住宅ローンプラン実践編①【固定金利から変動金利への借換え】【2012年 第5回】

【2012年 第5回】 住宅ローンプラン実践編①【固定金利から変動金利への借換え】
– ケース別コラム – 住宅ローン

奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール

 

一般論、最新情報もいいけど、「ケース別コラム」というからには、ココだけの話も欲しいところですよね。ということで、今月からは、これまで私が実際に相談を受け、対策をとった、『リアルなケーススタディ』をご紹介していきたいと思います。

これまでも自分なりには、出来るだけ一般論では語れない部分の話をしてきたつもりですが、一部の読者様の熱いリクエストにお応えするカタチで、今月からはよりリアルな、実際にあった相談例を、このコラムで紹介していきます。全て実話ですので、きっと参考になると思いますよ。

□ご相談内容

2006年に、3年固定金利(年1.30%)で住宅ローンを借入。その後金利変動リスクを感じたため2008年に全期間固定金利(年2.761%)に借換えを実施。現在は、借換えよりも繰上げ返済を重視しているが、これだけ低金利な今、借換えをしないのは損な気がする。再び変動金利、3年固定金利に借換えした方がいいか、それともそのまま全期間固定金利を続けた方がいいか、判断に迷っている。どうすればいいでしょうか?

□ご相談の背景

このお客様は、夫35歳、妻37歳、長男5歳、長女2歳という家族構成です。当初のご希望としては、8割がたは変動金利に借換えをしたい、というニュアンスでした。確かに、今後の金利上昇リスクを予測し、全期間固定金利にすること自体は、まったく間違いではありません。しかし、変動金利に対して実行金利が割高であるため、特にいまのような超低金利の状況下では、敬遠されがちです。

このお客様も、一旦は全期間固定に借換えをしたものの、超低金利の状況が長く続いていることや、早期返済を検討しており、無駄な金利を払いたくないということで、変動金利への借換えを検討されていました。とはいえ、せっかく将来のあんしんのために金利を固定化したのに、本当に借換えをして大丈夫なのか、不安は消えず・・・。ということで今回の相談となったのです。

□ライフプランニングで、お金の流れを確認。ローンプランを検証

そこでまずは、ライフプランニングを実施しました。目的は、実際に固定金利から変動金利への借換えをした場合に、その後金利が上昇したとしても耐えられるかどうかを判断するためです。住宅ローン支払いはもちろんのこと、毎月の生活費、お子様への支出、学資積立、夫婦の老後資金といった人生の総支出額と、給与や退職金、年金など人生の総収入額を計算し、そのお金の流れとバランスをお客様とともに確認しました。

あわせて、借換え後の金利プランについても、変動金利で金利上昇した場合など、複数のパターンをシミュレーションし、変動金利、3年固定、10年固定、どのプランが最も金利メリットと安心感のバランスがよいか、検証しました。

その結果、全期間固定金利でこのまま支払いを進めていくよりも、10年固定金利住宅ローンに借換えたほうが有利であるという結論に至りました。決め手は、現在の返済額を基準とした場合に、借換えをすることで返済期間を4年短縮できること。なおかつ向こう10年間のキャッシュフローも、現在のバランスで安定し、10年後には住宅ローン残高以上の預貯金が準備できる目処がたったことでした。

加えて、今回選んだJ銀行の住宅ローンプランが、10年固定ローンでありながら、当初3年は更に金利引き下げされる、特殊な仕組みのローンだったことも、幸いしました。このプランであれば、当初3年は変動金利並みの金利メリットをとりつつ(年0.8%)、借入4年目以降10年目までの金利は借入時に固定化される(年1.6%)ため、いわゆる上限金利設定型に近い、安心と金利メリットの両方が得られます。住宅ローン金利競争への歯止め、取扱の厳格化が進む現状を考えれば、おそらく、今後このような住宅ローンは出てこないと思われますので、その意味ではタイミングも味方したといえます。

□今回のケーススタディのポイント、注意点

もちろん、メリットばかりだったわけではありません。現在の借入銀行では、住宅ローン保証料はありませんでしたが、借換えするJ銀行では保証料があります。分割払いはできるものの、月5000円程度はローン支払いに上乗せされるため、注意が必要です。

また、借換えに関わる諸費用も、借換ローンに乗せるのか、自己資金で準備するのか。こちらも、事前の確認が必要です。どちらの話も、事前に検討すれば問題はないのですが、後から発生すると、トラブルの元になりますからね。

そして、借換え時の事務手続き、抵当権の抹消~設定手続き、火災保険への質権設定なども、プロとしては当然アドバイスをすべき内容です。ほとんどのお客様は、そんなところまで関心は及びませんので。

いずれにせよ、今回の借換え相談のポイントは、一旦固定化させた住宅ローン金利を、変動金利に戻すべきか否か、というところでした。そこでライフプランニングを実施し、向こう40年のお金の流れを検証。その結果をふまえ、借換えの是非、そして住宅ローンプランの判断をしました。

もし、住宅ローン借換えを検討されている方がおられましたら、借換えの前にライフプランニングをすることをオススメします。借換えは確かに金利メリットが第一にきますが、ライフプランニングの結果をふまえた選択、ということであれば、見た目だけでなく、心の満足を得ることが出来ます。ぜひ、ライフプランニング経験の豊富な、身近なFPへ相談してください。

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