岡本英夫のFPウオッチャーだより 第47回 わが国のFP前史 ~国際証券が採用した野村総合研究所に依頼したレポートの内容

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

 わが国で最初に「米国のファイナンシャル・プランニング」に注目したのは現三菱UFJモルガン・スタンレー証券の前身のひとつである野村投信販売である。1970年代、野村投信販売は投資信託を従来よりも効率的に販売する手法を模索していた。そこに、米国で本格化しつつあったファイナンシャル・プランニングの手法が伝わってきた。
 ファイナンシャル・プランニングに注目した野村投信販売は、この手法を導入することを目的にIAFP(国際FP協会)の第2回世界大会に参加することにした。1976年のことである。その後も毎年世界大会に参加したが、他の金融機関やマスコミに注目されることもなく、1980年代を迎えた。

 野村投信販売は1981年、八千代証券、興和証券と対等合併し国際証券となるが、その前年の1980年、野村総合研究所に「FP営業確立への基礎調査」を依頼した。野村総合研究所は独自の調査をもとに、FPの対象顧客として高額所得者、土地保有者、中堅企業オーナー、それに将来の高齢者層を含む個人マーケットを提示した。
 これをもとに、国際証券は中堅企業オーナーを組織するFP情報センターと、高額所得者・土地保有者家庭の主婦を対象としたFPレディースセンターを設置し、企業イメージとして掲げてスタートした。4年後の1985年、IAFPの世界大会が京都で開催されたが、この大会で日本側のホストを務めたのも国際証券である。

 次表は野村投信販売の依頼で野村総合研究所がまとめた図表のひとつ「拡大するFPマーケット~有望な4つのマーケットとアプローチの方法」である。筆者が国際証券を取材の折にいただいたものであるが、一部を除き現在でも通用するわが国におけるFPの古典とも言ってよいものである。

有望な4つのマーケットとアプローチの方法
有望なマーケット マーケットの特徴 FPのアプローチ方法
1.高額所得者 ● 職業に偏り
● 年収により有価証券、株式のウエイトが相違
● 税金対策
① 節税を軸としたポートフォリオの形成
② 年収の変化を利用したポートフォリオの組み換え
(ストック→フロー)
③ 相続税対策としての生前贈与の提案
④ 税支払い期に合わせた資産運用
⑤ 勤労者への退職金アプローチ
⑥ 税制改正情報の提供
2.相続・土地関連 ● 土地が最大の問題
● 相続税対策
● 土地の有効活用
① 土地の評価(路線価)、税額
② 生前贈与を含めたポートフォリオ作成
③ 土地の有効利用アドバイス
④ 事業承継を含んだ自社株評価
⑤ 地域に密着した営業展開
3.個人・中堅企業 ● 個人と法人の両面アプローチが可能
● 金融資産の蓄積が大きい
● 事業承継問題
● 資金の季節性
① 事業承継を含んだ自社株評価
② 資金調達と運用の一体化アプローチ
③ 決算対策など季節性アプローチ
④ 法人税・金融商品知識の提供
⑤ 個人事業主に債券担保融資のアプローチ
⑥ 特定金銭信託の利用
⑦ 従業員持株制度の勧め
⑧ 非課税法人も重要な対象
⑨ ビジネスチャンスのための情報提供
4.個人マーケット ● 55歳からが金融資産の蓄積
● 退職・老後・贈与・相続などアプローチ方法が多彩
● 将来の高額所有として位置づけ
① ライフステージに合わせたポートフォリオモデルの提供
② 生涯生活設計、資産運用アドバイス
③ 退職、老後、相続を一体化したポートフォリオの組み換え
④ 債券担保融資を利用したアプローチ
⑤ 地域に密着した営業展開
⑥ 年金型の投資信託の開発
⑦ 女性の時代への対応

 

銀行・会計人も同様のマーケットを指向

 1980年代、いくつかの金融機関がファイナンシャル・プランニングやFPという言葉は使用しないまでも、FP的なセールス手法と人材の養成に乗り出していた。三井信託銀行の「財産コンサルタント」、住友信託の「財務アドバイザー」、三井銀行の「カスタマーズ・アドバイザー」、三和銀行の「ホームコンサルタント」などである(金融機関名は当時のもの)。
 また、公認会計士・税理士の一部に資産税(不動産所得税、譲渡所得税、相続・贈与税)に特化する人たちが現れ始めた。会計人FPの登場である。同じ時期、1983年にFP専門会社MMI(マネーマネジメント・インスティチュート)を設立した井畑敏氏がファイナンシャル・プランナーの肩書で雑誌、新聞等で活躍し始めた。
 今回はわが国のFP前史を紹介した。FPという言葉が一般的になるのはこの後である。

  • コメント: 0

関連記事

  1. 発達障がい児を持つ会社員のパパママのための知識 ~発達障がいと障害年金①~【2013年 第10回】

  2. [結婚]お祝い金で回収?それともローン?【2006年 第3回】

  3. 教育ローン ~誰が出す?親が出す?~【2006年 第4回】

  4. プレママ(妊婦)さんの相続【2012年 第9回】

  5. エンディングじゃないノートだからこそ、今を大切に④~自分の「生活」を「時間」の切り口でふり返る【2010年 第 12 回】

  6. 頭と尻尾は猫にくれてやれ【2013年 第3回】

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。