商品価格はどのくらい上昇しているの?(後編)【2012年 第2回】

【2012年 第2回 商品価格はどのくらい上昇しているの?(後編)】若者&奥様のための「商品投資入門」

三次 理加(ミツギ リカ)プロフィール

 

前回、商品価格がどのくらい上昇しているのか?をお伝えしましたね。商品価格が上昇しているのは、なぜでしょうか?今回は、その背景について説明しましょう。

商品価格上昇の背景

商品価格上昇の主な背景は、以下3つが挙げられます。

1.中国・インド等新興国の経済成長に伴う需要増加

2.商品の金融商品化

3.米国をはじめとする先進国の金融緩和策

 

1.中国・インド等新興国の経済成長に伴う需要増加

皆さんもニュースなどでご存知と思いますが、ここ数年はやや減速気味とはいえ、2000年頃より中国やインド等の新興国は右肩上がりの経済成長を続けています。IMF(国際通貨基金)(注1)によれば、2011年の世界経済成長率は3.8%でした。その内容をみると、先進国の平均が1.6%であるのに対し、新興国の平均は6.2%。中でも中国は9.2%、インドは7.4%と、過去数年の2ケタ台から比べれば若干減速してはいるものの、他の国々に比べれば突出しています。ちなみに、日本は-0.9%です。

経済成長により、これら新興国の人々の生活が豊かになると食生活が変化します。たとえば肉の消費量が増加します。農林水産省の試算(注2)によれば、牛肉1kgを作るために必要な飼料は、とうもろこし換算でおよそ11kg、豚肉1kgを作るために必要な飼料は7kg、鶏肉1kgを作るためには4kg、卵1パック半を作るために必要な飼料は3kgです。つまり、肉食の増加は穀物の需給ひっ迫要因、すなわち価格押し上げ要因となります。

また、穀物だけではなく、銅、鉄鉱石、原油をはじめとする資源需要も増加しています。たとえば、中国は、2003年から、それまで世界第2位の石油消費国だった日本を抜き、米国に次ぐ石油消費国となりました。

上記に加え、世界人口の爆発的な増加も商品価格上昇の背景のひとつです。国連人口基金(UNFPA)によれば、1950年に25億人だった世界人口は、2011年10月末で70億人を突破したとのこと。最近50年間で、穀物の飼料需要はおよそ3.8倍、食品工業需要はおよそ4.8倍になりました。一方、収穫面積は1.5倍になった程度。それでも需要を満たせていたのは、単位面積あたり収穫量が2.5倍に増加したからです。しかし、最近では、収穫面積、単位あたり収穫量ともに伸び率は横ばい傾向にあります。
注1: 「IMF世界経済見通し 改定見通し」2012年1月24日
注2:農林水産省ホームページ「食料の未来を描く戦略会議」資料集」平成20年5月

 

 2.商品の金融商品化

2006年11月、年金運用の世界に新たな動きがありました。米カリフォルニア州職員退職年金基金(以下、カルパース)が、商品市場に5億ドルの投資をすることを発表したのです。カルパースは、全米最大の年金基金。それだけに、他の年金基金の運用方針に与える影響も小さくはありません。以降、商品市場に欧米年金マネーが流入、その運用額は年々拡大しています。

 商品市場に年金マネーが流入、といっても、彼らが金や原油、穀物などの現物商品を大量に購入し、倉庫に保有するわけにはいきません。そこで彼らが選択した方法は、商品指数連動型投資信託や商品ETF(上場投資信託)といった「金融商品化された商品」を通じて商品市場へ投資を行うことでした。

 商品ETFの代表格が金ETFです。世界の証券取引所に上場されている金ETFは、残高に応じて金現物を実際に購入し銀行に保管する、という仕組みになっています。そのため、金ETFの残高増加は金需要の増加要因となり、金価格上昇の長期的下支え要因となっているといえます。事実、ドル建て金価格の推移と金ETF残高の推移をみると、金ETF残高増加に連れ金価格が上昇傾向となっていることがわかります。

ちなみに、現在、世界の金ETFは、1年間の世界金鉱山生産量に近い数量の金現物を銀行金庫に保管しています。

 年金マネーは長期投資が基本です。そのため、長期的に商品市場で「買い」を保有し続けることになります。年金マネーによる商品市場への大量の資金投入が昨今の商品価格上昇に拍車をかけている、といえます。

 

3.米国をはじめとする先進国の金融緩和策

商品価格上昇に拍車をかけているのが米国をはじめとする先進国の金融緩和策です。2000年のITバブル崩壊、2001年の9・11米国同時多発テロ、2008年夏のサブプライムショック、そして2009年から始まったギリシャに端を発する欧州債務危機。これらの難を回避するために、各国は金融緩和策を取っています。大量に余った資金は、より利益の上がる市場を求めて商品市場に流入したのです。

また、大量の資金供給により、米ドルは主要通貨に対して史上最安値圏で推移しています。

一般に「ドル安は商品高を招きやすい」といわれます。米国は世界最大の穀物輸出国です。ドルが下落すれば輸入国は安く穀物を購入することができるため、穀物需要を喚起することになります。また、世界における原油取引は、ドル決済が主流です。そのためドル安となった場合、産油国は消費国の増産要求に応じず、減産もしくは生産量を維持することにより原油価格の高値維持を図る傾向が強くなります。

今般、ギリシャに端を発する金融危機により、日米欧英は昨年1年間でおよそ1兆8千億ドルの金融緩和を行っています(注2)。これらにより余った投資資金は、果たしてどの市場へ向かうことになるのか、注目されます。
注3:日本経済新聞 2012年2月5日付け朝刊1面

次回は、「商品投資のメリット・デメリット」について紹介します。お楽しみに。

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