今日もIt’s書!⑧ ~そんなハズでは!離婚時の年金分割の光と影!?~【2008年 第8回】

【2008年 第8回 今日もIt’s書!⑧ ~そんなハズでは!離婚時の年金分割の光と影!?~】地域コラム 九州・沖縄

平川 すみこ(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール

 

 

 

 

 

この本が出版されたのは平成18年11月。時は平成19年4月から始まる離婚時の年金分割に向けての話題が盛り上がっている頃です。
「離婚したら夫の年金が半分もらえる!」。そう期待して制度スタートまで離婚をじっとガマンしている女性も多くいたことでしょう。その制度のしくみをよくわかっていないままに。
そして実際に離婚したときにこう嘆くことになります。「そんなハズでは!」と。

そんなことにならないように、事例を使ってわかりやすく制度のしくみと注意点について書かれたのがこの本。
菅野さんは年金に関するメルマガも発行されていますが、こちらも事例形式で、平易でありながら明瞭でとってもわかりやすい文章に愛読者も多く、平成16年にはオールアバウトジャパンのスーパーおすすめサイト2004メールマガジン部門で大賞を受賞されています。

そんな菅野さんがこの本を通じて伝えたいことは、単に年金および分割年金のしくみや注意点だけではなく、年金制度からみえる人それぞれの人生模様や生きざまではないのだろうかと私は思うのです。

本の中では、離婚以前に、そもそも夫婦のあり方についても語られています。
事例には、妻または夫の互いの連れ合いに対する心情も描かれていて、それが、離婚そして年金分割を前にしてどういう選択をしていくことになるのか。相手に対する愛情、不満、憎しみ、葛藤、etc。
夫婦ってなんだろう、ひとりより二人の方が幸せになれるのだろうか。
なにが自分にとっての幸せなんだろうかということをもまた、深く考えさせられるのです。

そしてお互いに別々に生きることを決意したとき、夫婦にとって年金分割制度は福音となるものなのでしょうか。
少なくとも女性にとっては有利になる制度と思われていますが、果たして?

そもそも年金制度はフクザツです。
だから、離婚時の年金分割だって、単純に年金を半分っこなんてわけがありませんね。
分割される年金は婚姻期間中の厚生年金のみで、それも離婚時には年金保険料の納付記録が分割されるだけ。
実際に分割された分は、自分自身の年金受給権が発生したときでないと受け取れません。
また、半分というのは、婚姻期間中の夫婦の年金保険料納付記録を合計して最大半分ずつになるよう分割するということ。妻にも厚生年金の加入期間があれば、分割でもらえる年金は僅か。
夫よりも納付記録が多ければ、逆に夫に分割してあげなくてはならないことにもなります。

一方、年金分割を請求される側になりやすい男性。
一度分割した年金は、別れた妻が大金持ちと再婚しようが、年金を受給する前に他界してしまおうが、戻ってくることはありません。
そして、自分が再婚して新しい家族ができたとき。
自分に万が一のことがあった場合に頼りにしたい遺族年金も、分割後の少なくなった納付記録にもとづいた少ない年金額しかないのです。
もちろん、老後の年金も然り。

このようなしくみの細かいことや注意点は、制度スタートから1年以上経った現在では、かなり知れ渡ってきているとは思うのですが、そもそも年金というのはひとりひとり違うもの。
「こういうしくみ」と概要を聞いたことで、かえって、それが自分の場合にはあてはまらないことがあるなどと思い至らずに大いなる勘違いと誤算を抱えたままの方も多いかもしれません。

この本を読むのは今からでも遅くはありません。
これから離婚する方も、離婚を考えている方はもちろん、今は仲良しだから離婚なんてと思っているご夫婦も。そして、これから結婚する方(結婚に憧れを持っている方はいろんな夫婦の姿を知るため?)にもおすすめです。

それだけでなく、年金というものは誰にでも生涯係わりがあるもの。
年金のしくみを知っておくことはとても大事なことです。
しくみを知ることで、夫婦単位ではなく、自分単位でしっかり年金(そして年金では不足する分も)を準備しておけば、夫婦でいても、一人になっても、どんな選択をしても自分の幸せにつながるのではないでしょうか。

最後に、きっとこの本を読まずにはいられなくなる、菅野さんからのメッセージをお伝えします。
(本の帯にも載っている、著者あとがきからの抜粋です)

“自分の年金という家をしっかり建てておいて欲しいのです。
それがいつかきっと自分のためになるはずです。
これから先、分かれ道に立ったとき、
お金のために不本意な道を選ぶのではなくて、自分の道を選べるはずです。
そんなメッセージをこの本から受け取ってもらえれば幸いです。”

『妻も年金 夫の年金~夫婦の年金について伝えたいこと~』
(菅野美和子著、企業年金研究所)
本の紹介URL:http://www.bk1.jp/product/02730955

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