地方財政から考える自分たちでできる暮らしの立て直し【2012年 第12回】

【2012年 第12回 】地方財政から考える自分たちでできる暮らしの立て直し ~地域:全国平均

波多間 純子(ハタマ ジュンコ)  

地方自治体の主な歳出先  地方自治体での支出は主に社会保障費です。高齢化に伴い増大が予想される社会保障費は私たちの子育て、教育といった次世代を育てる分野から、老後や医療・介護といったリスクを下支えする分野までをカバーしています。このようなサービスの低下は私たちの暮らしの低下を引き起こします。こうした重要な歳出は現在どのような傾向にあるのでしょうか。

厳しい地方財政の状況

平成22年度の地方財政の決算では歳入・歳出ともに前年度より減少しました。具体的に歳入では地方交付税、地方債等が増加する一方で、地方税、国庫支出金等が減少したことから、歳入総額は前年度より8,542億円(0.9%減)となっています。歳出額は94兆7,750億円(前年度比1.4%減)となっています。

地方財政の全体のパイは縮小しているものの、収支ベースでは実質単年度で3年連続黒字となっています。これは平成19年の「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」の成立以降、地方の財政規律が厳しくなっている結果とも成果ともいえます。

このように地方財政は、過去に発行された地方債の償還や高齢化の進展からくる社会保障費の増大で支出が年々かさんでいる状況です。不況のあおりで税収そのものは減っている一方、地方交付税や地方債への依存も高まっているようです。

図表①
地方財政:目的別歳出構成の推移

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民生費:児童、高齢者、心身障害者等のための福祉施設の整備・運営・生活保護の実施等の費用
教育費:学校教育、社会教育などに使われる費用
土木費:道路、河川、住宅、公園など各所の公共施設の建設整備の費用
公債費:借入金の元金・利子などの支払いの費用
総務省:平成24年版地方財政白書ビジュアル版(平成22年度決算)より

ご覧のとおり、平成12年を100として年々特に増加しているのが民生費です。22年度と比較すると民生費全体で約60%もアップとなっています。この民生費は福祉目的の支出で、主に高齢者向け福祉施設や生活保護費等に当てられています。土木費等であれば予算が足りなければ建てるのをやめてしまう、という選択肢がありますが、福祉分野の支出はばっさり取りやめるわけにはいきません。

福祉が削られていく?

高齢化が進むと全体として年金、介護といった社会保障費が増加していくのは明白です。ただこのままやみくもにサービスカットを甘んじるのでなく、何に重点を置いていくか自分の生活に引きつけて考えていくことがこれから重要なのではないでしょうか。

これまで、配分の問題に私たちは無関心すぎたようです。1人当たりのサービスの縮小が余儀なくされるこれからは、どうしても残していきたいもの、削ってもよいサービスを考えていくことが必要です。

本当の自助とはなんだろう

また、介護状態に陥る人の多くは突然そういう状態になったわけではなく、長い年月の悪しき生活習慣が影響しているという報告もあります。生活習慣病は死の四重奏ともいわれ肥満・糖尿病・高脂血症・高血圧を指し、メタボリック診断の基準にもなっています。こういった生活習慣病が悪化すればガン、脳卒中、心筋梗塞等重篤な病気につながります。さらに、術後の状況によってはそのまま介護・障害状態に陥るという相関関係も高くなっています。

地方自治体でもそこは問題視していて、現在は生活習慣病予防のための定期検診の開催や、年配者の転倒骨折や引きこもりを予防する運動プログラム等を開催しています。

つまり、働き盛りの世代からでもできることがあるということです。日々の暮らしに流されがちですが、こういった自分で改善できることから取り組んでいくことも重要です。

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