人口推計で長期的な見通しを立てる【2014年 第1回】

【2014年 第1回】人口推計で長期的な見通しを立てる- 統計資料と景気指標を活用した資産運用

恩田 雅之(オンダ マサユキ)プロフィール

 

 

これから6回にわたって、「統計資料と景気指標を活用した資産運用」というテーマでコラムを書いていきます。第1回目は、日本と世界各国の人口推計についてみていきます。

 

 

 

はじめに

人口推計は、将来をみる指標の中で最もブレの少ないものになります。また、人口が将来的に増えていく地域は、それに応じて購買力も増えていくことが期待できる地域と言えます。
長期に資産運用を考える上では、意識しておきたい指標となります。

1.2050年は、遠い将来?

総務省統計局のHP上に「世界の統計2013」という項目があります。その中の第2章「人口」、「世界の地域の人口の推移」では、2012年~2050年まで人口推計を掲載しています。
2050年は遠い将来に思えますが、現在40歳の方は2050年で77歳です。40歳時の平均余命は、男性41.5年(81.5歳)女性47.17年(87.17歳)と考えますと、2050年は、資産運用の最終コーナーを回った時期にあたるかと思います。

2.地域ごとの人口推計を見てみる

上記の総務省統計局のHPによりますと、世界の人口は、2012年が約70億人、2025年が約80億人、2050年が93億人になります。その間の「先進国とそれ以外(新興国など)の比率(先進国:それ以外)」は、2012年(17.6:82.4)、2025年(16.1:83.9)、2050年(14.1:85.9)となり、徐々に先進国の比率が下がっていきます。
また、日本の人口は、2012年約1.27億人、2025年約1.2億人、2050年約9,700万人になると推計されています。
地域別にみると、下記の【図表1】のようになります。

 

多くの地域では、人口が増え続けますが、ヨーロッパの人口が2025年以降、減少していきます。
また、2011年~2050年までの人口の伸び率では、アフリカが約2倍、オセアニアが約1.5倍、北アメリカが、約1.3倍、アジア、南アメリカが約1.2倍、ヨーロッパが0.97倍となります。

 

 

3.人口上位20か国の推移

次に、人口上位ベスト20か国の変遷をみていきます。
【図表2】は、1950年、2012年、2030年、2050年のベスト20になります。

 

赤字が先進国、青字がBRICS、黒字がそれ以外の国になります。
1950年~2050年の100年間、ベスト3は中国、インド、米国になります。中国、インドの1位、2位の変動はありますが、米国は3位で変わりません。
2050年にベスト20に残っている先進国は、米国(100年間3位をキープ)、日本(5位から17位)となります。

 

 

 

 

また、国別ベスト20を地域別でみたのが【図表3】です。

他の地域に比べて、アフリカ諸国が7か国(ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプト、ケニア、ウガンダ)と大幅に増えます。逆にヨーロッパは、2050年の推計ではドイツがベスト20から外れて、ロシア1国になってしまいます。

まとめ

以上、「はじめに」のところでも触れましたが、人口が将来的に増えていく地域は、それに応じて購買力も増えていくことが期待できる地域と言えます。長期の資産運用で地域分散や国別分散の比率を検討する時や、リバランス(比率の見直し)を検討する時には、長期の人口推計を参考に考えてみては、いかがでしょうか。
但し、経済が順調に伸びていくためには、多くの良質な労働力が必要になります。各地域や国別の教育水準の状況や労働生産年齢人口(15歳~64歳)の動向なども合わせて、注視しておく必要があります。
また、新しい製品が発売される時期は、経済のグローバル化により、先進国・新興国間でのタイムラグがほとんど無い状況が続くと考えられます。
しかし、高齢化のスピードは、各地域、各国まちまちです。高齢化に伴う介護用品などでは、タイムラグが発生する可能性があります。この点に注目すると、介護事業における日本の行政や企業の動きをみておく必要もあるかと考えます。

 

 

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