岡本英夫のFPウオッチャーだより 第26回 卒業したがん診療連携拠点病院での相談業務 ~忘れられない「がんサバイバーFP」諸氏①~

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第26回目です。

岡本英夫プロフィール

NPO法人がんと暮らしを考える会


「NPO法人がんと暮らしを考える会」の相談員として行っていたがん診療拠点病院での相談業務をこの3月で卒業した。
2013年10月の開始以来、社会保険労務士とともに月1回のペースでがん罹患者とその家族からの相談に応じてきたが、お役御免となった。
この機会に、がんと暮らしを考える会のFPとして歩んだ10年間を振り返ってみたい。

第1回目は、がんと暮らしを考える会に参加いただいたものの、こころざしなかばで故人となられたFP諸氏について触れてみたい。

相澤由佳さん


NPO法人がんと暮らしを考える会の前身は、2011年初から在宅ケア看護師の賢見卓也氏が、がん罹患者の経済的影響について行っていた勉強会である。

当初のメンバーは看護師、医師、メディカルソーシャルワーカー、MR(医療情弁護士)、医療・金融専門出版社の編集者であったが、参加者は固定されたものではなかった。
FPおよび社会保険労務士が加わるのは11年夏以降で、勉強会に参加した後輩編集者から、「がん罹患者の経済的悩みに答えられるのはFPではないか、一度勉強会に参加してみてくれないか」ということで筆者が参加したのがきっかけである。
同時期に就労支援相談を行っていた社会保険労務士が加わり、次第に体制が整っていった。

筆者は11年9月と12年2月の勉強会でFPの業務内容紹介と医療費控除についてお話ししたが、その時点で医療関係者以外ではがんサバイバーの参加が多いことに気づいた。
社会保険労務士や税理士もがんサバイバー関係者であり、自身の資格と知識をがん罹患者のために生かしたいと考えての参加で、発言の重みが違っていた。
そこで旧知のFPである相澤由佳さんに声をかけた。
相澤さんには通信講座テキストの執筆や添削指導でお世話になっていたが、がんに罹患し仕事をセーブしている時期であった。
がんと暮らしを考える会のことを伝えると「ぜひ仲間に入れてください」との返事、12年春から月1回の勉強会に参加されるようになった。

相澤さんは、勉強会でがん保険・医療保険、子どもの教育費、相続などについて意見を述べられるとともに、がんと暮らしを考える会作成のWEBソフト「がん制度ドック」にも関わられた。
その後、次第に体調が思わしくなくなり、勉強会も欠席されえることが多くなった。そして、2015年4月、相澤さんの訃報に接することになったのである。

元気であれば、がん診療拠点病院での相談業務にはうってつけのFPであった。
亡くなる年の初めには生命保険のリビングニーズ特約を利用しようと考えられたようだが、医師が「余命半年」の診断書を書くことをためらったため、困惑されていたとの話も聞いていた。
関連知識も豊富でがんサバイバーシップにも優れたFPであった。

<相澤由佳さんプロフィール>
株式会社TSプランニング 代表取締役 一般社団法人あゆみ理事 CFP®
1989年より首都圏にて建築会社と大手生命保険会社に勤務、一貫して資産活用と相続対策のコンサルティングを手掛ける。
2002年9月に独立系FPとして開業。個人向けの個別相談、セミナー講師、雑誌等への執筆、法人向けの社員研修や講演、社内用テキストの執筆等を行う。2児の母でもある。
執筆実績:小学館、辰巳出版(綜合図書)、游学社、日本金融通信社、近代セールス社、扶桑社、セールス手帖社保険FPS研究所、中国新聞社

灰谷健司さん


三菱UFJ信託銀行執行役員の灰谷健司さんは税理士、不動産鑑定士、1級ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、相続・遺言をはじめとする行内きってのFP相談の専門家であった。
筆者は月刊「ファイナンシャルアドバイザー」誌の連載執筆や巻頭インタビューでお世話になりつつ、親しくさせていただいていた。

灰谷さんは、47歳のとき大腸がんに罹患、がんサバイバーとして勤務されながら執行役員にまで昇進されたのだが、その経験と知識をがんと暮らしを考える会でお話ししてほしいと考え、2014年4月、メールで講演依頼を行った。
灰谷さんは快諾、後日、詳細を詰めるために賢見理事長と三菱UFJ託銀行本店を訪問することになった。
5月1日、銀行の応接室で打ち合わせを行い、7月18日に「がん患者を支えるための遺言と相続の実務」の演題でお話しいただけることになった。
灰谷さんは、体調が思わしくなければ当日キャンセルとなることもありうること、その場合は延期も考慮していただきたいとのことであったが、当方は、これまでにない話が聞けると期待した。

ところが、講演日時である7月18日の数日前、事務局に灰谷さんの著書数点が数冊ずつ届いた。
入院中で当日の講演は無理だとのことで、退院時期も不明なことから参加予定者に配布してくださいとの断り書きが添えられていた。
そして8月10日、永眠されたとの知らせが勤務先に届いた。5月1日の本店訪問での面談が最後となったのである。

灰谷さんは三菱UFJ信託銀行が14年6月から取り扱いを開始した「暦年贈与信託」の実現に力を尽くされていた。
「遺言は愛する家族への最後のラブレター」、「遺族同士の争いを避けるために配慮することは亡くなる人間の義務である」と語られていた。
がんと暮らしを考える会の活動に対しても、ご協力をいただけるはずだったのだが……。

<灰谷健司さんのプロフィール>
1961年生まれ。84年三菱信託銀行入社。
94年税理士試験合格。不動産鑑定士。中小企業診断士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本証券アナリスト協会検定会員。
相続・遺言、不動産やローンなどを含む総合的な資産運用についてのコンサルティングを行う。
新聞・雑誌・書籍の執筆のほか、テレビ・ラジオへの出演などへも出演。
『相続の落し穴~親の家をどう分ける?~』(角川SSC新書)、『弁護士・信託銀行員がズバリ教える ないと困る遺言あっても困る遺言』(きんざい)など、著書・共著多数。

*  *  *  *  *

次回は2016年1月に行われた小野瑛子さんの勉強会でのお話を紹介してみたい。

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