石油の一滴は血の一滴【2015年 第2回】

【2015年 第2回 石油の一滴は血の一滴】
「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話

三次 理加 ⇒プロフィール

 

 

石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説「海賊とよばれた男」百田尚樹/著(講談社)の主人公が生きた時代、太平洋戦争が勃発しています。当時の日本にとって、石油はどのような意味を持っていたのでしょうか?今回は、「石油」という視点から太平洋戦争を見てみましょう。

 

1)石油の一滴は血の一滴

「海賊とよばれた男」には、「石油の一滴は血の一滴」をいう言葉が2回登場します。(どこに登場したか、探してみてくださいね♪)

皆様もご存知の通り、これは、1917年、第一次世界大戦でドイツの猛攻にあったフランスの首相クレマンソーが、米国大統領ウィルソンに石油の供給を要請した電報に記した「石油の一滴は血の一滴に値する。」というもので、石油の経済的・軍事的な重要性を意味しています。

現代においても、石油は私達の生活には必要不可欠なものですが、戦闘機や戦艦を動かし、大量の石油を消費する「戦争」ともなれば、その重要性は言うまでもないでしょう。

太平洋戦争勃発前、日本の石油事情はどのようになっていたのでしょうか?

開戦前、昭和14(1939)年において、日本は石油の9割以上を輸入に依存していました。最大の輸入先は米国で、輸入量の81.1%を占めていました。同年における日本の原油生産量は35.7万キロリットル。一方、当時、世界最大の産油国であった米国は、日本のおよそ738倍の原油生産量を誇っていました。(注1)

注1:資料「石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」」岩間敏/著

つまり、米国は、いつでも、経済的にも軍事的にも日本の息の根を止めることができる、日本の生殺与奪権を握っていた、といえます。

ちなみに、現代において、世界最大の産油国であり、日本にとって主要原油輸入先でもあるサウジアラビア(英石油大手BPによれば、平成26(2014)年、米国がサウジアラビアを抜き世界最大の産油国になった)の油田が発見されたのは昭和13(1938)年。本格的な開発は、第二次世界大戦終了後です。

昭和16(1941)年8月に、中央官庁・陸海軍・民間から成る総力戦研究所が対米戦を分析し首相官邸で発表した結論は、石油が底をつき、日本は敗戦する、というものでした。

石油という軍事・経済の生命線を握っている米国は、日本にとって一番戦いたくない相手であっただろうことが推測できます。

しかし、昭和12(1937)年の日中戦争以降、日米関係は悪化の一途を辿り、米国は日本に対し、様々な経済制裁を加えていきます。米国・英国・中国・オランダによる、いわゆる「ABCD包囲陣」です。このうち米国の石油に関する経済制裁は、3段階にわけて行われました。

第一弾

昭和14(1939)年12月 日本及びソ連向け「航空揮発油製造装置技術および特許権、技術的情報に対する道義的禁輸」

第二弾

昭和15(1940)年8月 特定石油製品の輸出許可制を実施

第三弾

昭和16(1941)年8月 「対日石油禁止令」公布

生命線である石油を絶たれた日本は、昭和16(1941)年12月8日、米国の真珠湾を攻撃。日本は、南方油田を確保するべくさらに南進することになります。しかしながら、日本のタンカーを攻撃の最優先ターゲットにした米国の攻撃により、南方油田からの石油は途絶。終戦時には、石油在庫量はほぼ底をついていました。

2)現代日本の石油事情

現代における日本の石油事情は、太平洋戦争当時とどう違うでしょうか?

我が国における2013年度の原油生産量は66.8万キロリットル。原油自給率は0.3%(注2)、海外依存度は99.7%です。(注3)輸入先はおよそ30カ国、輸入される原油の種類は100種類以上と、供給国の多様化を図っているものの、輸入の8割強を中東諸国に依存しているのが現状です。(図表1)

注2:日本の原油供給のうち、国内で産出された原油の割合。日本の海外における自主開発原油は含まない。

注3:資料「平成26年度エネルギーに関する年次報告」資源エネルギー庁

また、1次エネルギーに占める石油依存度は、開戦前は6%台(注1)ですが、2013年度は42.7%(注3)。日本が米国、中国に次ぐ世界第3位の原油輸入・消費国(注4)であることも考慮すると、もし、今の日本が原油・石油製品の供給を止められた場合、先の大戦時よりも苦しい状況に陥ることは想像に難くありません。

注4:資料「BP世界エネルギー統計2014」

果たして、現代の日本において原油・石油製品の供給が止まる恐れはないのでしょうか?それについては、次回、お話しましょう。お楽しみに♪

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