アメリカ農務省の需給報告【2013年 第6回】

【2013年 第6回 アメリカ農務省の需給報告】
リカが教える♪金融商品としての「穀物」

三次 理加 ⇒プロフィール

 

米国農務省(USDA)が毎月10日に発表する「需給予測(世界農作物需給予測:World Agricultural Supply and Demand Estimates)」は、その信頼性の高さから世界中の業界関係者が注目しており、大変重要です。今回は、穀物相場を占ううえでは欠かせない、米国農務省が発表する主要統計を紹介します。

 

 

生産高

穀物は、需要はある程度安定しているのに対し、生産量は豊作や凶作により増減するため、原則として、需要よりも供給がより重視される傾向があります。穀物の供給を決定する要素は、「在庫」と「生産高」です。この「生産高」を予想する材料となるのが「作付面積」と「単収」です。USDAの「需給予測」では、作付面積と単収予想に基づく生産高見通しが発表されます。(図表1参照)

USDAは、3月31日と6月30日に、その年の作付面積を発表します。

3月に発表されるのは、「作付意向面積」の調査結果です。これは、3月初旬に全米各地の農家に送付したアンケート結果を集計したものです。ただし、第2回~5回までに説明したように、実際の作付面積は、作付時期の天候や価格帯により変化します。この作付面積意向調査結果発表後、穀物相場は「天候相場」へと移行していきます。

 

6月に発表されるのは、「確定作付面積」です。これは作付意向面積同様、全米各地の農家に送付したアンケート結果を集計したものです。需給予測は、6月までは作付意向面積に基づいて計算されますが、7月10日以降は、確定作付面積に基づいて計算されます。

 

なお、USDAが毎週月曜日に発表する日曜時点での「作付進捗率」は、確定作付面積の予想になるため相場を動かす材料となります。(図表2参照)作付進捗率は、とうもろこしは5月10日までに75%以上作付けされることが良いとされます。11日以降の作付けは、一日遅れるごとに単収が減少していきます。大豆は5月25日までに85%以上が作付けされることが良いとされます。

 

作付け完了後は、単収(1エーカーあたりの収穫量)に注目が集まります。単収は、天候次第で変化します。単収予想には、USDAが作付終了後の5月下旬から10月中旬にかけて発表する「作況指数」が参考になります。

「作況指数」は、穀物の作柄を5段階に分けて評価したもので、上位2段階の合計が70%を上回れば豊作、下位2段階を合計して35%を超えると不作の目安になるといわれます。毎週月曜日に、前日時点における数値が発表されます。(図表2参照)

また、8月の需給予測は、産地の実地調査に基づく単収予測と、それに基づくその年最初の生産高見通し、穀物の生育終盤となる9月は実際の単収に近い生産高見通し、収穫が開始されている10月は、実際の単収に基づく生産高見通し、11月は収穫がほとんど終了しているためかなり正確な単収に基づく生産高見通しが発表されます。穀物の収穫が始まって市場に出回る時期になると「需給相場」がスタートします。

 

なお、最終確定生産高の発表は翌年1月13日頃です。この発表以降、相場は3月末の作付け面積意向調査を意識した値動きとなっていきます。

 

ちなみに、生産高は、単収×収穫面積で計算します。作付面積=収穫面積ではない点に注意が必要です。収穫面積は、作付面積から農家の自家・飼料用使用分、収穫放棄分を差し引いたものになります。収穫面積の目安は、大豆が作付面積の98%程度、とうもろこしが90%程度です。

 

在庫

USDAにおける穀物年度は、前年9月~翌年8月末です。年度末(=8月末)時点において消費されずに残った在庫を「期末在庫」といいます。言い換えれば、総供給から総需要を差し引いたものが期末在庫です。また、期末在庫は、翌年度への繰越在庫となります。

期末在庫を総需要で割った比率を「在庫率(=期末在庫率)」といいます。在庫率は、需給ひっ迫の判断指標となります。とうもろこしの適正在庫は15~20%、10%割れはひっ迫、20%以上は過剰在庫、大豆の適正在庫は10~15%、10%割れはひっ迫、15%以上は過剰在庫とされます。

 

その他の主要統計

 

需給予測以外の主要統計としては、毎週月曜日に発表される「輸出検証高」、毎週木曜日に発表される「輸出成約高」があります。「輸出検証高」は、輸出検査されて船積みされた数量、「輸出成約高」は、買い付け契約量を意味します。ともに、毎週木曜日までの1週間分の数値です。

また、四半期毎(ただし、12月は1月の最終生産高報告に併せて発表される)に発表される全米穀物在庫が挙げられます。

 

次回からは、新シリーズ「成年後見人への道」です♪お楽しみに。

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