どうなる?日本の景気と金利【2012年 第3回】

【2012年 第3回】 どうなる?日本の景気と金利
– ケース別コラム – 住宅ローン

奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール

 

住宅ローンの金利、上がる、上がると言われ続けてはや数年。あいかわらず過去最低水準の住宅ローン金利ですが、今後はいったいどのように推移するのでしょう。今回は、住宅ローン金利の今後について、考えてみたいと思います。

今年は少し春が来るのが遅かったようですが、ようやく全国的に春らしくなりました。
日本経済においても、ここ最近は円高、株安が落ち着きを見せています。ようやく、最悪な状態を脱したのでは?と感じる人も多いのではないでしょうか。

住宅ローン金利についても、上がる、上がるといわれてはや数年。結局のところはむしろより低い金利水準で、各銀行が住宅ローン販売競争を展開しています。果たして今後、日本の景気と住宅ローン金利はどのように推移していくのでしょう。

■加熱する住宅ローン競争に終止符!?

こちらのローンコラムでも何度か取り上げているのですが、実は我々が日頃見聞きする住宅ローン金利は、『基準金利(店頭表示金利)-優遇金利』という数式で算出された、実行金利です。
例えば住信SBI銀行の場合、3月の変動金利住宅ローンの実行金利は年0.865%となっていますが、その内訳は『基準金利:年2.775%-優遇金利:年1.91%』となっています。殆どの住宅ローン商品は、この『基準金利(店頭表示金利)-優遇金利』という数式をもとに、少しでも金利メリットを見込み客に伝えようとしているのです。

しかし、この住宅ローン競争の流れを大きく変える出来事がさる2月にありました。銀行業務を監督管理する金融庁より、加熱する住宅ローン競争を抑制するため、全国の銀行に対し検査をすることが発表されたのです。

実は貸倒率といって、住宅ローンが返せなくなる案件の割合を示す指標があるのですが、2007年度の0.03%に対し、2009年度は0.3%と急上昇しており、今後も悪化が懸念されています。加えて銀行間での住宅ローン競争が激しくなり、銀行自身の体力も悪化。そこで金融庁がその是正に乗り出すという訳です。

■基準金利が変わらなくても金利が上がる?

では住宅ローン金利に一体何がおこるのか?

実は既にメガバンクのHPでは、これまでの『優遇金利一律○○%』という表現から『お借入内容や審査結果により○○%~○○%の間で優遇金利が決定します』という表現に変わっています。そして、相対的に実行金利は2月までに比べて上昇しています。

つまり、基準金利が変わらなくても、優遇金利が圧縮されたため、実行金利が上がっているのです!お気づきだったでしょうか…。

今のところメガバンク以外の銀行は、従来とさほど金利水準を変えていませんが、おそらく今後追随し、優遇金利の幅を圧縮していくものと思われます。

■基準金利も今後じわりと上昇?

では基準金利自体は今後どのように推移していくのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。

実は住宅ローンの金利は、日本全体の金利動向に連動しています。金利には短期金利と長期金利という2通りの考え方があり、短期金利は銀行間でのお金の貸し借りの金利を基準に、そして長期金利は日本国債(10年物)の新規発行レートを基準に決められます。住宅ローンでいうと、変動金利ローン、10年以下の○年固定金利ローンは短期金利を基準に、10年超のローンや全期間固定のフラット35は、長期金利を基準に決められています。基準である短期金利、長期金利が上昇すれば、当然住宅ローン金利も上昇します。

では国債の金利はどのように決まるのか。簡単にいうと、国債を売りたい人(国)と、買いたい人(諸外国や金融機関)とのバランスで決まります。今はまだ、日本国債を買う人の95%は日本人であるので、超低金利でも安全安心ということで日本国債を買いますが、もし日本人だけで国債が買い切れなくなったら、当然諸外国の人に買ってもらうため、営業しますよね。そうなると日本国債の金利を上げざるを得ない。となると住宅ローン金利にも影響が出ます。既に新聞等で報道のとおり、日本国債の残高は年々増えており、いずれは日本人だけで引受するのが困難になるといわれており、その意味でも住宅ローンの金利上昇圧力は、今後増していくものと思われます。

■世界情勢も影響する?

つい先日まで騒がれていた、ギリシャ問題に端を発するユーロ圏財政危機問題。ひとまず小康状態になりましたが、まだ予断を許しません。

仮にギリシャが破たんすると、ギリシャ国債を大量に保有するヨーロッパの銀行に損失が発生。それらの銀行は中国、ブラジル、インド等新興国に積極的に融資しているため、影響は少なくないでしょう。結果日本の景気も悪くなり、銀行も体力が低下。日本国債を、従来のような低金利では引受しなくなり、結果金利が上昇。あるいは日本国債自体への信用も、影響を受け下がる可能性が高く、いずれにしても金利上昇の圧力が強くなると予想されます。

このように、世界で起こっていることも、決して対岸の火事ではありません。めぐりめぐって、住宅ローン金利に影響が出ることだってあるのです。

■では、どう考え、どう対処すべき?

ここまで見てきたとおり、住宅ローン金利は今後、そのペースは別として、確実に上昇に向かうものと予想されます。したがって、これから住宅ローン借入を検討される方は、このような状況も加味したうえで、住宅ローン選びをすることが大切になります。

大切なのは仮に金利が上がっても、慌てないよう備えること。誰にも出来ない金利予測をするよりも、今できることを確実に取り組むことが大切です。ライフプランを基にしっかりとした住宅ローン返済プランを組み、確実に実行することが求められます。身近な住宅に強いFPにぜひ相談いただき、安心安全の住宅ローンプランを実行いただきたいと思います。

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