学資保険の本当のメリット・デメリット【2012年 第10回】

【2012年 第10回】 学資保険の本当のメリット・デメリット
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門

平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール

 

 

子育て世代で多いご相談の1つが、子どもが生まれたので学資保険を検討したいという内容です。それでは、子どもが生まれたら学資保険に加入したほうがよいのでしょうか。今回は学資保険のメリット・デメリットを確認し、その必要性について考えてみます。

 

 

 

学資保険に加入する目的を明確に

学資保険がどのようなものか、まず整理してみましょう。
学資保険は通常、親が契約者、子どもが被保険者になって契約します。祖父母が契約者になれる商品もあります。子どもの年齢や入学時期に合わせて学資金を受け取ることができ、中学・高校・大学の入学時にそれぞれ受け取るタイプや大学入学時の一回のみのタイプなどがあります。

保険期間内に契約者が亡くなったときには、それ以降の保険料の払い込みは免除されます。つまり、学資金と同額の死亡保障がつくと考えることもできます。さらに、契約者が亡くなったときに、育英年金や一時金を受け取れる商品もあります。

被保険者である子どもが亡くなったときは、払い込み済みの保険料相当額が戻ってくるという商品が多く、不慮の事故など災害による場合はさらに災害死亡保険金を受け取れる商品もあります。子どもが入院したときなどの医療保障が付加された商品もあります。

つまり、学資保険の内容は主に1.学資の貯蓄、2.親の死亡保障、3.子の死亡・医療保障、の3つに整理できます。2や3の保障が充実している商品は貯蓄性が低くなり、支払った保険料に対して、受け取れる学資金のほうが少なくなってしまいます。

親の死亡保障であれば他の生命保険で充分に確保しているかもしれません。また、子どもの医療費は市区町村の助成制度が充実してきており、入院は中学校卒業まで、通院は小学校入学前まで保険診療の自己負担額を助成するところも多く、入院・通院とも中学校卒業まで助成するところもあります。つまり、2や3の保障は、他の保険と併せ、よく必要性を考えることをお勧めします。
1の学資の貯蓄が加入の主な目的であれば、保障が充実したパッケージ商品は避けて、学資金の受け取りと契約者死亡時の保険料払い込み免除だけのシンプルな商品を選ぶべきでしょう。

学資保険の貯蓄性はメリット

それでは、学資保険の貯蓄性を考えてみましょう。商品によってかなり差があるのは事実ですが、貯蓄性が高いと評判の学資保険を例にとって考えてみます。35歳の父親が契約者となり、0歳の娘を被保険者として、娘が18歳時に200万円を学資金として受け取れるという内容で加入します。月の保険料は8,320円で、18年間で支払う保険料の総額は1,797,120円です。受け取れる学資金は200万円なので、払い込んだ保険料に対し111.2%に増えたことになり、これは年間で約1.2%の運用利回りに相当します。

現在、元本確保型(一定期間を超えれば元本が確保されるもの)、または元本保証型(いつ解約しても元本割れしないもの)で積立タイプの金融商品を考えると、比較的金利が高いネット銀行の積立定期預金でも0.1%を超えるのがやっと、都市銀行の積立定期預金では0.1%を大きく下回ります。積み立てたお金で個人向け国債を購入するのも選択肢となりますが、平成24年10月に発行された個人向け国債(変動10年)の1回目利子における適用利率は0.53%と、1%を大きく下回り続けています。有利な商品を選ぶことが前提になりますが、現在の低金利の状況下では学資保険の貯蓄性は比較的高いと言えそうです。

学資保険の2つのデメリット

それではデメリットはないのでしょうか。私は大きく2つあると考えています。まず、一番大きなデメリットは、利回りが長期間固定されてしまうことです。低金利の今であれば貯蓄性は比較的高く思えますが、10数年間、運用利回りが固定されるのですから、途中で市場の金利が上昇してくればたちまち不利になる可能性もあります。低金利のタイミングでは、運用商品は短期の固定金利か変動金利のタイプを選ぶのが原則とされています。

もう一つは、解約時の問題です。学資保険の場合、貯蓄性の高い商品でも保険料の払込期間が6~8年程度を超えないと、解約した場合に受け取れる解約返戻金が払い込んだ保険料を上回ることはありません。何かあって急にお金が必要になり、早く解約すると損をするという訳です。

学資保険の加入は金額を抑えて

これらのデメリットを考えると、最善な加入方法は金額を抑えて加入することといえそうです。
想定した教育資金を全て学資保険で貯めようとせず、将来金利が上昇する時があれば他の商品に乗り換えることができる定期預金などの短期の元本保証型商品、あるいは金利上昇に対応できる変動金利型の商品と組合せること、そして予想外の出費があっても解約しないで済む程度の額に抑え加入することが大切です。

金額を抑えて加入するのであれば、まだ金利の上昇が見えない現時点では消極的な選択として、学資保険で教育資金の一部を貯めるのは選択肢だと思います。そこで、どのように商品を選んだら良いのかを次回の記事で解説します。

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