池田龍也 の 経済ニュースよもやま話 第12回 経済ニュース10本の柱 「高齢化社会の課題と諸問題」

マイアドバイザー® 池田龍也 (イケダ タツヤ)さん による月1回の連載コラムです。

経済ニュースを見るための10本の柱

シリーズ企画、経済ニュースの取扱説明書。経済ニュースの10本の柱は以下の通りです。(私見もふくめています)

① GDP
② 金融政策
③ 日本の財政
④ 景気動向を見る主な経済指標
⑤ マーケットの動き
⑥ 消費動向
⑦ 貿易
⑧ 企業活動
⑨ 世界経済のポイント
⑩ 高齢化社会の課題と諸問題

今回は、「 高齢化社会の課題と諸問題 」についてです。

池田龍也プロフィール

日本は世界のトップランナー

日本は超高齢社会といわれます。超高齢社会とは何かというと、以下の通りです。全人口に対する65歳以上の高齢者人口の比率が上がっていくのにあわせて、呼び方が変わります。

 

と名づけられています。日本は、すでにこの「超高齢社会」の段階に入っていて、去年の9月に厚生労働省が発表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は3623万人。高齢化率は、29.1%になっています。下のグラフでも明らかなように、日本は、これからも、先進国のトップを切って、高齢化は進むと見られています。

 

 

 

 

 

<高齢者の総人口に占める割合の推移(1950~2065)>
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1135.html

(総務省統計局の資料より)

その発表によれば、日本の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳と、前年を下回ったものの、依然として世界屈指の長寿国であることに変わりはありません。

WHO(世界保健機構)が去年3月に発表した世界の長寿国ランキングでは、上位5か国でみると以下の通りです。(男女別になっていない数字です)

 

 

と日本はトップになっています。

ちなみに、100歳以上の高齢者は9万2139人で、過去最多、なんとそのうち女性が8万1589人と88.5%を占めていて、100歳になると男女差は歴然としています。

昔は100歳以上の方々に首相から純銀製の銀杯を贈っていましたが、対象者が多くなりすぎたので、その銀杯を贈り続けるのは予算的にとても大変、ということで、その記念品が銀メッキになったというオチまでついています。

人生100年時代

人生100年時代って、いつ頃から盛んに語られはじめたのか、といいますと、実は、つい最近、7、8年前のことなんです。きっかけは、「ライフシフト 100年時代の人生戦略」という本が、2016年に出版されたことでした。

 

 

 

 

 

 

 

その本の中で、有名になったひとことは、「2007年に日本で生まれた子供は107歳まで生きる確率が50%ある。」というものでした。これが大きな衝撃を与えました。

この本の著者のひとり、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、当時の安倍首相が立ち上げた「人生百年時代構想会議」のメンバーにも選ばれました。

写真の右の列の真ん中に座っているのがグラットン教授です。発言の要旨は、四角で囲ったところです。要は、人生は100年時代を考えなくてはいけない、長寿の恩恵をどう活かすかが大切で、人生を活き活きとしたものにするための提言、ということでさまざまな指摘をしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラットン教授は、従来のパターン、つまり、学校を出て、仕事につき、引退後の生活、という3段階のモデルでは、これからは役に立たないというわけです。引退後の時間が長すぎると指摘しています。そこで、80歳まで働ける仕組みを作らなければならない、と強く提言しています。

長寿を喜べない事情

個人としても、長生き社会は、何ものにも代えがたい、喜ばしいことなのではないでしょうか。国にとっても、世界でも稀にみる長寿社会を実現したことは、喜ぶべきことだと思いますし、国民の健康管理がうまくいっている結果なのではないかと思いますが、政府の側からすると、必ずしもそうではないようなんです。

 国の財政は厳しい

 

2024年02月09日
国の借金、過去最大1286兆円 23年末、財政運営厳しく
財務省の発表によると、国債や借入金、政府短期証券の残高を合計したいわゆる「国の借金」が2023年末時点で、過去最大の1286兆4520億円になった。高齢化に伴う社会保障費の増大などを税収で賄えず、借金頼みの厳しい財政運営が続いている、と説明している。

財務省は、高齢化が、政府の様々な負担を大きくして、財政運営を厳しくしているといいます。財務省の資料を見てみましょう。
2023年度予算の国の一般会計歳出は、114.4兆円です。「社会保障費」(年金、医療、介護、こども・子育て等のための支出)が一番大きい項目になっています。つまり、高齢化に伴う年金、医療、介護の負担が大きくなっているために、予算がふくれ上がり、借金をせざるを得ないといわんばかりの資料になっています。

 

 

 

 

 

 

 

https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-structure/index.html

財務省資料より

もうひとつ、これも財務省の資料です。

1990年度と現在の歳出を比較すると、社会保障関係費や国債費が大きく伸びています。特に社会保障は、年金、医療、介護、こども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める最大の支出項目となっています。

 

 

 

 

 

https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-structure/financial-structure-02.html

財務省資料より

財政健全化を目指す財務省の資料を見ると、日本の財政が、借金体質になったのは、高齢化に伴う経費の増大が原因であるかのように説明されています。社会保障費が、11.6兆円から36.9兆円、3倍以上に急増しているというわけです。つまり、長寿社会の到来は国の予算の面から見ると、必ずしも、プラスではなく、マイナスに影響していると説明されています。

高齢化が歓迎される時代へ

個人のレベルでは、日本の長寿社会は喜ばしいことですし、日本人が長生きで楽しく生きていくのは、素晴らしいことですが、国の財政という観点からすると、これまでは、長寿社会が実現すればするほど、日本人が長生きになればなるほど、国の財政負担は大きくなってきた、という状況があります。そして借金が増えているというのが、財務省の説明です。国や財務省は、だから増税が必要というかもしれませんが、われわれはどうすればいいのでしょう。いろいろな考え方があると思います。

・定年で引退したりせず、できるだけ働いて納税する
・できるだけ国家予算に負担をかけないように健康寿命を延ばす
・いろんな意味で支える側になれるよう努力する
・現役時代にたくさん税金を払ってきたのだから、引退後は税金をとられたくない
・高齢者になってまで、いろいろ言われたくない
・十分社会に貢献してきたのだから、老後は自由に生きたい

さてみなさまは、この超高齢社会、長生きできる時代、この社会にいて、これからをどのように過ごしますでしょうか。私たちがそれぞれ自分で決めていかなくてはいけない時代ではないかと思います。

  • コメント: 0

関連記事

  1. 歴史から学ぶライフプラン&ファイナンシャルプランニング(3) 風雲児・織田信長から学ぶ “規制緩和≒既得権益との対決”【2014年 第3回】

  2. 「お金の殖やし方、守り方(2) 基本的 な金融商品を学ぼう!」【2012年 第6回】

  3. 岡本英夫のFPウオッチャーだより 第11回 「N分N乗方式」とは? 【2023年2月】

  4. なんだか最近生活が苦しい!どうして日本はまずしくなったの?【yahoo!コラム転載 2010年 9月掲載】

  5. 家計管理を始めよう!【2011年 第1回】

  6. 単身赴任家庭のコミュニケーション方法【2012年 第11回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。