日経新聞の景気指標を活用する 日本編【2014年 第2回】

【2014年 第2回】日経新聞の景気指標を活用する、日本編 – 統計資料と景気指標を活用した資産運用

恩田 雅之(オンダ マサユキ)プロフィール

 

このコラムは、6回にシリーズで「統計資料と景気指標を活用した資産運用」というテーマに沿って書いていきます。第2回目は、「日経新聞の日本に関する景気指標の活用法」になります。

 

 

 

はじめに

月曜日の日経新聞には、景気指標をコンパクトに紹介した表が掲載されます。(新聞休刊日の場合は火曜日)景気指標のページの中央に今週注目すべき景気指標の記事があり、左側に国内の主要な景気指標、右側に海外の景気指標及び内外商品相場が載ります。
海外の景気指標については、米国のみ、米国と欧州、米国とアジアと週ごとに内容が異なります。以下、資産運用を行うにあたって、注目しておきたい指標を紹介いたします。

1.企業が考えている景気見通しを知る

日銀が年4回(3月、6月、9月、12月)実施している「全国企業短期経済観測調査」の中に企業が今後の3か月の景気をどうのように見ているかを表す指数があります。
「業況判断DIの先行き」がその指数になります。指数の算出方法は、対象企業の業況を「良い」、「さほど良くない」、「悪い」の3つから選んでもらいます。
その中で、「良い」と回答した企業の割合-「悪い」と回答した企業の割合が業況判断DIになります。
先行きを楽観している企業が多ければ、業況判断DIはプラスになります。悲観している企業が多ければ業況判断DIマイナスになることもあります。
日経新聞では、大企業製造業と大企業非製造業の業況判断DI先行きの数字を6回分掲載していますので、企業がどのように景気について考えているか、時系列的にみることができます。
今後の企業が設備投資に前向きなのか慎重になっているのかといったことを知ることで、前向きな場合は株等のリスク資産で運用し、慎重な場合は債券等の安全資産で運用するといった対応を取ることができるようになります。

2.デフレからのインフレに変化しているか

2013年4月に日銀が2年間で消費者物価指数を前年比で2%上昇させる金融政策を行っています。
これは、前年比2%のインフレにすることで、消費者がお金を使うことを促し、景気を刺激することを目的とした政策になります。
その政策の進捗状況を知る指標として総務省は毎月発表している「消費者物価指数」があります。日経新聞では、価額の変動が大きい生鮮食料品を除いた指数を全国、前月比、前年比、東京都前月比の並びで掲載しています。
最近の状況は、下記の表のように前年比はプラスの状態が続いていますが、前月比では、足元マイナスになり、日銀の金融政策として更なる金融緩和が必要な状況かどうかの判断をする材料になります。

また、経済産業省が毎月発表しています「小売業販売額(前年比)」によって、消費者の財布の紐が緩んでいるか、締められているかを知ることができます。
日本のGDPの60%前後を個人消費で占められていますので、今後の景気動向を考える上で参考になる指標かと考えます。

3. 円安でも輸出が増えないのは

財務省が毎月発表します国際収支の指標として、経常収支、貿易・サービス収支、直接投資があります。貿易収支は、円安にも関わらず輸出が予想外に伸びず、石油やガスなどのエネルギー価格の上昇もあり、2014年2月まで20か月連続赤字になっています。
輸出が予想外に伸びなかった理由としては、日本企業が海外への直接投資を通して生産現場の海外に移転した影響もあります。対外直接投資、日本企業が投資先の国に新たに法人を設立や投資先の国の企業をM&A(合併・買収)することによって行われ、長期の投資になります。
この指標を見ると、2011年度以降の円高により、対外直接投資が急増したことがわかります。
(2010年度:65,283億円、2011年度:97,889億円、2012年度:97,887億円)
また、日経新聞の景気指標のページでは、直接投資の右側に円相場(対ドル、対ユーロ)の動きを時系列にみることができます。
アベノミクス以降、円安になりましたが、2013年度以降も企業の海外投資の勢いが変わらずに推移しているのが、この景気指標からわかります。(2013年4月~2014年1月まで:120,764億円)。併せて、日本の産業構造の変化を見ることもできるかと思います。

まとめ

資産運用をするにあたっては、景気や物価などの現在の状況や、企業が考えている将来見通しや投資行動による、今後の景気や物価動向を予測することが必要になります。
「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)、「消費者物価指数」、国際収支に関連した「直接投資」と為替の動きなど定期的に追うことで、予測精度の向上が期待できるかと思い、上記の景気指標を紹介させていただきました。
(このコラムは、2014年3月24日の日経新聞(朝刊)の景気指標を参考にしています。)

 

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