされたからそのプランで、という選び方をしているのが実態です。

囲い込み戦略に見え隠れする銀行と業者の本音

住宅ローンは人生最大の買い物。買い方を間違えると、過大な負担が残ります。だからこそ本来であれば、まずライフプランをたて、住宅以外の教育や老後の支出もふまえた上で、住宅ローンプランを考えるべきなのですが、実態はそうではありません。そこには、銀行と宅建業者の本音が見え隠れします。

銀行は住宅ローンを貸すことが仕事なので、極端にいえば借りてくれればそれでヨシ。数ある中から熟慮して選ばれる住宅ローンも、お勧めするままに選ばれる住宅ローンも銀行にとっては同じ。だったらパターン化して簡単に売ったほうが手間いらずでスピーディ。イチオシはもちろん、銀行にとって採算が取れ、目先の金利の安さもアピールできる3年固定金利住宅ローン、あるいは変動金利住宅ローンです。

住宅営業マンも家のセールスに集中したいから、住宅ローンについては簡単にお勧めプランで貸してくれる銀行を使ったほうがラクと考えます。したがって銀行がお勧めする3年固定金利住宅ローン、変動金利住宅ローンをプッシュします。

利益を上げるためには効率化は必須。1人のお客さまにかける時間を考えれば、住宅ローンと住宅販売をセットにできる仕組みは、銀行と業者の思惑が一致するのです。

提携プランとどうつきあえばよいか

提携プランは、何も悪い仕組みではありません。実際ラクですし、金利も優遇してくれますから。ただ、やみくもに信用すると、落とし穴があるので注意が必要です。

大切なのは住宅ローンプランを考える前に、ライフプランをきちんとたて、人生のお金の流れを把握すること。収入、支出の状況。家族構成、人数や、年齢差などで選ぶべき住宅ローンプランは異なります。
まずはライフプランをたて、住宅ローンプランの見込みをたてる。そのうえで、提携プランにその形を満たすものがあれば利用すれば良いですし、なければ幅広い選択肢のなかから最適な銀行を選べば良いでしょう。

もし迷った時は、身近なファイナンシャルプランナー(FP)、出来れば独立系で住宅に強いFPを見つけ、相談されることをお勧めします。ぜひ、マイアドバイザー.jpへ問い合わせをしてみてくださいね。

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