相続・贈与のエトセトラ⑤~行方不明と相続~【2011年 第5回】

【2011年 第5回】 相続・贈与のエトセトラ⑤ ~行方不明と相続~

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。
平成23年3月の東日本大震災により、犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。 今回は行方不明になっていらっしゃる方と相続との関係についてとりあげます。

事故や災害等で行方不明となってしまった方がいらっしゃる場合、その方の財産や身分についての法律関係はどうなるのでしょうか?生きて戻ってきてくれると信じていたい反面、いつまでも生存しているものとして取り扱うと不都合が生じる場合もあります。そういった場合に、その方を死亡したとする「認定死亡」 と「失踪宣告」という制度があります。

「認定死亡」と「失踪宣告」を受けると、その方は死亡したとして取り扱われますが、それが相続にどのように関わっていくのかをみていきましょう。

■認定死亡と失踪宣告とは?

水難、火災その他の事変によって、死亡したのは確実だけど遺体が見つからないという場合があります。このような場合に、その取調べにあたった役所が死亡の認定をして、戸籍上一応死亡とする制度を「認定死亡」といいます。

死亡しているかどうかわからない場合に、死亡したとみなすのが「失踪宣告」の制度です。「失踪宣告」には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。
「普通失踪」は不在者の生死が7年間明らかでないときに、「特別失踪」は死亡原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、危難が去った後1年間明らかでないときに、利害関係人の請求により、家庭裁判所が「失踪宣告」をします。

今回のような震災・津波といった危難で行方不明になった方の場合は「特別失踪」に該当し、1年を経過して利害関係人が家庭裁判所へ請求することで「失踪宣告」を受けると、危難が去ったときに死亡したものとみなされます。
「認定死亡」や「失踪宣告」を受けた方は死亡したものとして取り扱われますので、相続が開始し、配偶者は再婚することができるようになります。

■行方不明者と相続の関係は?

上述のとおり、「認定死亡」や「失踪宣告」を受けた方は被相続人として相続が開始します。その場合、相続開始時において、被相続人と一定の親族関係にあり生存している方が相続人となります。

では、相続人となる方も行方不明で生死がわからない場合。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるので、行方不明者がいると分割ができないままになってしまいます。そこで、利害関係者等の申立てにより家庭裁判所が「不在者財産管理人」を選任して遺産分割に加わるようにできます。

被相続人と相続人になるはずの方が同時期に死亡したと推定される場合はどうなるでしょうか。
すでに遺体が見つかり死亡が確定している場合や、遺体が見つからず「認定死亡」とされた場合について、今回の災害のように死亡時刻が正確にわからないような場合は、同時に死亡したものとして取り扱われます。これを「同時死亡の推定」といいます。

同時死亡の場合は、どちらが先に死亡したのかが決まらないため、相続においては、互いに相続関係を生じないこととなります。それぞれの相続人を特定する際には、もう一方が先に死亡しているとします。

■同時死亡の場合に相続人になるのは?

 

 

 

 

【例①】父と子Aが同時死亡と推定された場合の相続人は次のようになります。
父の相続人⇒配偶者である母、子Aの代襲相続人であるXの2人
子Aの相続人⇒子Aの妻、Xの2人

【例②】子AとAの子Xが同時死亡と推定された場合の相続人は次のようになります。
子Aの相続人⇒子Aの妻、父、母の3人
Xの相続人⇒母である子Aの妻1人

【例③】子Aと子Aの妻、Aの子Xが同時死亡と推定された場合の相続人は次のようになります。
子Aの相続人⇒父、母の2人
子Aの妻の相続人⇒子Aの妻の父母(直系尊属)または兄弟姉妹
子Aの子の相続人⇒祖父母(子Aの父母、子Aの妻の父母で生存している者)

上記の【例②】で、死亡順序が子Aが先で、Xが後だとすると、子Aの財産を子Aの妻とXが相続し、その後Xの財産を子Aの妻が相続することとなり、最終的に子Aの財産を子Aの妻が全部取得できるのですが、同時死亡と推定された場合、反証できない限りは【例②】のようになり、子Aの財産を子Aの妻は全部取得できないようになります。

■相続財産にはマイナス財産も含まれる!

相続で特に気をつけたいのが、行方不明になった方が事業資金等の借入れをされている場合や、借り入れの保証人となっている場合。死亡したものとして相続開始になると、その借入金の債務や保証債務も相続財産として相続の対象となります。

災害でプラスの財産は滅失しても借金は滅失してはくれません。震災がなければ順調で問題がなかったはずの返済。倒産すれば保証債務も顕在化してきます。
借金の債務や保証債務といったマイナス財産は、相続人が法定相続分で当然に相続するものです。相続については相続人全員での対応が必要になるものもあります。
震災後の生活が落ち着いてきたら、多くの方がそういった問題への対応に直面することになるのではと危惧されます。

相続人となる方自身の早めの検討も大切ですが、公的機関の補助制度や専門家による相談対応等が充実することを願うばかりです。

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