横井規子 の『金融教育』現場リポート  第7回<幼児期の金銭教育>お小遣いを渡す前に育てたい!物を大切にする心

7回目のテーマ <幼児期の金銭教育>お小遣いを渡す前に育てたい!物を大切にする心

 

『親子のためのお金教育の専門家』、元銀行員・ファイナンシャルプランナーの横井規子です。

「このままじゃ、将来、お金で失敗しちゃう!」

我が子のお金のしつけをやり直した経験から、金融教育が重要と実感。それをきっかけに親や子のためのお金の授業をスタートし、これまで300校、17,000人が受講しています。

学校授業での経験や金融教育について、1年間お伝えしていきます。

横井規子プロフィール

 

 

お子さんが小学校に上がる前から、お金のしつけに関心を持つ親も増えてきました。毎年、幼稚園から「お小遣いセミナー」の機会をいただき、多くの方が熱心に耳を傾けます。今回は、幼児期からできる金銭教育についてお伝えします。

幼児期は、まずは物を大切にすることから教える

子どものゲーム課金トラブルやキャッシュレス決済の普及により、できるだけ早く、お金のしつけをしておきたいと考える親は少なくありません。

私が15年間主催する、『親子お小遣いゲーム』講座の参加者も、当初は小学5年生が中心でしたが、年々低年齢化しており、今や2~3年生が主流です。なかには、幼稚園年長さんの参加も。

5歳頃からお金を扱えるようになると聞きますが、お小遣い制を始めるには、「ちょっと早い」と思うこともあるかもしれません。それなら、まずは「物を大切にすること」から教えてみてはいかがでしょうか。なぜなら、今の子ども達は、両親や祖父母などからプレゼントされる機会も多く、物に囲まれて育っているせいか、粗末に扱う傾向もみられるからです。

小学校の「落とし物コーナー」には、多くの物が陳列されています。名前がついていないので誰の物かわからず、返却できずにいるようです。探しにくる子もそれほどいないのではないでしょうか。

お金や物をめぐるしつけを、「金銭教育」と言います。物を大切にすることを教えるのも大事です。

幼児期は「物には感情がある」と思う気持ちを利用する

物を大切にすることをどうやって教えていったら良いのでしょう。まずは、おもちゃや絵本の片づけが第一歩です。幼児期は、物には感情があるととらえる傾向もあるので、それを利用すると良いでしょう。

例えば、私の娘が幼い頃、ぬいぐるみを片付けずに放置していた時に、「おもちゃ箱に片付けられなくて可哀そうね」、「ひとりぼっちだね」などと声をかけると、ぬいぐるみを撫でながら片付けたことがありました。

また、乱暴に扱って絵本の表紙が破れてしまったという時も、「可哀そうだね」、「痛そうだね」などと言いながら、一緒にテープを貼って直してやることによって、子どもの心に、物に対する愛情や思いやりの心が芽生えるのではないかと思います。

物を優しく扱うことを教え、その物を作ってくれた人やプレゼントしてくれた人への感謝の気持ちを育てることも意識していきましょう。

なくしたら探す!壊れたら修理する

先ほどもお伝えしたように、小学校の落とし物コーナーは多くの物で溢れています。ハンカチや鉛筆といった、手軽な値段で買える物ばかりではなく、帽子や上着といった高価そうな物も目にします。

なぜ、取りにこないのでしょう。探すよりも、買ったほうが、手間がかからず楽かもしれません。しかし、それでは物を大切にする心が育ちません。

なくしたと思われる場所まで足を運び、まずは探させる。どうしてもみつからない時も、すぐに新しいものを買い与えるのではなく、家にあるものを利用できないかなど、考えさせてみましょう。「物をなくしてしまうと何かと面倒だ」と子どもが感じると、物をなくさないように気を付け、持ち物を大切にするようになるのではないでしょうか。

物を壊した時も、すぐに買い与えるのではなく、まずは直してみることにチャレンジしてほしいと思います。壊れたおもちゃが直って使えるようになると、物に対する愛情も深まっていくのではないでしょうか。

 

おもちゃの修理を、原則無料で行うボランティア団体「日本おもちゃ病院協会」を活用するのもお勧めします。全国で1696名(2022年3月31日現在)の会員が、おもちゃの修理をしてくださっているようです。あなたの街でも利用できるかもしれません。

「日本おもちゃ病院協会」のサイトはこちらから。https://www.toyhospital.org/

「自分の物」と「他人の物」の区別を教える

幼児期は、自分の物と他人の物との区別が分からずに、家に持ち帰ったり、どうしても欲しくて、他人の物を持ってきてしまう傾向があるようです。幼児期は、自己中心性が強いために、そうしたことが起こりやすいようですね。そのような時は、子どもを叱り付けるのではなく、「それがないと、困ってしまう人がいるよね」などと話し、子ども自身に持ち帰ったものを返させるようにすると良いでしょう。

普段から、家庭の中でも持ち物を区別しておくのも良いでしょう。

我が家では、タオルやコップ、箸については、家族の持ち物を区別して使っています。自分の物を使い、他の人の物は使いません。

さらに、お父さんの部屋にある物を使いたい時は、勝手に使うのではなく、「貸してください」とお願いすることを教えてきました。借りた物は丁寧に扱い、使い終わったらすぐに返すことで、自分の物と他人の物との区別や、貸し借りのルールについても学ぶことができるでしょう。

お金との付き合い方を子どもに見せる

子どもとスーパーに買い物に行くこともお勧めしたいところです。親が買い物をしている姿を見せることで、お金に関心を持ったり、お金の役割や大切さに気付くこともあるでしょう。

まずは、お金は働いていただけること、好きなだけ得られるわけではないこと、使うと減ってしまうことを分かりやすく話してみましょう。そのうえで、考えて買い物をしている姿を見せていくと、なぜお金を大切にしなければならないのか、子どもは学んでいくことでしょう。

お金を大切に扱う姿も見せておきたいものです。以前、あるテレビコマーシャルで、ソファの隅やテーブルの下から硬貨をみつけて大喜びしている親子の様子を見ました。どうしてお金をなくしてしまったのか、その設定はわかりませんが、テーブルの上にしばらく放置していたり、ズボンのポケットに無造作に入れて存在を忘れていたのかもしれません。

しかし、これではお金は大切なものであることが、子どもには伝わらないでしょう。「子どもは親の背中を見て育つ」とも言われています。日常生活においても良いお手本となることが望まれます。

子どもの成長が感じられる「金銭教育」

金銭教育は、親の忍耐も必要です。何度も同じことを伝えたり、歯がゆい思いをすることもあるでしょう。

しかし、子どもの成長する様子を見て、嬉しさを感じることもあるのではないでしょうか。

娘に金銭教育を始めてからは、物を大事にするなど、変化していく姿に成長を感じて、子育てが楽しくなったものです。一歩ずつ進めていきましょう。

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