投資信託の基礎1 ~株価から基準価額算出までの流れ【2015年 第3回】

【2015年 第3回 投資信託の基礎1 ~株価から基準価額算出までの流れ】インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託

恩田 雅之(オンダ マサユキ)

2015年は、「投資を身近の感じてもらう」をテーマに主に投資信託の仕組みや用語の解説を中心に書き進めていきます。
今回は、「基準価額」が算出される流れについて、株式で運用する投資信託を例にとりみていきます。

 

 

はじめに

投資信託は、多くの投資家から集めたお金を1つにまとめて、資産運用の専門家(ファンドマネジャー)が株や債券、リートなどで投資・運用し、その成果(利益)を投資家に還元する仕組みの金融商品になります。

それでは、株価から基準価額までの流れについて、株式で運用する投資信託を例にとりみていきます。

株価について

株価は、株式を発行している会社の業績や景気の動向などを参考に投資家同士が株式市場で売買します。売り買いの値段の均衡したところが、その時点の株価となります。

その会社の株式を買いたい人が売りたい人より多ければ株価は上がります。

逆に売りたい人が買いたい人より多ければ株価は下がります。

 

投資信託の基準価額算出に使われる株価は、市場取引が終わった時に価額「終値」になります。

基準価額の計算方法

以下、A投資信託(以下:A投信)という架空の投資信託を例に取り説明を進めていきます。

A投信は、以下の説明をシンプルにするために「国内株式に投資する」投資信託とします。

 

終値が確定した段階で、A投信が保有している個々の銘柄(株式)、それぞれの保有額を計算します。

「個々の銘柄の保有額=終値×保有株式数」となります。

 

上の計算をA投信が保有している全銘柄に対して行い、その合計とA投信が個々の銘柄から受け取った配当や保有している現金等を合算します。

その合計金額がA投信の「資産総額」になります。

 

A投信の「資産総額」から信託報酬など必要な経費を引き「純資産総額」を計算します。

(資産総額が同じでも、信託報酬など経費の差により「純資産総額」が変わる点に注目)

 

A投信の「純資産総額」「総口数」で割ることにより1口あたりの「基準価額」が算出されます。新聞等には「1万口あたりの基準価額」が掲載されています。

 

「個々会社の株式の保有額=終値×保有株式数」

「資産総額」

「純資産総額=資産総額-信託報酬など必要な経費

「基準価額=純資産総額÷総口数」

新聞等で掲載される基準価額=基準価額×1万口」

 

以上が、株価から基準価額が計算されるまでの流れをまとめたものになります。

個別株式と投資信託の違い

以下、個別株式投資と投資信託に違いについて「投資資金が流入した時の値動き」と「個別株と投資信託の売買方法」の2点からみていきます。

最初に「投資資金が流入した時の個別株の株価と投資信託の値動きの違い」についてみていきます。個別株の株価は「時価総額÷発行済み株式数」で計算することができます。

発行済み株式数は、増資や株式分割、自社株買などにより増減しますが株主総会等で決議が必要になります。そのため、株数が日々変化することはありません。ですから、個別株に資金が流入した場合は、流入分だけ時価総額が増えることにより株価が上昇します。

投資信託の基準価額は「純資産総額÷総口数」で計算します。

投資信託に資金が流入しますと、その分だけ確実に総口数が増えます。また、資金流入は純資産総額を増やす要因にもなりますが、純資産総額は投資している複数の株価の影響によっても増減しますので、確実に純資産総額が増える訳ではありません。

投資信託の場合、資金流入=基準価額の上昇にはならないこともあります。

次に「個別株と投資信託の売買方法の違い」についてみていきます。

個別株を購入や売却する場合は、株価を指定して売り買いの注文を出すことができます。

投資信託の場合は、購入する口数(口数は、投資信託の取引単位)又は、購入金額を指定して注文します。株式市場が終了する午後3時まで受付分が当日の買付分となります。

当日の買付は、翌営業日の基準価額による購入になります。ですから、受付の時点では自分が買付ける投資信託の「基準価額」がわからないことになります。この点が、個別の株式取引と異なる点になります。

(海外株式等で運用する投資信託では、株式市場が終了するタイミングが異なるため、翌営業日の基準価額でない場合もあります)

以上、「基準価額の計算方法」「株価と基準価額の違い」及び「個別株と投資信託の売買方法の違い」についてみてきました。

 

次回は、「投資信託の分配金」についてみていきます。

 

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