岡本英夫のFPウオッチャーだより 第10回 税制改正大綱を読む~贈与税の改正

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第10回目です。

岡本英夫プロフィール

昨年12月16日、令和5年度税制改正大綱が決定された。

NISAの恒久化や相続時精算課税の使い勝手向上などがFP業務にかかわる主たる項目だが、今回は、「相続時精算課税を含む贈与税の改正」について紹介する。

贈与税については、暦年課税を廃止して相続時精算課税に一本化しようというのがここ数年の流れだったが、さまざまな意見が交錯、結局、暦年課税贈与も継続することになった。
そのため暦年課税と相続時精算課税の選択制は引き続き維持される。

相続時精算課税制度に110万円の非課税枠

今回の改正では令和6年1月1日以降、相続時精算課税で受けた贈与について、暦年課税の基礎控除とは別に毎年110万円まで課税しないこととする。
また、複数の贈与者から贈与を受けた場合は、それぞれの贈与額に応じて110万円を按分する。

相続時精算課税は60歳以上の父母、祖父母から推定相続人である18歳以上の子および孫に財産を贈与した場合、贈与税の基礎控除110万円に代えて2,500万円まで非課税となる。
なお、いったんこの制度を選択したら、贈与者に相続が発生するまで継続してこの制度を適用しなければならない。

この制度での贈与金額は、将来相続が起こったときには累計贈与額を贈与者の相続財産に加算し相続税を計算する。
贈与時に支払った贈与税額がある場合には、相続税額から差し引くことになる。

平成6年1月からは、60歳以上の祖父母や親が毎年110万円を相続時精算課税で贈与を行えば、その110万円は相続財産に加算されない。
暦年課税贈与であれば、これまで死亡前3年以内の贈与は加算しなければならなかった(改正点は後述)。

これが相続時精算課税贈与の使い勝手向上である。
なお、いったん相続時精算課税制度を選んでしまえば、その後の贈与に時効はないということになる。

暦年課税制度の加算期間を7年に延長

歴年贈与の場合、令和6年1月以降に受けた贈与について、これまで3年だった相続開始前贈与の加算期間が7年に延長される。

これは税務の時効は所得税も法人税も申告期限から5年で悪意の場合は7年だが、贈与税の場合の時効は6年、悪意の場合7年となっている。
今回の改正は、贈与税の時効もこの悪意の場合の7年に揃えたのではないかと考えることができる。

贈与税の時効の起算日は「申告期限の翌日」である。
令和4年中の贈与なら令和5年3月15日が申告期限で翌16日が起算日となり、6年後の令和11年3月16日に時効が成立する。
ところが、今回の税制改正で加算期間が7年となれば、実質的に時効の変更と解釈できるからだ。

この3年から7年への加算期間の延長は段階的に行われる。
令和8年までの贈与者の死亡の場合は従来通りの3年で、3年後の令和9年1月以降1年ずつ延長され、加算期間が7年になるのは令和13年1月からである。
ただし、暦年贈与の加算期間が7年になっても、延長した4年間に受けた贈与は総額100万円までは相続財産に加算しない。

この加算期間の解釈は次のように考えればよい。
贈与者が令和5年中に亡くなった場合は現行の法律が適用され、死亡日前3年以内の贈与が相続財産に加算される。
令和6年中に亡くなった場合、6年中の贈与があれば死亡日以前7年間の贈与に含まれるが、6年分と改正前の2年分を加えた3年分の加算となる。

同様に令和7年、8年中の死亡の場合も、加算されるのは死亡日前3年分である。
令和9年に亡くなると令和6年1月1日以降、3年が経過している。
令和9年中の贈与があれば、令和6年までさかのぼり4年間の贈与を加算する。

ただし、延長した1年間に受けた贈与については100万円控除できる。
こうして、令和6年から7年が経過した令和13年1月以降、7年となる。

以上を考えると、贈与を始めるなら早いほどよい。
相続税対策であれば、できれば今年は贈与税を支払っても多めに贈与しておいたほうがよい。

たとえば500万円贈与すると贈与税は48万5000円。
相続税の最低税率は基礎控除額を差し引いた後10%である。
相続税のかかる資産家なら贈与をしたときに相続税は最低で10%減る。
500万円なら50万円であり、今年500万円贈与しても効果はあることになる。

なお、祖父母の財産を孫に渡す場合、相続または遺贈があれば孫は相続税の対象となり相続人でないため2割加算となる。
しかし、相続税は相続または遺贈で財産を取得した人が払う税金であり、相続時に財産を取得しなければ相続税の対象外であり生前贈与加算は必要ない。
贈与者、受贈者に年齢制限もなく、渡し切りとなる。

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の期間延長

教育資金の一括贈与は、課税価格の合計が5億円を超える贈与者が亡くなった場合、受贈者の年齢にかかわらず残高を相続財産に加算することになる。
現在は受贈者が23歳未満であれば加算しない。制度自体は3年間延長されたものの、令和5年4月以降の贈与にはこの縛りができる。

結婚・子育て資金の一括贈与の改正は、契約終了時の残高に贈与税が課される際の税率は贈与税の本則とするというものだが、取り扱いが少ないのが現状であり、適用期限が令和7年3月31日まで2年間延長されたことを知っておけば十分である。

教育資金も結婚資金も祖父母や親がその都度支払うのであれば非課税である。
孫が幼く、入学や結婚がずっと先の場合に祖父母が一括贈与を行うのであれば、孫が3人いれば3人に平等に贈与しないと、あとでもめる原因になる。
1,500万円を拠出するつもりなら500万円ずつ3人に贈与したほうがよい。生まれたばかりの孫に1,500万円一括贈与ずる場合も、2人目以降の孫が生まれることを想定したほうがよいと思う。

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