岡本英夫のFPウオッチャーだより 第4回 シェアソン・リーマン・ブラザーズで聞いた「複利効果と72の法則」

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

今回は第4回目です。

岡本英夫プロフィール

前回はブラックマンデー直後に米国の保険会社で説明を受けた「リバランス」の考え方について紹介したが、今回は1986年10月の「第1回FP視察」でシェアソン・リーマン・ブラザーズの女性FP部長から聞いた「単利と複利の違い」「72の法則」について紹介する。

お気づきだと思うがシェアソン・リーマン・ブラザーズは2008年9月15日に破綻したリーマン・ブラザーズの1986年当時の会社名である。
女性部長に事前にお願いしていたテーマは、「ファイナンシャルプランニングをどう訴えるか」であった。

以下は、当日聞いた話の一部である。

単利と複利の違い

コロンブスが500年前にアメリカに来たとき、2ドル持っていた。1ドルを使って残った1ドルを貯蓄するときに、彼は5%の単利を選んだ。その1ドルを500年経って引き出しに行くと26ドルしかなかった。
ところが、コロンブスの妻は「私は老後のために5%の複利でやりますよ」といった。
500年後、彼女が手にしたのは、26ドルでも39ドルでもなく、39,000ドルでもなく、393億ドルであった。

72の法則

われわれは「72の法則」を持っている。

72の法則とは、お金をどのように使うか、どのように働かせるかの法則である。
1万ドルを投資するときに9%で運用する場合、72を9で割ると8という数字がでる(72÷9=8)。つまり投資したお金を倍にするのに8年かかるということである。
次に4年で倍にしたいと思えば、18%で運用すればよい。72÷4(年)=18(%)である。

ただしこれは現実的ではない。
この2つの短い話は印象に残った。帰国した筆者は、自分なりに嚙み砕いて説明できないものかと思った。

コロンブスの妻の393億ドルの検証

単利の計算式は「元利合計額=元金+(元金×利率/100×期間)」である。0.05×500=25だから元金の1ドルを加えると500年後の元利合計額が26ドルであることは容易にわかる。

複利の計算式は「元利合計額=元金×〖(1+利率/100)〗^運用回数である。1年複利だと運用回数は500回ということになる。
すなわち「1.05の500乗」を計算できれば元利合計額は求められる。
これは500を2で割ると250、250を2で割ると125、125を5で割ると25、25を5で割ると5だから、1.05の2乗×2乗×5乗×5乗×5乗で計算できる。カシオの電卓だと1.05××=××=××====××====××====(カシオ製以外の電卓だと×の部分が1回ずつ少ない)とキーをたたけばよい。答えは、393億2326万1827ドル近くになる(電卓の表示桁数で異なる)。

単利だと26ドルだが1年複利だと393億ドルになるのである。

なお、この電卓による累乗計算の方法は、1980年頃、筆者の住宅ローン相談の師匠である横浜銀行横浜駅前支店に勤務されていた山本公喜氏(住宅ローンの専門家、著書多数)に教えていただいた。山本氏は住宅ローンの毎月返済額の計算などを卓上電卓でこなしておられた。毎月の20年返済なら月利の240乗が計算できれば、回答が得られる。「目から鱗」だった。

72の法則の検証(定額郵便貯金の存在)

これは難しくなかった。そもそも1980年4月当時の郵便局の定額貯金の3年以上の適用金利が8%だったから、「72の法則」に当てはめれば9年で2倍になることがわかる。

ただし、定額貯金は半年複利だから、実際には10年で2.19倍である(1.04の20乗は、1.04××===××====2.1911、これが4%・20年の終価係数である、カシオ製以外の電卓なら1.04×===×====2.1911……)。

また、1年複利の期日指定定期預金、半年複利のビッグ(収益満期受取型貸付信託)、ワイド(利子一括支払い型利付金融債)もあった。
中期国債ファンドは「1か月複利」を売りにしていた。当然、運用単位期間が短いほど複利効果は大きくなる。
そんなわけだから、コロンブスの挿話にある年利5%に抵抗はなかった。有名なワイドフィーバーは、視察の4年後1990年10月の出来事である。

現在は、マイナス金利下で「72の法則」はあまり意味をなさないが、1980年代、90年代前半は多くのFPがこの法則を学んでいた。
1980年に年表示8%で半年複利4%の定額貯金は1990年に満期を迎えたが、その当時の定額貯金3年以上の金利は6.33%で、預入限度額は700万円に引き上げられていた。満期受取額(約657万円)に手持ちのお金を加えて700万円にして再運用すれば20年間で元本は約4倍になった。

団塊の世代以上の多くの人たちにとっては、懐かしい経験なのである。

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