傷害保険 ~固定具使用による非通院期間の認定~【2012年 第6回】

【2012年 第6回】 傷害保険 ~固定具使用による非通院期間の認定~
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久保 逸郎 (クボ イツロウ)⇒ プロフィール

 

 

最新の商品情報とは異なるかもしれませんが、今回はあえてこのテーマを選ばせていただきました。というのも、私は今年でファイナンシャルプランナーとして独立して10年目を迎えていますが、独立するキッカケとなった出来事として、私自身が保険金不払いに遭遇したことがあります。その時にトラブルになった内容が、今回取り上げさせていただく「傷害保険の固定具使用による非通院期間の認定」に関するものでした。

 

 

■傷害保険の固定具使用による非通院期間の認定とは?

損害保険の傷害保険普通約款では下記のように記載されています。

 

 

 

私のケースでいえば、アメリカンフットボールの試合中に膝の靭帯を損傷して、3週間固定装具を付けた状態での松葉杖生活を余儀なくされました。その当時は金融機関の営業職にいましたので、業務に支障があったことはすぐに認められました。

しかし、その当時傷害保険契約をしていた3社うちの1社(以下A社)が「ギブス等」について、「約款上ではギブス等と記載されていますが、当社では社内規定によりギブスで固めた場合しか通院保険金は支払いません」という回答をして支払いを拒否してきました。

他保険会社と同じ約款の記載にも関わらず支払われないのはおかしいと電話で伝えても、女性担当者は「年度末で忙しいから4月に連絡にします」(案の定、連絡はありませんでした)、「石膏で固めない限り保険金は出ません」などと言われる始末。現在では考えられないような酷い対応でした。

■認定のポイント

それでは固定具使用による非通院期間の認定が受けられるのは、本来どのような状況でしょうか。主なポイントは次の3点になります。

① 傷害を被り固定をした部位
・手足(長管骨、三大関節を含めて固定した場合に限る)
・脊柱
・体幹骨

② 症状
・骨折
・脱臼
・腱(靭帯)損傷、断裂
※打撲・捻挫は原則として認定されません。

③ 固定具の種類
・ギプス(一般的に「石膏ギブス」と言われるもの)
・シーネ(副子と呼ばれる固定具をあて、包帯等で固定するもの)
・シャーレ(ギブス包帯を半分にカットし、包帯等で固定したもの)
・長下肢装具(大腿部から足底に及ぶ固定のこと)
・PTB装具(膝蓋靭帯で体重を支え、下腿や足部を免荷する装具)
・免荷用装具(下腿の骨折部を免荷する装具)

上記の状況に該当して、それが医師・柔道整復師の指示に基づいて常時固定したものであれば、固定具使用による非通院期間として認定されることになります。
(「入浴中のみ取り外す」「就寝時のみ取り外す」「入浴中および就寝時のみ取り外す」の状態については、常時装着に含みます)

■通院保険金

固定具使用による非通院期間の認定のポイントは上記の通りで、認定された場合には通院していない日に対しても通院保険金が支払われることになります。

不払いに遭遇してしまった私はその後、保険会社のあまりに酷い対応に怒りを感じたこともあって、また、金融機関での勤務経験で裁判所に行くことに抵抗感が少なかったことなどもあって、請求金額は少なかったのですが、保険会社を相手にした個人訴訟を行うことにしました。

少額訴訟でしたので1日だけの審理でしたが、同じ内容の保険約款を用いている他2社が私に対して保険金を支払った事実を知ったA社は、その審理の場で私に保険金を支払うことを提示してきました。個人で保険会社相手に裁判をして、こちらの主張が全面的に認められたわけです。

この経験をしたことがきっかけで私は保険に興味を持ち、そして全国では数多くの保険金不払い問題が起きていることを知りました。しかし、保険会社を相手に裁判を起こすというのは一般的にはハードルが高く、ほとんどの場合において消費者が泣き寝入りをしているという実態を知りました。問題の根底になっている保険会社と消費者の圧倒的な情報・知識の格差を埋めていくためにも、中立な立場のファイナンシャルプランナーが求められると考え出したのがこの当時でした。

その後保険会社の保険金不払いが一時社会問題化したため、最近はこのような不払い事例は聞かなくなりましたが、保険会社と消費者の圧倒的な情報・知識の格差は残ったままです。社会の中での必要な保険の仕組みが正しく運営されて、そして多くの人々の役に立っていくためにも、中立な立場のファイナンシャルプランナーが存在感を大きくしていく必要があるように感じています。

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