お勤めの方(民間)の相談事情とポイント【2016年 第8回】

【2016年 第8回 お勤めの方(民間)の相談事情とポイント】最近のFP相談事情と今後

長谷 剛史 (ハセ タケシ)

第7回では年代別の相談事情とポイントの4回目として、50代を取り上げてご紹介しました。
今回からは職業別FP相談事情とポイントを取り上げ、その1回目としてお勤めの方(民間)の相談事情とポイントをご紹介したいと思います。
家族構成や年代及び年収によって相談内容は異なりますが、どのような相談が多いのでしょうか?

(1)保険に関するご相談

子どもがいるような家庭だと教育費にお金がかかるので保険料を削減したい、しかし、万が一のことが起こった場合に困らないようにしたい、と悩まれる方が多いです。
まずは、公的な保障である遺族年金や高額療養費の制度を把握し、お勤め先に有利な制度や保険がないかを確認することから始めましょう。

例えば、お勤め先の死亡退職金や年金制度はどうなっているのか、高額療養費制度(*1)の自己負担額が引き下げられていないか、団体契約(*2)のお得な保険料で保険に加入できないか、などお勤めしていることを最大限に活用することが先決です。
保険商品を比較する前にやれることがたくさんあるでしょう。

(*1)高額療養費制度…医療機関や薬局の窓口で支払った金額が一定額を越えた場合、その越えた金額が支給される制度。

(*2)団体契約…一定の要件に該当する企業などの団体が契約者になり、従業員を被保険者として締結する契約。契約人数に応じた団体割引がある。

(2)預貯金に関するご相談

なかなか貯金が増えない、超低金利なのでどこで貯金をすれば良いか、と悩まれる方が多いです。
貯金を増やす考え方で重要なのは、「収入-支出=貯金」ではまず貯まりませんので、「収入-貯金=支出」と考えることが重要です。
貯金をした残りのお金で生活するという意識を持つようにすると、貯金は増えていくでしょう。

また、超低金利の時代ですがお勤めの方は、社内預金(*3)や財形貯蓄制度(*4)を使い給料から天引きで貯金するのが効果的です。
社内預金は自分で銀行へ預金するより金利は高めですし、財形貯蓄制度を使えば一定金額まで利子が非課税になるなどの特典がありますので、利用できるようでれば積極的に利用するようにしましょう。

さらに、資産運用にご興味ある方でお勤め先が給料天引きでNISA制度(少額投資非課税制度)(*5)を利用できるようであれば、是非利用を検討してみましょう。

(*3)社内預金…お勤め先が福利厚生制度の一環として給料の一部を天引きして有利な金利で貯蓄できる制度。

(*4)財形貯蓄制度…お勤め先が金融機関と提携して給料の一部を天引きし、お金を貯める制度。

(*5)NISA制度…年間投資金額120万円までの株式や投資信託にかかる値上がり益や配当金(分配金)が非課税になる制度。

(3)確定拠出年金制度(企業型)に関するご相談

お勤め先の退職金制度に確定拠出年金制度(401k)が導入され、制度がわかりにくいし商品選択と言われてもどうすればいいのかわからない、と相談に来られます。
まずは、従業員にとって運用によって生じた収益は非課税などメリットが多い制度であることを理解し、お勤め先の退職金制度が確定拠出年金制度のみなのか、他の制度と併用されているのかなど退職金制度全体を把握するようにしましょう。

次に、お勤め先が確定拠出年金制度を導入するにあたり従業員の運用利回りの期待値を設定していることが多いです。
この期待値は想定利回りと呼ばれ、予定された退職金を受け取るためには想定利回り以上で資産運用を考える必要がありますので、把握するようにしましょう。

最後に商品選択ですが、この制度は基本的に60歳迄お金を引き出すことができず自然に資産運用の基本的な考え方である長期投資を行うことになりますので、リスクをとってリターンを求めることも考えてみましょう。
資産運用を好む好まざるに関わらず、お勤め先がこの制度を導入すれば拒めませんので、これを機会に資産運用の勉強を始めるのはいかがでしょうか?

(4)住宅ローンのご相談

新規で住宅ローンを組むケース、あるいは住宅ローンの借換えのケース、大きなお金が動きますのでご相談が多い項目です。
民間銀行の住宅ローン金利を比較するのもいいですが、その前にお勤め先を経由したら一般の方より金利が低くなる優遇金利制度がないかどうかを確認するようにしましょう。
お勤め先によっては公にならない低い金利で住宅ローンを組める可能性があります。

お勤めの方(民間)の相談事情とポイントは参考になりましたでしょうか?
様々な年代の方から多種多様なご相談がありますが、今回はお勤めの方(民間)の特徴を考慮して相談事情をご紹介しました。
また、ポイントとしては、お勤め先に有利な制度がある場合が多いので、まずは制度を確認し利用できないかどうかを検討することが大切です。

最後に、保険や投資信託などの商品選択だけではなく、社会保障制度やお勤め先の制度も考慮したアドバイスができ、人生相談もできる一生お付き合いができるFPを見つけて欲しいと思います。

次回は、職業別FP相談の2回目として公務員の方の相談事情とポイントを取り上げますので楽しみにお待ちくださいね。

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