マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。
岡本 英夫 ⇒ プロフィール
昨年の12月14日に地元公民館でおこなった「高齢者のための新NISA活用講座」で、直前に公表された日銀短観をもとに今後値上がりが期待できるであろう業種についてとりあげた。
「日銀短観」はこういう見方もできますよ、ということだったが、あれから1年が経過した。取り上げた業種の1年後を振り返ってみたい。
日銀短観業況判断を業種別に見ると…
2024年12月短観の調査対象企業は全国の9,004社、回答期間は11月11日から12月12日で12月13日朝に公表された。日銀短観は速効性の高いのが特徴。業況判断DIは大企業製造業が14ポイント、非製造業が33ポイントのプラスで、前回調査からの変化幅は製造業で1ポイントのプラス、先行きは13ポイントでマイナス1ポイントであった。
業況判断DIは、調査対象企業の経営者に業況が「良い」のか「さほど良くない」のか「悪い」のかを尋ね、「良い」と答えた企業数の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いて求める。単純な調査に見えるが、多くの市場関係者が信頼し、重視している調査である。そして、この数字を見るには現況とともに「先行き」に注目することだ。
抜粋:業況および先行きの見通しがよかった業種
| 2024年9月調査 | 2024年12月調査 | |||||
| 最近 | 先行き | 最近 | 先行き | |||
| 変化幅 | 変化幅 | |||||
| 繊維 | 23 | 15 | 23 | 0 | 23 | 0 |
| 電気機械 | 11 | 12 | 8 | -3 | 14 | 6 |
| 造船・重機等 | 23 | 18 | 18 | -5 | 18 | 0 |
| 通信 | 35 | 35 | 38 | 3 | 38 | 0 |
注)電気機械=発電、変圧器、家電製品など。パナソニック、日立、ソニーなど
ここで取り上げた4業種は9月調査、12月調査ともに業況判断が良く、先行き(3か月後)も現状維持かプラスの業種である。なお、経営者は先行きについては慎重に判断するもので電気機器のプラス6はかなり楽観的といえる。なお、非製造業の不動産や情報サービスなどは業況判断で50を超えているが、先行きがマイナスとなっており除外した。
これを見る限り、短期的に投資するとしたら、これらの業種に投資する投資信託や個別銘柄ということになる。また、この時点で不動産や情報サービスに投資している場合、経営者は先行き(次回調査は多くの企業にとっては2025年3月の決算期)については慎重であることを頭に入れておいたほうがよい。
金利上昇局面で有利な銀行業
日銀短観行の冒頭にある「1.業況判断」には金融機関の項目はないが、短観のⅡの項目に「金融機関、持株会社等」として金融機関273社、持株会社203社を対象とするページがある。金融機関の業況判断はここで見ることができる。
金融機関の業況判断(良い―悪い %ポイント)
| 2024年9月調査 | 2024年12月調査 | |||||
| 最近 | 先行き | 最近 | 先行き | |||
| 変化幅 | 変化幅 | |||||
| 銀行業 | 31 | 31 | 39 | 8 | 42 | 3 |
| 協同組織金融業 | 7 | 7 | 9 | 2 | 11 | 2 |
| 金融商品取引業 | 40 | 35 | 45 | 5 | 43 | -2 |
| 保険業 | 20 | 17 | 29 | 9 | 22 | -7 |
| 貸金業等 | 42 | 37 | 58 | 16 | 32 | -26 |
| 金融機関計 | 27 | 24 | 33 | 6 | 31 | -2 |
注)金融商品取引業は証券・投信会社、貸金業は消費者金融・クレジット会社
これを見ていただければ、銀行業の業況判断および先行き見通しが明るいことがわかる。昨年11月から12月にかけては、日銀が金利引き上げを意図し(2025年1月に利上げ)、日米金利差の縮小が見込まれていた。メガバンク、地銀、ネット銀行などが買いと判断される状況と言ってよかったのである。
対象業種のその後
さて、これらの業種のその後である。各業種の代表的な銘柄をもとに見てみたい。
まず繊維業界を「東レ」で見ると昨年12月16日の終値が987.8円、本稿執筆時点の11月20日終値が1035.5円。次に電気機械の「パナソニック」は12月16日が1,588円、本年11月20日が1,755円である。造船・重機の「名村造船」は前者が1,671円、後者が4,715円と大幅上昇。通信の「NTT」は昨年12月16日が155.6円、11月20日が155円と横ばいである。
金融機関は、三菱UFJフィナンシャル・グループが昨年12月16日1,773円、今年11月20日終値が2,320円と約1,000円の値上がり。地銀の千葉銀行で前者が1,198円、後者が1,555円、野村ホールディングスが昨年12月16日893円から1,555円、ネット証券の楽天銀行が4,385円から6,733円と大幅値上がりとなっている。
とはいえ日経平均株価225種は昨年の12月16日の39,457円から49,823円にまで上昇している。2025年に入って4万円台、5万円台と上昇、現在は一服の感。東証株価指数(TOPIX)も2,701ポイントから3299ポイントまで上昇。これらに連動するETFやインデックスファンドに投資したのが正解だったともいえる。あくまで結果論だが…。
2025年12月短観は12月15日公表予定である。見方は様々だが、参考にしていただければ思う。

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