地方財政【2012年 第12回】

【2012年 第12回】地方財政   私たちの暮らしを様々な形で支える、地方財政の状況

浅川 陽子(アサカワ ヨウコ)⇒プロフィール

今年も残り少なくなってきましたが、1年のまとめということで、私たちの暮らしを様々な形で支える、地方財政の状況についてふれてみましょう。

 

 

 

 

平成24年度版の「地方財政白書」によれば、平成22年度の歳入額は97兆5,115億円、歳出額は94兆7,750億円になっています。歳入から歳出を引いた差額から、繰越すべき財源をひいた「実質収支」は1兆6,702億円になります。この実質収支が赤字である地方公共団体は8団体(都道府県は0、市町村が8)あるといわれています。

 

 

 

 

 

南関東の歳入・歳出状況は上記のとおりですが、都・県ではすべて収支は黒字です。それでは、歳入の内訳をみてみましょう。下表のとおり、地方税、地方譲与税、地方特例交付金、地方交付税を合計した「一般財源」は都道府県合計では52.8%ですが、南関東の都・県はいずれも合計の比率より高く、特に東京や神奈川では、目立って高くなっています。一方、国からの「国庫支出金」は東京、神奈川では低くなっていますが、地方債からの収入では、東京は低く、神奈川では高い比率になっています。

 

 

 

 

次に、歳出の内訳をみてみましょう。歳出には、やはり地域性が大きく反映されるといえそうで、農林水産業費は全体に比べると低く、一方、首都圏ということで、警察費の比率はやや高くなっています。また、東京を除いた3県では、教育費の比率の高さも目立っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地方財政を分析する際に、使用される指標がいくつかありますが、その中で代表的なものを3つとりあげてみましょう。まず、「経常収支比率」は、地方税等の一般財源が臨時的な財政需要に対して余裕があるかという比率です。この比率が低いほど、財政構造に弾力性があるということになります。都道府県全体では90.9%、地方財政全体でも90.5%ですから、南関東の都・県は、平均より経常収支比率はよくないといえます。

次の「実質公債費率」は、公債費による財政負担の程度を示すもので、18%以上になると、地方債を発行する際に、国の許可が必要になります。平成22年度では、都道府県では6団体、市区町村では全体の9.8%にあたる168団体が、18%以上になっています。南関東では、比較的、実質公債費率は低く、特に東京は著しく低いといえ、実際、歳出でも東京の公債費の比率は他県に比べて低い結果になっています。

「財政力指数」は、「基準財政収入額」を「基準財政需要額」で割った数値の3年分の平均値です。「基準財政収入額」とは、地方公共団体の財政力を合理的に測定するために、標準的な状態で見込まれる税収入を一定の方法で算定したもの、「基準財政需要額」とは、地方公共団体が合理的、かつ、妥当な水準 で行政を行うための財政需要のうち、一般財源で賄うべき額を一定の方法で算定したものです。この数値は1に近くあるいは1を超えるほど財源に余裕があるとされています。南関東の都・県では、全体の比率に比べるとかなり、「財政力指数」は高いことになり、特に東京は1を超え、財政に余裕があることがわかります。

<「健全化法」の施行>

地方公共団体の財政が著しく悪化する前に、健全化、再生化をはかるため、平成21年4月に「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が施行になりました。この法律により、財政における指標の整備、公表の仕組みが新しく設けられ、「早期健全化基準」や「再生基準」に該当する団体に対しては、計画の策定が義務付けられています。

数年前、一部の地方都市の財政破たんが報じられたことがありましたが、地方財政は、私たちの暮らしを支えるものですから、財政状況が健全でないと、私たちの暮らしにも大きな影響が及びます。今後、少子高齢化の進展で福祉に関する費用の増加や、また、高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化に伴い、土木費等も増加することが予想されます。また、地震等の大きな自然災害が一度起きれば、地方財政状況にも大きな影響が出てくるでしょう。地方財政については、「健全化法」で、自治体に情報開示も義務付けられています。私たちも住民として、自分たちの暮らす地公体等の行政についてもっと関心を高めていくべきといえるでしょう。

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