岡本英夫のFPウオッチャーだより 第37回 相続の基本、よもやま話

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

去る2月22日、地元公民館で「相続・贈与の基本を理解する」と題する講演を行った。
参加者は約20名。
一般向けなので難しい話はしなかったが、事例を交えてそれなりに深みのある話を織り込んだ。
雑談に近いものだが、興味深く聞いていただけたようなので、その一部を紹介してみたい。

同時死亡(相続は死亡した瞬間に発生する)

父と長男が車に同乗し、交通事故で2人とも死亡したとする。
運転していた父は即死、長男は病院に搬送後死亡した。
残された遺族は母と長男の妻。

この場合、先に死亡した父の遺産の相続分は父の配偶者である母が2分の1、長男2分の1である。
次に、長男の遺産相続だが、長男死亡時の財産には先に死亡した父の財産の2分の1が加わっている。
相続分は長男の妻が3分の2、母が3分の1ということになる。

逆に、助手席にいた長男が先に死亡し、父親が病院で死亡したのであれば、長男の相続が先に開始する。
相続分は妻3分の2、父母6分の1ずつとなる。
父の財産には長男の遺産の6分の1が加わっている。
これを母が全額相続する(父の両親はすでに死亡、兄弟姉妹もいないとする)。

図2_長男が先に死亡

次に、この交通事故で父と長男がいずれも即死だったらどうなるか。
捜査に当たった警察が、いずれも即死(同時死亡)と推定したとする。
同時死亡(民法32条の2)では死亡者相互間では相続は生じない。
父と長男は互いに相続人となることはなく、父の財産は配偶者である母が全額相続する。

長男の財産は長男の妻が3分の2、母が3分の1となる。

図3_父・長男が同時死亡

実際にあった例

数年前のことだが、知人の母と長男が同日に死亡した。
80歳代後半の母は死亡日の朝、母の弟が自宅を訪れて発見、60歳代前半の長男に連絡しようとしたところ、長男は同日朝病院で死亡し、長男の嫁が母親に連絡しようとしていた。
母の死亡時刻は不明で、死亡の前後はわからないということだった。

葬儀は母と長男一緒におこなわれ、筆者も参列した。

その後の遺産相続だが、母親の財産は次男が、長男の財産は妻と子が相続した。
結果として、母と長男間での相続は互いにおこなわれなかった。

このとき、死亡時期の前後が不明で同時に死亡したものと推定されるときは、相続関係が生じないとの民法の規定は納得のいくものだと思った。

半血の兄弟姉妹(半血=父母の一方を同じくする 全血=父母の双方を同じくする)

第1順位の相続で、嫡出子と非嫡出子の相続分は平成25年に同等となった(改正前は非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1)が、第3順位の相続では、父母の一方を同じくする半血の兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする全血の兄弟姉妹の相続分の2分の1である。

Aさんの夫には、父母を同じくする弟と、父の前妻の子である兄と姉がいる。
なお、Aさん夫婦に子はいない。
夫が亡くなると、法定相続人はAさんと夫の兄弟姉妹となり、Aさんの相続分は4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1となる。

この場合、全血の兄弟姉妹である義弟と半血の兄弟姉妹である兄と姉の相続分は、4分の1の遺産を2:1:1の割合で分割することになり、弟が16分の2(=8分の1)、兄と姉が各16分の1となる。
また、夫より先にAさんが亡くなった場合には、夫の財産の相続分は全血の弟が2分の1、半血の兄2人が4分の1ずつとなる。

図4_半血の兄弟姉妹

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