池田龍也 の 経済ニュースよもやま話 第2回 経済ニュース10本の柱 「GDP」

マイアドバイザー® 池田龍也 (イケダ タツヤ)さん による月1回の連載コラムです。

経済ニュースを見るための10本の柱

経済ニュースの取扱説明書といっても、教科書やマニュアルがあるわけではありません。
ただ、ここだけおさえておけば、というツボというか、ポイントがあります。

まずは筆者の私見も含めて、ですが、10本の柱、ポイントがありますので、そこからご紹介していきたいと思います。

その10本の柱とは以下の通りです。
① GDP
② 金融政策
③ 日本の財政
④ 景気動向を見る主な経済指標
⑤ マーケットの動き
⑥ 消費動向
⑦ 貿易
⑧ 企業活動
⑨ 世界経済のポイント
⑩ 高齢化社会の課題と諸問題

それぞれの分野で、多くの書籍が出版されたり、研究が行われたりしているので、ご自身で調べてみるのも、もちろん面白いと思います。
ただ、どの分野も奥が深いので、まずはさらっと、この10のポイントについて、どの辺を見ておけばいいのか、このコーナーで順次ご紹介していきたいと思います。

今回のテーマは、一つ目の「GDP」です。

池田龍也プロフィール

 

 

 

 

 

 

GDPについて

よく聞く、「GDP」とは?
訳せば、国内総生産のことですが、「国内居住者がある期間内に生み出した付加価値額の合計」と説明されます。簡単にいえば、その国の経済の規模を示しています。
その国の経済力と言い換えてもいいと思います。そして、GDPの伸び率を経済成長率といいます。

ニュースの紹介

3月のニュースで、
「インド2022年6.7%成長、中国上回る ~GDP英国抜き5位」
というものがありました。

国連の「世界人口推計」によると、21年にピークに達した中国に対し、インドの人口は60年代まで伸び続け17億人に近づく。
個人消費の拡大が長期的な経済成長を支える。

という内容です。

GDPがその国の経済力を示すものなので、その発表は大きなニュースになります。
インドが経済の面でも、世界の中で大きな位置を占め始めていることを伝えています。

世界第二位の経済大国

日本が世界第二位の経済大国といわれていたのは、GDPがアメリカに次いで世界第二位だったからです。
歴史を振り返れば、日本が高度成長の真っただ中の1960年代、1968年に、日本は、GNP(=国民総生産、当時は比較データがGDPではなかった)が当時の西ドイツを抜いて世界第二位に躍り出ました。
当時、日本と西ドイツは、世界経済をけん引する「機関車」といわれたりしていました。
そして、2010年に中国が日本を抜いて「世界第二位の経済大国」になりました。
その後の中国経済の勢いは皆さんご存じのとおりです。

日本は、20世紀後半から21世紀にかけて、42年間もの間、「世界第二位の経済大国」といわれ続けてきたわけです。

日本のGDP

ニュースの紹介

内閣府が3月9日発表した2022年第4四半期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で、前期から横ばいで、年率0.1%増だった。
2月に公表した速報値(前期比0.2%増、年率0.6%増)から下方修正。個人消費が下振れした。

実際の発表資料は以下の通りです。(1ページ目を転載)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
「内閣府経済社会総合研究所」

 

GDPの発表は、四半期ごとにまとめられて発表されます。1次速報と2次速報があり、それぞれのこれからの発表予定は以下の通りです。

2023年1-3月期(1次速報) 2023(令和5)年5月17日(水)
2023年1-3月期(2次速報) 2023(令和5)年6月8日(木)
2023年4-6月期(1次速報) 2023(令和5)年8月15日(火)
2023年4-6月期(2次速報) 2023(令和5)年9月8日(金)
2023年7-9月期(1次速報) 2023(令和5)年11月15日(水)
2023年7-9月期(2次速報) 2023(令和5)年12月8日(金)
2023年10-12月期(1次速報) 2024(令和6)年2月15日(木)
2023年10-12月期(2次速報) 2024(令和6)年3月11日(月)

では、GDPのどこに注目すればいいのか?

GDPとひとことでいいますが、国の経済がどのような成り立ちで構成されているのか、何が経済を支えているのか、実はそこが重要です。
GDPの内訳をみてみましょう。

下のグラフは「消費者白書」(令和3年版)から抜粋しました。

家計消費(個人消費とも言います)が52%を占めています。
ニュースでご紹介した中で「個人消費が下振れ」とありましたが、GDPの半分以上を支えているのが、消費活動だということです。
消費が落ち込めば、経済は低迷し、消費が活発になれば、経済も元気になるというわけです。

GDPを左右する大きな要素は4つ、
1) 個人消費(家計消費)
2) 設備投資
3) 政府の公共投資
4) 住宅投資
ということになります。

「令和3年版消費者白書」より
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2021/white_paper_118.html

各国のGDPの中で消費が占める割合

同じく、この「消費者白書」では、各国の消費のGDPに占める割合を紹介しています。

少し前の数字で比較していますが、アメリカ、イギリス、イタリアでは、GDPの60%以上が消費に支えられています。
国民の自由な消費活動がその国の経済の大きな部分を支えている、というわけです。

最近よく「物価高騰で消費が落ち込んだ」といった表現をされたりしますが、消費の落ち込みはそのままGDPの成長のブレーキとなり、その国の経済力を削いでしまうことにつながります。

消費関連のニュースが大きく取り上げられるのは、そういった背景があります。

経済が活気を取り戻すとどういう展開になるかといいますと、教科書的には、
・企業活動、個人の消費活動が活発化
・企業業績が上昇・・・株価も上昇
・設備投資も活発に
・個人の収入も増加・・・消費も活発化、不動産市場、住宅建設も活性化
・雇用も回復
・物価も上昇
・税収も増える
といったような螺旋階段を上るような流れになります。

この逆がデフレスパイラルといわれるもので、上のすべてが逆回転の状況となります。

GDPの内訳でも、消費、設備投資、住宅投資は、大きなウェイトを占めていますので、経済が元気になると、GDPのそれぞれの構成要素もプラスになっていき、GDP全体を押し上げていきます。

ただ日本の現状は、前半でご紹介しました通り、直近のGDPが、年率プラス0.1%ですから、経済が好循環の流れとなり、成長軌道に乗ってきている、というには、まだまだという状況です。

  • コメント: 0

関連記事

  1. 赤字を出さない家計管理(3)「家計費の割合を決める!」【2008年 第5回】

  2. 人口推計で長期的な見通しを立てる【2014年 第1回】

  3. 死亡保障が必要なのは夫・妻・子?【2012年 第8回】

  4. 財務諸表を理解しよう!貸借対照表と損益計算書の繋がり編【2015年 第5回】

  5.  セカンドライフ 余暇の過ごし方【2013年 第7回】

  6. 観光立県・静岡【2012年 第5回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。