経済の効率を高めるための税制活用【2012年 第3回】

【2012年 第3回】 経済の効率を高めるための税制活用
ケース別コラム – 経済統計から考える資産運用

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

環境悪化を食い止めるために、税制を活用することは一つの大きな選択肢となります。しかし、実際に運有する場合は大きな困難があります。

 

 

 

 

私たちが国や自治体に支払っている税金。それは何のために使われているのでしょうか。次のようなものが考えられるでしょう。
①政府の運営と社会資本の整備
②富の再分配
③経済の円滑な運営
他にもいろいろな目的が考えられますが、今回は③の“経済の円滑な運営”について環境問題と絡めて考えてみましょう。

(1)新古典派モデル

いわゆる主流の新古典派の経済学では完全競争市場のもとでは、政府が介入しない民間の自由な競争によって、最も効率的な資源の配分が達成されると言われています。

グラフ1の完全競争モデルでは供給曲線と需要曲線の交点で均衡し、価格はP、需要量はXとなります。その交点が最も効率的な点となります。

(2)市場の失敗

新古典派モデルが機能するのは、生産に要するコストを生産者がすべて負担し、それを価格に転嫁している場合です。もし生産に要するコストを生産者が負担しないで社会全体に転嫁するとどうなるでしょうか。例えば生産により環境が破壊されるような場合、政府の何らかの規制が無ければ、環境破壊のコストは生産者が負担することなく結局は社会全体の損失となります。

生産者が負担するコストを私的費用、社会が負担する費用を社会的費用と言います。社会的費用が存在する場合、その部分は価格に反映されず、それだけ低い価格で市場に供給されることになります。価格が費用を反映していないという事は資源の配分が効率的にいかないという事です。このように完全競争市場でも経済が効率的にならない分野を“市場の失敗”と言います。

市場に任せてもうまくいかない場合、その時に政府の出番となります。そこで政府が社会的費用相当分に税金をかけるとします。

生産者にとっては税金の分だけ費用が増すため、グラフ1の供給曲線は上にシフトします。これにより価格はPからP1へ上がり、需要量はXからX1へ減少します。このようにその商品の生産が抑制されることにより、生産に伴う環境破壊などの社会的費用も抑制されることになります。

このように、自由競争だけではうまく機能しない場合、税金により効率性を高めていくという効果も期待できます。

(3)税制による市場の補完の問題点

このような税金の運用にも実は様々な問題があります。
①まず、どの程度の税金をかけるべきなのか?社会的コストを金額的に正確に見積もることは一般には困難です。次に、実際に社会コストが発生する可能性が低いが、発生した場合それは巨額なものになる可能性がある。すなわち非常に不確実性が高い場合もコストの正確な計測は困難です。
②一旦制度が運用されても、社会や技術の変化により社会的コストは常に変化します。しかし税金となるとその額は既得権を守ろうとする力が働き硬直的なものとなります。特にそれぞれ、生産者や消費者の利害関係が絡むと本来の目的を外れて運用される恐れがあります。

仮に適切に社会的コストを計算できたとしても、税額を決めるにはいろいろな力学が働きます。結果的には各政党や支持団体の妥協の産物となり、経済をより非効率な方向に導く恐れがあります。
そこで、その社会的費用の計測も政府を離れて市場に委ねようとして出来たのが二酸化炭素排出権取引です。これも国際的に力学に晒されていますが、市場の欠陥を補う新しい試みとして注目されています。

社会的費用ばかりではなく、税金には負の税金すなわち補助金を含めてそれぞれの目的があります。税金は一般に経済の効率を低下させると言われていますが。このように経済の効率を高めることが出来る税金も有ります。
グラフ1の完全競争モデルでは供給曲線と需要曲線の交点で均衡し、価格はP、需要量はXとなります。その交点が最も効率的な点となります。

 

 

 

 

 

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