ポータビリティ 【2016年 第1回】

【2016年 第1回 ポータビリティ】確定拠出年金 きほんのき

宮一 幸子(ミヤイチ サチコ)⇒ プロフィール

 

確定拠出年金には、「ポータビリティ」という特徴があります。
「ポータビリティ」とは「持ち運べること」。
離職や転職をしてそれまでの確定拠出年金プランに加入できなくなっても、積立分を次の確定拠出年金プランに移し換えて継続できるのです。

 

 

 

確定拠出年金は原則60歳より前に中途引き出しができないため、よく「会社を中途退職しても退職時に受け取れないなんて・・・」といわれます。
でも逆に考えるとこの「ポータビリティ」があることで、老後資金を先に使ってしまったり、積み立てを中断したりすることなく確実に準備できるのです。

 

企業型に加入していた人が中途退職した場合

会社で企業型確定拠出年金に加入していた人が会社を辞めると、その会社の企業型プランの加入資格を失ってしまいます。
これまでの積立分はその企業型プランから次のプランに移し換えることになります。
次のプランへの移し換えは、次にどんな立場になったかによって3つのパターンがあります。

①企業型から企業型に移し換えて加入者として継続する

②企業型から個人型に移し換えて加入者として継続する

③企業型から個人型に移し換えて運用指図者として継続する

 

①企業型から企業型に移し換えて加入者として継続する

「転職したら、転職先にも企業型確定拠出年金が導入されていた」という場合には、転職先の企業型プランに積立分を移し換えることになります。
今後は毎月転職先の会社が掛金をかけてくれます。移換金(積立分)と掛金の運用は転職先の企業型プランの金融商品ラインアップから選んでいきます。
掛金をかけて運用する人を「加入者」といいます。

②企業型から個人型に移し換えて加入者として継続する

「退職して自営業者になった」「企業型のない会社に転職した」などの場合は6ヶ月以内にどこの金融機関で個人型をやるか決めて積立分を移し換えます。
掛金の金額も法律の範囲内で決められます。
移換金と掛金の運用も自分で選んだ金融機関の商品ラインアップから選択していきます。
6ヶ月過ぎてしまうと、積立分は国民年金基金連合会に自動移換されてしまうので注意が必要です。

③企業型から個人型に移し換えて運用指図者として継続する

②の人は自分で掛金を決めて毎月積み立てしていきますが、「掛金の負担が嫌だ」という人は掛金をかけずに移換金だけ運用することもできます。
掛金をかけずに運用だけする人を「運用指図者」といいます。

ポータビリティがあるとはいえ、法律で個人型の「運用指図者」にしかなれない立場の人もいます。
専業主婦(夫)(国民年金の第3号被保険者)、公務員になった人、国民年金保険料が免除になった人などです。
また「転職先に企業型はないけれども企業年金がある」という場合も「運用指図者」にしかなれません。
運用指図者になると新たな掛金の積み立てができないので、一定条件を満たせば例外的に脱退一時金を受け取って脱退できる場合があります。

個人型から企業型へ移し換える場合

個人型に入っていた人が企業型のある会社に転職した場合、あるいは会社に確定拠出年金がないので個人型に入っていたけれども会社が企業型を導入した場合などは、個人型で積み立てた金額を会社の企業型プランに移し換えることになります。
会社の担当者に「個人型に加入していました」と連絡して手続きすることになります。
今までは個人型だったので自分で決めた掛金を自分でかけていましたが、今度は会社が掛金額を決め、会社がかけていきます。
運用商品も会社の企業型プランの商品ラインアップから選択します。

 

このように「ポータビリティ」により、立場が変わっても確定拠出年金制度の中で積立分を移し換えできるのです。
さらに企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金のこと)からも確定拠出年金制度へ資産を移し換えてくることができます。

 

中途退職して企業年金から脱退一時金がもらえる権利がある人

「前の会社に企業年金があり、中途退職したから脱退一時金が受取れる」という人で、このお金を「今は現金として受取らない」ことを選択した人は、確定拠出年金に移し換えることができます。

また、「以前、企業年金がある会社を中途退職して、脱退一時金を企業年金連合会に移換している」という人も確定拠出年金に移し換えできます。

これには手続き期間などの条件あります。

 

「ポータビリティ」で積立分を移し換えるときはいったん運用をやめて、次のプランの商品を購入しなおすことになります。
運用の損益に影響がでてくる可能性があることを理解しておきましょう。

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