エルニーニョと景気【2010年 第3回】

【 2010年 第3回 】 エルニーニョと景気 ~経済状況

野田 聖二(ノダ セイジ)

大雪に見舞われた東海岸

この冬、首都ワシントンやニューヨークなど米東海岸では111年ぶりとなる大雪に見舞われました。この影響で米政府が4日連続で連邦政府機関の業務停止を決めるなど、一時首都機能がマヒ状態となりました。また、今月10日に予定されていた小売売上高の発表が延期されるなど、マーケットの関係者にとってはちょっとしたハプニングとなりました。

米国の異常気象もエルニーニョの影響?

南米ペルー沖の海面水温が上昇する‘エルニーニョ’が発生すると、世界的に異常気象が起こると考えられています。昨年春にエルニーニョが発生し、現在まだ発生中であることから、米国のこうした異常気象もエルニーニョの影響ではないかと考えていますが、公式にそのような発表は今のところないようです。

景気と密接な関係があるエルニーニョ

このエルニーニョ、実は景気の動きと密接な関係があることがわかっています。過去調べてみると、エルニーニョが発生すると決まってその前後に日本の景気は後退局面を迎えているのです。エルニーニョが発生すると、日本では冷夏や暖冬となることが多く、冷夏や暖冬は夏物商品や冬物商品が売れなくなるので、一般に景気にはマイナスの影響を与えます。

両者にはそのような因果関係があるわけですが、それにしても戦後60年を見渡して一度の例外もなくエルニーニョと景気後退が同時に現れるというのも不思議なことだと思います。しかも、先に現れる順番がちょうど10年ごとに入れ替わっているのですからますます不思議といえます。2000年から2010年の間は、景気後退が現れた後でエルニーニョが発生する順番となっていましたが、この経験則通り、昨年春に景気後退が終了して景気が回復に転じたまさにその直後にエルニーニョが発生しました。

もしこの法則が今後もあてはまるとすれば、2010年からの2020年までは今度はエルニーニョが先に発生し、後から景気後退が現れるはずです。ということは、今後10年間はエルニーニョの発生が景気後退の予兆となるわけで、景気の予測に気象予報が一役買うことになります。

インド洋東側の海面水温とエルニーニョ

ところで、先日新聞を読んでいたら、「エルニーニョ現象 1年前から予測可能」という記事の見出しが目にとまりました。記事によれば、エルニーニョ現象が発生する1年前にインド洋の東側の海面水温が上がり、西側の海面水温が下がることを、海洋研究開発機構などが突き止めたとのことです。

もしこれが本当なら、今後10年間はインド洋の海面水温の変化を見ていれば、1年以上前に景気が悪化することを予知できることになり、エコノミストにとっては、景気予測の有力な手がかりが一つ増えることになります。

私自身は今年の景気は、年後半から減速し、来年はいったん後退局面に入る可能性が高いのではないかとみています。もしそうなら、その前にエルニーニョが発生していることになります。景気の動きと同時に、毎月1回気象庁から発表される「エルニーニョ監視速報」も今後は景気のチェック項目に加えなければいけないかなと考えています。

 

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