マイアドバイザー® 池田龍也 (イケダ タツヤ)さん による月1回の連載コラムです。
【第28回】 池田龍也 の ちょっと気になるニュースから はやりのシニア本を読んでみた
池田龍也⇒プロフィール

▼ 2025年問題
2025年問題といわれた2025年も過ぎてしまいました。いわゆる団塊の世代が後期高齢者、75歳を越えるのが2025年ということで、労働人口の減少、医療・介護など社会保障の費用増大といった課題が指摘されていました。ただ、そういった課題は、2025年という特定の年に突然噴出するわけではなく、じわじわと社会を根底から動かしていくような、大きなうねり、時代の流れの変化というようなもので一過性のものではありません。
▼ シニア本は絶好調
団塊の世代が買っているからという訳ではないのでしょうが、いまシニアライフをテーマにした本が売れているようです。中でも、いま旬の2冊を読んでみました。
林真理子氏「80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間」
佐藤優氏「定年後の日本人は世界一の楽園を生きる」
2人の著者は、ご存じのとおり、どちらも当代随一の書き手、論客です。筆達者な方が書いているシニア本はとても面白く、参考にもなりました。
人口のおよそ3割が高齢者となった日本、団塊の世代は、いまや後期高齢者という時代の中で、何が道標になるのか。教科書も、羅針盤もないこれからの長い航海を、シニアのみなさんがどう過ごせばいいのか。不安を抱えながらも何に頼ればいいのかわからない、そうした声に、この二人の著者は、自らの体験を語りながら答えようとしています。
▼ “70代は特別な時間”
まずは、
林真理子氏「80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間」
著者は、現在72歳。シニアになって気がついたこと、気づかされたことを、これでもか、これでもか、と実例を示しながらたたみかけくる。エッセー風の達者な文章で、シニアの自分を自戒しながら、「みなさまもそうでございましょ」と問いかけてくる。

・ペットボトルのキャップが急にきつくなった。と思ったら、自分の握力が弱ったことに気づく。
・寝る前に読むのはスマホか本か?活字は発光体の文字よりはるかに優しくすぐ眠りにつく。
(池田註:発光体の文字というところが昭和世代の共感を呼ぶ)
・ノリが悪いといわれても、はっきりこう言う。「年とったから、油っこいものはもう遠慮します」それで疎遠になるのはそれだけの仲。
(池田註:ハラをくくることも大事、と教えてくれる)
・Tシャツを着てはいけない
Tシャツを着た写真を見てがっかりした。ハイブランドのTシャツで、自分ではイケてるつもりであった
が、首の縦ジワがはっきり見え、何よりも体全体が丸っこくぶよぶよしている。老いの現実をありありと見せてくれるのがTシャツなのだ。
・アリとキリギリスではないが、七十になると今まで自分が生きてきたことの成績表がそろそろ出てくる。
未来を見据えて頑張ってきた人にはそれなりの成績が、何も考えてこなかった人にも同じように成績表が渡される。あんまりよくない点数がついてくる。(池田註:身につまされます)
・新幹線の中でまず文庫本を広げる。いつもの至福の時。ところがどうだろう。文字がまるっきり読めなくなってしまったのだ。いくら目を凝らしてもダメだ。愕然とした。老化はゆるやかな曲線ではなく、階段状でやってくる。
・酔って高速に乗ってはいけない
年をとるとトイレが近くなるのはご承知のとおり。特にお酒を飲んだ場合、一回行くと、フタがはずれてしまう。何度も何度も行きたくなる。(池田註:もちろんタクシーに乗った時の話。高速に乗るとトイレに行けなくなるから悲劇)
先日、著者がテレビのワイドショーに出演しているのを見ました。このタイトルについて聞かれ、このジョーク、ユーモアを分かってほしい、というようなことを言っていました。そして、自分が80代になったら、またその年齢で感じた事を同じようなタイトルの本にすると思います、と堂々と言っていたのが潔く、さわやかでした。
▼ “世界一の楽園”
続いて、
佐藤 優氏
「定年後の日本人は世界一の楽園を生きる」
著者の佐藤氏は現在66歳。林真理子氏より少し若い。一般的には、ソ連、ロシアの専門家、国際情勢について書いたり語ったりすることが多い方という印象だと思います。
冒頭、自らの経験として、腎臓移植を受けたことに触れ、手術後、体調は「絶好調」。日本の医療のレベルの高さと、医療制度の優れた点を指摘している。
(具体的には自己負担を低く抑えることができる高額療養費制度)
ソ連時代、モスクワでは物資が不足、トイレットペーパーを手に入れるだけでも大変だったことを例に挙げ、「生活必需品の入手についてまったく悩まなくていい日本での暮らしを、心の底から幸せだと感じている」という。そして結論「定年後の日本人は世界一の楽園」に住んでいる。
「人生を航海にたとえるならば、還暦とは、既に遠洋航海を終えて港に戻ってくるころ。嵐や荒波を乗り越えて母港に戻り、錨を下ろす。そして、その錨の遊びの範囲のなかで充実した人生を送ることを目指すのだ。」
そして、定年後の・・・主なテーマについて「マインド『リセット』」、「おカネ」、「勉強」、「仕事」、「交友関係」、「隠れ家」、「家族関係」、「恋愛・趣味・健康」と8章に分けて解説している。
ちなみに、佐藤氏は、「実践するための具体的な方法を知りたい」との反響にこたえて<実践・成功編>として続編を出しています。章立ては同じで、それぞれ具体的なサービスや参考にすべき情報、書籍などを詳しく紹介しています。

▼ モデルがない
シニアライフ、これだけの人がこれだけ関心を持っているのに、実は、日本には、ああなりたい、あのようなシニアが理想だ、というようなモデルがないような気がします。会社人間が燃え尽きた後、定年後のあるいは引退後のイメージ、実像がほとんどなく、それぞれ自己責任といわんばかりに、ほったらかしになってしまいます。そういう不安に寄り添う、この2人の本が評判をよんでいるのも頷けます。
▼ 2人には共通点がある
2人のベストセラー、林氏は日々の生活から発想する、佐藤氏はかなり学術的というか社会の仕組みから攻めていく感じで好対照です。どちらが演繹法的で、どちらが帰納法的かは忘れましたが、実はお二人が指摘していることには共通点がありました。
なんといっても、2人とも、まずは自分が置かれている状況を把握しましょう、といっているように思います。みずからの体や心の状態、社会の中での自分の立ち位置、できることややりたいこと、できないことややりたくないこと、家族関係や資産関係も、まずは等身大の自分をみつめ、把握する、その大切さを訴えているように感じました。そのうえで、高齢化で長くなったこの先の自らの航海を、自分はどう過ごしていくのか、2人とも、それを考えるためのモノサシを提示しようとしているように思いました。

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