マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。
岡本 英夫 ⇒ プロフィール
憶えていますかー「2007年問題」
ほぼ20年前のことだが、団塊世代が60歳に達することによる社会的現象を称して「2007年問題」と言った。この問題は、およそ次の6点にまとめられたが、企業にとっても社会にとっても避けて通ることのできない問題であった。
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- 大量退職による労働力の減少(高齢者雇用安定法による継続雇用等で対応)
- 退職金負担による企業収益の悪化(乗り越えればその後の人件費総額は軽減)
- 家計貯蓄率の低下(過去の貯蓄を取り崩して暮らす人が増加)
- 企業の技能承継問題(熟練工の離職、ノウハウの流出等)
- 退職者の大都市から近郊都市や故郷への回帰現象
- 医療・年金等、社会保険関係費の増大(保険料の個人負担増が鮮明に)
団塊世代とは昭和22(1947)年から24(1949)年までに生まれた集団をいう。わが国は太平洋戦争で約310万人の戦死者を出したが、戦後まもなくのベビーブームで昭和22年だけで269万人、24年までの3年間で約800万人が誕生した。その出生者数800万人中690万人が2007年以降に60歳に達したのである。差し引き110万人が物故者だが、これも恐ろしい数字である(2024年10月1日時点の団塊世代は400万人弱まで減少)。
退職金の多くが毎月分配型投資信託へ
2007年当時の団塊世代690万人のうち就業者数は約540万人で、退職金の規模は総計で70兆円から80兆円と言われていた。一般企業の退職金は厚生年金基金や適格退職年金制度から支払われることが多かったが、そのほとんどが銀行振込みで支払われた。この時期、銀行は退職金目当てに金利優遇の定期預金や毎月分配型投資信託の販売に力を注いだ。後者の代表格が「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」である。
グローバル・ソブリン・オープンは1997年12月18日の設定だが、団塊世代が退職し始めた2007年10月には純資産総額5兆5,000億円を超え、日本最大の投資信託となった。
当時は毎月の分配金も好調で、販売した銀行や証券会社も顧客から感謝されたが、2008年9月のリーマンショック以降、分配金の減少と基準価額の元本割れが顕著となり、顧客に困惑が生じることとなった(現在の純資産総額は2,423億1,500万円、2026年7月17日時点)。
筆者も当時、退職金の運用アドバイスを求められる機会も多かったが、「金融機関から毎月分配型投資信託を勧められていますが、どう思われますか」というものが少なくなかった。否定はしなかったが、投資金額が1,000万円を超えるケースでは、時間分散、国債や定期預金との併用、銘柄分散などを勧めた。2007年当時は金融経済も比較的好調で、リーマンショックも予測できなかったが、まあまあのアドバイスだったと思う。
相次ぐ年金、社会保険改正がアドバイスを複雑化
退職金運用は老後のライフプランや住宅ローンの一括返済、子どもの教育資金、結婚資金などとも絡んでくる。老後生活を支える収入の核となるのが公的年金だが、団塊世代退職前後に制度改正が相次ぎ複雑化していた。厚生年金の報酬比例部分は60歳から受け取れたが、定額部分は男性が64歳からで女性は61歳からである。夫婦の年金アドバイスでは両者の生年月日を確認し、加給年金等を含めた受給パターンを図示する必要があった。
また、公的年金の繰上げ・繰下げ制度や在職老齢年金、高年齢雇用継続給付なども含めてアドバイスする場合は毎年の改正事項の確認も欠かせなかった。当時、これらの制度は毎年のように改正されていたからである。とくに2004年の年金改正は国庫負担の3分の1から2分の1への引き上げや「マクロ経済スライド」を含み多岐にわたり、数年間を経て実施されたため、正確な知識が欠かせなかった。
退職前後のアドバイスはFP知識の総まとめ
FPアドバイスという点からいうと、(定年)退職前後は退職金、年金、社会保険の多くが絡み、住宅ローンや親からの相続、子どもの結婚資金や住宅取得資金援助、さらには親の介護、自分自身や配偶者の健康問題が加わることも多い。最近では60歳前後で独立開業する人も増えており、継続雇用に限らず70歳代以降も働いている人も多い。退職前後のアドバイスはFPの6分野が絡むトータルアドバイスなのである。
40歳代、50歳代からリタイアメントプランを作成していても、退職年齢、年金受給開始年齢が近づくと見直しが必要になる。筆者も、40歳代前半にリタイアメントプランを作成したときには60歳定年退職を前提にしていたが、結果として65歳まで働くことになった。また、年金制度は60歳までの20年間で大きく変わり、作成時には制度としてはなかった厚生年金の繰下げ受給を選択した。
現在は、昭和40年代前半生まれが60歳を迎えつつあるが、数年後には団塊ジュニアである40年代後半(1971年~74年)生まれが60歳に到達する。年金制度も社会保険制度も大きく変わり、NISAやiDeCoも改正が頻繁におこなわれつつある。また、その頃には親世代である団塊世代の健康問題、相続問題も複雑化する。70歳、75歳前後まで働ける時代だが、現在活躍中のFPにとっても他人事ではないはずだ。

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